夏の賑わいに合わせて世間が浮かれた雰囲気を纏っていく中で、主人公だけがどうする事も出来ずにもがいています。
このコントラストが主人公の焦りと苦しさをより引き立たせていくのです。
タイムリミットが近づき、 いよいよ決断が迫られているという緊張感が曲の勢いをさらに高めていきます。
主人公の正直な気持ちが溢れだす
あなたと巡り合えただけで
幸せなんて 簡単に思えないから(渋谷)
出典: クラゲ/作詞:ISEKI from キマグレン 作曲:ISEKI from キマグレン
主人公の中にある、一番正直な気持ちがここに表れているように思えます。
そう簡単には諦められない。
健気で弱気なだった彼の心に少しずつ勇気が沸きはじめていることを感じさせます。
いよいよ音楽はクライマックスへ
ヒグラシの声が終わる前に(大倉 丸山)
クラゲの姿が見える前に(錦戸 丸山)
伝えなくっちゃ 君に伝えなくっちゃ(錦戸 大倉)
Wow… yeah…(錦戸)
出典: クラゲ/作詞:ISEKI from キマグレン 作曲:ISEKI from キマグレン
夏の終わりに向けて時間だけがただ過ぎて行き、いよいよクライマックスへと向かって音楽は勢いを増していきます。
さて、彼は思いを告げる事ができるのでしょうか?
満たされない想いと諦め
あなたが空に浮かぶ雲なら(安田 丸山 大倉)
それを見上げる僕はクラゲのようだね(丸山 大倉)
あなたと見つめ合うなんてできない(安田 丸山 大倉)
こんなことなら出会わない方が(丸山 大倉)
僕の想いは深く沈んでゆく(横山 渋谷)
タリラリラタリラリラ(安田 丸山)
出典: クラゲ/作詞:ISEKI from キマグレン 作曲:ISEKI from キマグレン
ついにストーリーはクライマックスへ。
しかしどうやら彼は諦めてしまいます。
出会いそのものを否定したくなるネガティブな気持も強い共感を誘います。
満たされない願いを思い続ける事の苦しさに疲弊しまったのでしょうか。
作詞作曲のISEKIが組んでいたユニット『キマグレン』について
ここで再び、作詞作曲を担当したISEKIが在籍していたユニット『キマグレン』について触れておきたいと思います。
ヴォーカル・アコースティックギターのISEKIとヴォーカル・ラップのKUREIの二人組ユニット『キマグレン』。
2015年に惜しまれつつも解散してしまいましたが、『夏』をテーマにした楽曲は多くの音楽ファンの心を掴みました。
代表曲の『LIFE』は、南国を思わせる軽快なビートにポジティブで力強い歌詞を乗せた極上のダンスチューンです。
『夏』を愛した二人のハーモニーは、これからも色褪せることなく輝き続けることでしょう。
いよいよクラゲは沈んでゆく
異性に憧れる気持ちとはいつも苦しく切ないものです。
どんなにつらい思いをしても願いが叶うわけではありません。
大人になるにつれて皆が学んでいく事も、思春期の彼にとっては初めての痛みかもしれません。
その痛みの中で主人公の気持ちも曲の勢いと共に終息していき、いよいよクラゲは深く沈んでゆきます。
憧れの彼女は記憶の中へ
今年夏が熱すぎたから(安田)
頭も透明になっていく
そんな時は海にでも
漂いながら空を見上げてみる 思い出してみる
出典: クラゲ/作詞:ISEKI from キマグレン 作曲:ISEKI from キマグレン
どうやら熱すぎた夏が過ぎてしまったようです。
諦めにも似た投げやりな雰囲気を壊れかけたような渋いトランペットの音が演出しながら曲はエンディングを迎えます。
辛かった記憶も時間の経過と共に、美しい思い出に変わっていく。痛みと共に少年は大人になっていく。
傷ついた心を時間だけが修復してくれる事を彼は知っています。
ただ時が過ぎるのを待ちながら、海の中でぷかぷかと漂う少年の表情は、少しだけ凛々しくなっている事でしょう。
誰の心にもある、憧れの人の淡い記憶は、なぜかいつも夏の姿かもしれません。
「あー。あの子どうしてるかなー。」