良くないもの

胸の辺りで二回転半
グラスに注いだ毒を廻す

出典: ワンナイト・アルカホリック/作詞:山田亮一 作曲:山田亮一

主人公が入ったのはどうやらお酒を提供しているお店のようです。

グラスに入った飲み物を回しているところを見るに、ワインを飲んでいるように見受けられますね。

わざわざ喧しい都会を離れて来たのですから、居酒屋ではなく静かなバーに入ったのかも知れませんね。

そして何より気になるのはグラスに入ったお酒を「」と表現しているところです。

何故ストレートにワインではなく毒と表現したのでしょうか?

酒は百薬の長という言葉がありますが、お酒というのは飲み方次第で毒にも薬にもなる飲み物です。

主人公は深酒をして記憶がなくなる程にたくさん飲むつもりなのでしょうか。

その線も考えられるのですが、衝動的に電車に乗り込んで遠くの街にまで来てしまう精神状態です。

今日の酒は気持ち良く酔う為の酒ではありません。

一時だけでも現実を忘れ、現実から逃げる為の酒です。

この部分に曲名になっている【ワンナイト・アルカホリック】が掛かっていますね。

つまり、主人公は自分でも今日の酒が良いものではないと理解しているのです。

毒をもって毒を制すという事なのでしょうか。

飲み過ぎが心配ですね。

酔いがまわる

知らない町の知らない人
覚えたばかりのソレを飲めば
誰もが馬鹿に想えます

出典: ワンナイト・アルカホリック/作詞:山田亮一 作曲:山田亮一

酒が少し回ってきているようですね。

そして主人公はどうやらまだかなり若いみたいです。

酒を覚え、酒の力を知ったのでしょう。

冒頭で電車に乗り込んだ時も、覚えたての酒の事が頭を過ぎったのかも知れません。

そしてここでいわれている「誰もが」の中には自分自身の事も含まれているのではないでしょうか。

雑音

訳アリっぽい男女の番が
何やら耳打ちで話出して
「どうして?」の問いに
「愛してる」って
答えになってないぜ兄さん

出典: ワンナイト・アルカホリック/作詞:山田亮一 作曲:山田亮一

静かな店内というのは思っている以上に声が響くものです。

その招かれざる声は、現実から目を背けるために此処へやってきた主人公の耳にも入ります。

つまり、これは何処へ行っても嫌な事からは逃げられないという事です。

何か1つ嫌な事がなくなったとしても、また新たな問題がいつまでも付いて回るものだという事を表現しているんですね。

そこに程度の差はあれど、どこまで行っても人間はしがらみから逃げられない生き物なのかも知れません。

溺れる

興が醒める

居心地が悪くなってきて
席を立とうと思った時
ぽつぽつと雨が降って来て
再び品書きに目をやれば

出典: ワンナイト・アルカホリック/作詞:山田亮一 作曲:山田亮一

現実逃避先で不意に居心地の悪い現実を見せ付けられた主人公は、席を立つ事にしました。

この時点で冷静な判断が出来ているところを見るに、既に酔いは醒めてしまっているようですね。

そんな時にふと外に目をやると、どうやら雨が降っているようです。

雨はポツポツと降っている程度なので、このまま帰ろうと思えば帰れたはず。

では何故主人公はそうしなかったのでしょうか?

劣等感

雨曝しの学生が
笑いながら駆け抜けてく
想わず目を逸らしてシまう
覚えたばかりの毒が回り
昨日さえも昔の様です

出典: ワンナイト・アルカホリック/作詞:山田亮一 作曲:山田亮一

主人公は雨の中、濡れながら帰るのを嫌い店内に残る事を決めました。

しかし外を見ると雨など気にもしていないかのように笑顔を浮かべ、楽しそうに走る学生達の姿が目に入ります。

それを見た主人公は思わず目を逸らしてしまうのですが、少し不思議な感じがしますね。

学生が知り合いで見つかりたくなかった訳でなければ、学生が疎ましかった訳でもありません。

目を逸らした理由とはズバリ、怖いものなしに生きる学生が眩しくて余りにも羨ましかったからです。

ここで使われている雨とは「不快なもの避けて通りたいもの」の表現であります。

主人公は実生活の中でストレスが溜まり、耐えられなくなってここまで逃げて来ました。

そんなところを、まるで何も怖いものがないかの様に走り抜ける学生達が現れたのです。

強い劣等感を抱いてしまうのも無理はありませんね。

主人公にもそんな風に輝いていた頃があったはずです。

だからこそ、今の嫌な事があれば簡単に「避けて通る」という選択をしてしまう自分に嫌気が差してしまったのでしょう。

そんな負の感情を忘れる為に、主人公は更に深酒をするのですね。

それでもお酒で嫌な記憶をなくす事は出来ません。

ただ記憶を薄れさせ、遠い過去の出来事であったかのように錯覚させるのです。

最後に