「ラジオデイズ」はどんな曲?

スピッツの「ラジオデイズ」。

良い意味で捻くれた主人公を救ってくれるのはラジオ。

そんな想いが、疾走感のある音楽と爽やかなボーカルで届けられます。

具体的には、どんな鬱積を歌っているのでしょうか。

歌詞を徹底的に紐解いていきます。

作詞・作曲を担当した草野正宗はどんな意図を持っていたのか。

シニカルかつ爽快感のある不思議な歌詞の魅力に浸っていきましょう。

「ラジオデイズ」の1番の歌詞

どこの貴族?

選ばれたのは 僕じゃなくどこかの貴族
嫌いになるために 汚した大切な記憶

出典: ラジオデイズ/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

冒頭から、何の話をしているのか掴みづらい歌詞ですね。

貴族は何に選出されたのでしょうか?

明確な答えが書いてないので定かではないです。

しかし、僕と貴族が対比されるのはどんなときか考えてみると解答がみえてきます。

貴族とおそらく一般庶民である僕が比較されるのは、恋愛ではないでしょうか。

それ以外の事柄を考えても、立場が違いすぎて比較できる項目はない気がします。

意中の女性が自分ではなくて、貴族を選んだということかもしれません。

そう考えれば、2行目でなぜ記憶が汚れてしまったのかの答えもみえてきます。

歌詞の主人公は、好きだった女性を嫌いになるために意識下であることをしたのです。

自分のその女性に対する記憶を、楽しくない思い出で塗りつぶしたのでしょう。

日本では、貴族という身分制度は一応廃止され、一般的ではありません。

貴族というのは喩えで、どこかのお金持ち家系の男性のことを指しているとも考えられます。

不思議な表現

足が重くて 心も縮むような

出典: ラジオデイズ/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

歌詞の主人公の心情を表現しているのでしょう。

足を引きずっている様子が窺えます。

何をするにも気が進まないイメージですね。

心もオープンではなく閉じてしまったのでしょう。

そして小さくなってしまったのです。

主人公の気持ちは大きく傷ついてしまっている状態です。

原因は、先ほどの歌詞から読み取れます。

貴族や権力者、もしくはお金持ちに意中の女性を取られてしまうというのは理不尽なものです。

自分と相手の人間力で比較されたなら、まだあきらめがつくかもしれません。

しかし、生まれながらの立場によって、女性が選ぶ人間を変えてしまうとしたらどうでしょう。

男性側としては、やるせなさだけが残ります。

立場で選ばれるというのは、よくある事実です。

女性だって、自分の人生がかかっているわけですから、お金や権力のある男性の方が安心でしょう。

ただ、それらを持ってない男性は不平等だと感じてしまうわけです。

学校ではみんな平等だと教えられますが、不平等なことは実はたくさんあります。

歌詞の意味に幅を持たせる草野正宗は、理不尽や不平等全体の喩えとして貴族を出したのかもしれません。

ラジオが救うサビの歌詞

ラジオへの感謝が綴られる

そんな日々を拓く術を 授けてくれたのはラジオ
したたかに胸熱く 空気揺らしてくれるラジオ

出典: ラジオデイズ/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

主人公は人生や社会に対して理不尽なことをたくさん感じていたのでしょう。

しかし、そんな彼を救ってくれたのは他でもないラジオでした。

ラジオが主人公にとって唯一の希望だったように表現されています。

ラジオは何気なく聴いているという人も多いかもしれません。

よく聴いてみると、熟練のパーソナリティのウィットに富んだ会話や叡智が詰まっていると気づきます。

主人公にとっては、とても多くのことを吸収できる、学びの場だったのでしょう。

それに、パーソナリティとの距離を近く感じられるのもラジオの魅力。

塞ぎきっていた主人公のそばで、淡々と語りかけてくれる声。

その声に、彼は心を開いたのだと思います。

どんな番組を聴いている?

主人公はどんなラジオ番組が好きだったのでしょうか。

ラジオ好きがハマるのが深夜ラジオだといわれています。

お昼の時間帯と比較して、癖のあるパーソナリティが独創的な見解を述べる番組が多い印象です。

悶々と受験勉強をしているときや、眠れない夜。

そんなときに、深夜ラジオに救われたという人も少なくありません。

「ラジオデイズ」の主人公も、その1人だったのではないでしょうか。

昼間に悶々と積もった鬱積を、夜のラジオの笑いで吹き飛ばす。

そんな彼の青春こそが、「ラジオデイズ」だったのだと思います。

ラジオイコール、青春なんですね。

スポーツや恋愛に明け暮れる一般的なイメージの青春とは違います。

しかし、そんな青春も確かに存在し、またかけがえのないものなのです。

主人公はラジオを肯定し、自分自身をも肯定しているのでしょう。