「暗闇」「躓き」といったネガティブな言葉が並んでいます。

この主人公はきっと暗い気持ちを抱えているのでしょう。

幼い頃に家族を失った真野礼二と重なる部分がありますね。

その暗い気持ちから抜け出すためには、真実(=ひと筋の光)を見つけるしか方法がないのだと思います。

でも、簡単には真実に辿り着けないことが、この歌詞から分かります。

「地図探す」といっているので、どのような手順で真実を探せば良いのか分かっていないのでしょう。

分からないことだらけだから、躓くこともある。

それでも主人公は、真実を探すことを諦めたくないのだと考察できます。

涙を流す程度じゃ前向きになれないけど…

流した涙の数だけ強くなれる なんて 知らない
だけどわかることはひとつ 立ち止まってなんてないと

出典: crystal/作詞:大西省吾・高木誠司 作曲:大西省吾

「流した涙の数だけ強くなれる」というのは、色々な場所でよく聞く言葉ですね。

しかし、この主人公はそうとは限らないと思っているようです。

心に抱えている傷が深すぎて、涙を流す程度じゃ全然前向きになれないということなのでしょう。

でも、前向きにはなれなくても、真実を探すための行動はやめていません。

暗い気持ちを何とかして消し去りたいから、必死に真実を追いかけているのでしょうね。

「crystal」が指すものとは?

震えないで crystal
誰が泣いた?
歩き出した日から どれほどかな…

出典: crystal/作詞:大西省吾・高木誠司 作曲:大西省吾

ここで曲名にもなっている「crystal」という言葉が出てきましたね。

筆者個人の解釈ではありますが「crystal」は、主人公の心を指しているのではないかと思いました。

どんなに暗い状況に置かれたとしても、宝石のよう美しい心を主人公は持っているのでしょう。

だからこそ、諦めずに真実を追い求めることができるのだと思います。

つまり「震えないで」というのは、自分自身に向けた言葉なのでしょう。

深く傷ついた過去を思い出したり、思うように真実にたどり着けなかったりして、

震えるような気持ちになることもあるけど、それでも負けるな!と自分にエールを送っている。

そんな心情を描いているように思えます。

「歩き出した日」というのは、主人公が真実を追いかけ始めた日のこと。

真野礼二でいうと、事件の真実を探すために科捜研に入ろうと決めた日を指すのでしょう。

2番~ラストの歌詞

心の傷を隠そうとしているけど…

隠した痕 痛みはない 眠れない夜に軋むだけ
誰も泣いてなんていないのさ
なんてね ほら 全部嘘だろ
全部嘘だろ

出典: crystal/作詞:大西省吾・高木誠司 作曲:大西省吾

ここでも、自分の気持ちをごまかそうとしている主人公の様子を描いています。

過去に受けた心の傷を隠して「痛みはない」と強がる主人公。

しかし「全部嘘だろ」といっているので、本当はまだ傷ついているのでしょう。

真野礼二の場合だと「隠した痕」というのは、家族を失った時に受けた心の傷を指しています。

家族を一気に失ったのだから、そう簡単に癒える傷ではないのだと推測できますね。

立派な大人になって、科捜研に入った後でも、過去を思い出して泣きたくなることはあるのでしょう。

愛されたいばかりでは、上手くいかない

綺麗な何かに憧れ 知らずに傷つけていたり
だけどわかる 誰もが皆 愛されたいんだってこと

出典: crystal/作詞:大西省吾・高木誠司 作曲:大西省吾

深く傷ついた心を抱えている主人公。

だからこそ、綺麗な「何か」に憧れてしまうのでしょう。

しかし、その憧れを手に入れるどころか、周りの人を傷つけてしまって全然上手くいかない。

そんな空回りしている様子を描いているように感じられます。

「誰もが皆 愛されたい」という言葉も非常に深いですね。

主人公だけでなく、みんな本当は心の奥底で「愛されたい」と願っていることが分かります。

しかし「愛されたい」といった受け身の人ばかりで集まっても、

愛してくれる人がいないから、上手くいかないということなのでしょう。

愛されたいのなら、まずは自分から積極的に愛する気持ちを持たないと上手くいかない。

そんなことを学べる歌詞ですね。

「乱反射」に込められた意味とは?

震えないで crystal
乱反射
ココロざらついたなら 走ればいいんだ
息切らしてみても 倒れても
いつか見た夢を探してるよ

出典: crystal/作詞:大西省吾・高木誠司 作曲:大西省吾

ここでは「乱反射」という言葉に注目してみましょう。

クリスタルのような宝石は、石自体が発光して輝くわけではありません。

宝石に光が当たった際に乱反射が起こるので、光り輝いてみえるのです。

暗闇のような暗い状況に置かれている主人公。

しかし、真実(=光)を見つけることによって、乱反射して輝きを取り戻せるということなのでしょう。

「走ればいい」というのは、真実を探すことに全力になればいいという意味なのかもしれません。