2017年6月18日に開催された感動のラストライブ

この日初めて演奏された「LAY YOUR HANDS ON ME」

BOOM BOOM SATELLITES【LAY YOUR HANDS ON ME】歌詞を和訳&解説の画像

「FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE」

BOOM BOOM SATELLITES(以下ブンブン)が2017年6月18日に行ったラストライブのタイトルです

ラストシングルとなった「LAY YOUR HANDS ON ME」が演奏されたのはこの日だけ。

その理由は2016年10月9日ブンブンのフロントマン川島さんがこの世を去ったからです

川島さんの立ち位置に置かれたマイクとギターアンプ。

最後に録音された川島さんの歌声が鳴り響きます。

彼との最後のセッションを慈しむように荘厳な響きを奏でる中野さん。

川島さんが文字通り命を捧げて制作された「LAY YOUR HANDS ON ME」

そこにはどのような想いが込められていたのでしょう。

今回は「LAY YOUR HANDS ON ME」の歌詞からブンブンの歴史を振り返ってみます。

「LAY YOUR HANDS ON ME」…言葉に込められた信念

BOOM BOOM SATELLITES【LAY YOUR HANDS ON ME】歌詞を和訳&解説の画像

タイトルにもなった歌詞の最初のフレーズ。

デモ音源を元に作詞作業に入った川島さんから自然と沸き上がった言葉です。

川島さんの死因は脳腫瘍

最初にこの病気を発症したのは1997年。

KEN ISHIIも所属したベルギーの老舗テクノレーベルR&Sと契約した直後のことでした。

ワールドツアー直前の手術。その後15年以上に渡り病気のことは公にしなかったのです

最初の発症から幾度となく手術と抗癌治療を続けますがついに5度目の発症を起こします。

すでに川島さんに言い渡された余命は1年

そんな時期に制作されたのが「LAY YOUR HANDS ON ME」です。

零れ落ちるのは希望の言葉

Lay your hands on me while I'm bleeding dry
(その手で触れていて、僕の生命が抜けてゆく間)
Break on through blue skies,I'll take you higher
(青空を突き抜けて、君をもっと高いところまで連れて行くよ)

出典: LAY YOUR HANDS ON ME/作詞:川島道行 作曲:BOOM BOOM SATELLITES

5度目の脳腫瘍が発覚したのは2015年7月。

フジロックフェスティバルで圧倒的パフォーマンスを見せた後のことです。

川島さんはすでに感覚機能・記憶能力が著しく低下している状況。

そんな中で「LAY YOUR HANDS ON ME」は産み出されました。

歌詞を書き上げるのに数か月。

極限状態の川島さんが最初に書き上げたフレーズがタイトルにもなった一番最初のバースです

弱っていく身体能力。あと何日生きることができるのだろう。

しかし言葉には希望が溢れています

アンダーワールドの「Born Slippy」のような美しい電子音で始まるイントロ。

命が燃え尽きそうなとき、人はここまで音楽に希望を見出せるのでしょうか

僕はいつもここにいる

BOOM BOOM SATELLITES【LAY YOUR HANDS ON ME】歌詞を和訳&解説の画像

Caught up in circles All dreams and bright lights
(輪になって廻っている、全ての夢と輝く光が)
Wait I'm here always,brighter than sunshine
(僕はいつもここで待っている、太陽よりもまぶしく輝きながら)

出典: LAY YOUR HANDS ON ME/作詞:川島道行 作曲:BOOM BOOM SATELLITES

何度も2人で手直しされる歌詞。

ここはこうしよう。OK。

しかし翌日には川島さんにその記憶はありません。

必死で彼の想いを形にしようとする中野さん。

家族以上に濃密な時を2人は過ごします

2人が出会った日。その時抱いた夢が失われゆく記憶から零れ落ちてゆく。

「僕」という主語は川島さん自身ともBOOM BOOM SATELLITESという青春の記憶とも受け取れます

走馬灯のように脳裏をよぎるのは2人で描いてきた輝く夢のような日々。

「明日はもうこの世にいないかもしれない」

しかし「僕」が残した音と言葉はいつまでも作品の中に残るのです

君の心へ

I fly
(僕は飛ぶ)
Fly out
(飛び立つ)
Fly out to your heart
(君の心へと飛び立つ)
Fly out
(飛び立つ)
Fly out
(飛び立つ)

出典: LAY YOUR HANDS ON ME/作詞:川島道行 作曲:BOOM BOOM SATELLITES

命を削るように歌われるサビ。

1日に1フレーズしか歌えない。

大丈夫だよ、君は飛べる

そうだ僕はこの音に乗ってどこへでも行ける

まるで2人の会話が聞こえてくるようです。

川島さんが飛び込みたいのは誰の心の中だったのでしょう。

四半世紀を共に過ごした友人の中。

支えてくれたファンの心の中。

何よりも残された2人のお子さんの心の中だったのでしょう

彼がこの世を去ったとしても再生ボタンを押せば生き生きとした姿の川島さんに出会えるのです

諦めたら試合終了