詩人として生きる
お願い夢醒めたら 少しでいいから
無敵の微笑み 見せてくれ
君は生きてく 壊れそうでも
愚かな言葉を 誇れるように
出典: 雪風 / 作詞:草野マサムネ 作曲:草野マサムネ
このフレーズは草野が自分自身に語っていますよね。あの日の夢に浸る自分、でも雪風はいつか止んでしまいます。
ずっと自分だけの世界に閉じこもっていることは出来ません。現実は近いうちにやってくるのです。
だからこの風が止んだらいつもの自分に戻るんだと、そう考えているのです。
「愚かな言葉を 誇れる」というフレーズは、スピッツで数々の作詞を経験してきた草野マサムネに当てはまりますよね。
40作目のシングルを出すベテランでも、自分の作品を世に出すときには不安があるのでしょう。
自分が生み出した言葉を、誇れるくらい強く生きていくという、決意がここに読み取れます。
自分を励ます
涙が乾いてパリパリの 冷たい光受け立ち上がれ
まだ歌っていけるかい?
出典: 雪風 / 作詞:草野マサムネ 作曲:草野マサムネ
現実では微笑みを見せる自分ですが、雪風の中ではどんな表情をしていたのか。泣いていたのでしょう。
でも吹雪が晴れる前に泣き止まないといけません。だから「涙が乾いて」いるのです。乾いた涙が端的に「決意」を表す、すばらしい比喩表現です。
そして風は止み太陽が射し込んできます。雪景色の「冷たい光」です。
そして最後のフレーズ「まだ歌っていけるかい?」は明らかに自分自身に問いかけています。吹雪を見るたびに弱くなる自分だけど、まだやれるかと、確認しているのです。
二重の内面世界
この曲はスピッツ初の雪ソングだったそうです。九州生まれの草野マサムネが、幼き日に雪の中を突き進んだことはないでしょう。
つまりこれが全て彼の脳内世界なのです。二重のインナーワールドで構築されている曲であることがわかるでしょう。
そして雪の思い出を持つ主人公と草野マサムネの姿は、「愚かな言葉」や「歌っていけるかい?」というフレーズで重なっていきます。
自分の経験を混ぜ込んでいるのではないかと思います。だから創作した表現にも現実味があるのでしょう。
全て妄想のはずなのに不思議なリアリティーがあるのが、彼の作詞の素晴らしいところですよね!
おわりに
草野マサムネの詞
これまで様々な歌詞を解釈してきましたが、草野マサムネの詞は難解で読み解くのが楽しいです。誰もがやることを、幻想的な夢の世界のように書くのが彼のすごいところ。
「ロビンソン」「チェリー」「空も飛べるはず」などの大ヒット曲ですら、歌詞は難解で読み解けないところがあります。
しかし難しい言葉を使っているわけではないので、さらっと聴けてしまうのも草野の才能ですよね。
平易な言葉で語りすぎると、日本語が耳に付きすぎて演歌っぽくなってしまう、というのが90年代のバンドが直面した危機でした。
それを打ち破っていったのがサザン、ミスチル、そしてスピッツだったのではないかと思います。
(サザンの桑田には、言葉の響きが新しすぎたために、視聴者が聞き取れず音楽番組に歌詞字幕が付くようになったという逸話があります。)
先駆者として日本語の表現を追求し続けてきた草野マサムネ、彼の詩的な世界に注目してこれからもスピッツを聴いてみてください。それでは。
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