歌詞1段目の表現からは、少女が意識だけの存在のように読み取れます。

つまり少女がいるのは現実ではなく、夢の世界

この世界が少女の作り上げた幻想だと考えると、不思議な出来事も理解できますね。

少女はうさぎを探しているうちに、今度は王子さまと出会います。

歌詞のチャンドラマハルとは、インドに実際にある宮殿です。

今も王族の住居として存在しています。

チャンドラ・マハルは1727年から1734年にかけて建設された白く輝く7階建ての宮殿

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/シティ・パレス_(ジャイプル)

説明を読むと、月の宮殿という言葉はピッタリですね。

そんな宮殿の王子さまからダンスの誘いが来たら、ほとんどの女性は応じるでしょう。

歌の中の少女も、うさぎのことを忘れてワルツを踊り始めます。

少女が求めるもの

虫たちとのダンスパーティ

睫の長い 蝶々たちが
シフォンのドレスでひらひらと
虹色タイツの かぶと虫は
剣の ダンス

出典: 月のワルツ/作詞:湯川れい子 作曲:諫山実生

うさぎとのダンスとは対照的に、こちらは賑やかな踊りになっているようです。

アゲハ蝶のような綺麗な虫が、ワルツの音楽とともに舞い踊ります。

ちなみに「シフォン」とは、薄く柔らかい布のことです。

シフォンケーキの「シフォン」も同じ語源になります。

虹色タイツとあるように、かぶと虫は海外の色鮮やかなものを想像するのが良いかもしれません。

蝶を世話役、かぶと虫を兵士と考えると、虫たちは王子さまの従者のようですね。

華やかな虫たちとのダンスパーティは、童話の世界そのものです。

求めるのは愛

求めるものは なあに?
誘惑の迷宮
ミルク色の 霧の彼方
確かな 愛が欲しい

出典: 月のワルツ/作詞:湯川れい子 作曲:諫山実生

ここでは王子さまに「求めるものは何?」と訊いているようです。

しかし、これが少女の夢だと考えると、これは自分自身への問いかけにも思えます。

今まで少女は夢の中で、うさぎや王子さまと一緒に踊ってきました。

綺麗な蝶や王子さま、ワインなどが好きなものを好きなだけ堪能しています。

彼女は自分でも気づいていない欲求を、夢の中で満たそうとしていたのかもしれません。

しかし、「霧の彼方」とあるように、それらはすべて夢です。

掴もうとしても掴むことはできず、夢から覚めてしまえばすべて消えてしまいます。

幻の中に愛を求める姿は、ある意味「マッチ売りの少女」と同じです。

ただ、少女が求めているのは家族への愛ではありません。

男女の愛です。

少女が愛を求める理由

貴方の正体

冷たいこの 爪(つま)先を
白鳥の羽根で くるんで
「月の宮殿」の王子さまは
貴方に似た瞳で 笑う

出典: 月のワルツ/作詞:湯川れい子 作曲:諫山実生

このシーンは、1人で眠る淋しさを描いているようです。

以前までは、一緒に寝てくれる人がいたのでしょう。

しかし、今は愛する人がいないことを冷たいつま先が教えてくれます。

淋しげな少女を、優しく包み込む王子さま。

そこで少女は王子さまの目を見て、あることに気がつきます。

実は、今まで登場したうさぎも、王子さまも同じ人物だったのです。

少女はもしかしたら、遠距離恋愛をしているのかもしれません。

現実では貴方に会えずに少女は淋しい思いをしています。

その埋め合わせをするために、少女は夢の中で貴方の代わりになる人物を作ったのです。

ただ、結局その埋め合わせは出来ませんでした。

そんな少女に向けて、王子さまは微笑みます。

永遠なんてない

“満ちては 欠ける
宇宙を行く 神秘の船
変わらないものなど無い、と
語りかけてくるよ”

出典: 月のワルツ/作詞:湯川れい子 作曲:諫山実生

「月が満ち欠けをするように、永遠のものは無いんだ」と王子さまは語ります。

つまり、少女と貴方が会えないのも、特別なことではないと励ましているのですね。

淋しい思いをしている現実の自分を、夢の中の自分が励ましている場面でもあります。