薄暗くとても幻想的な雰囲気を醸し出している「ひび割れた世界」MV

majikoが上下逆さで歌ったり、真っ白なカーテンに包まれている光景が印象的です。

こういったシーンについて制作した林響太朗監督は、「重力もない精神世界、儚い心のような世界を表現したかった。」と語りました。

本作のMVも、儚くも全体的に狂気を孕んだ「限界団地」に相応しい内容に仕上がっていると思います。

歌詞を解説

ここから先は、本作の歌詞について筆者なりの解釈を入れていきたいと思います。

雨が降る中、一つの決意をする主人公

君の心と共鳴するように
泣き出しそうな空を見て決めたんだ
悲しい雨に打たれないように
君の全部 そう全部 僕が守るよ

出典: ひび割れた世界/作詞:小倉しんこう 作曲:小倉しんこう

歌の物語に登場する主人公は、恋人か何かは分かりませんが守りたい大切な人物がいるようです。

ですが、その子は何か辛い出来事に遭ったのでしょう、今にも泣き出しそうな気持ちでいっぱいのようです。

その悲しい心を投影するかのように、空も雨が降り出す始末…。

降り出した冷たい雨粒にポツポツと打たれる主人公は、「もう君を悲しい思いにさせない」と強く決心しました。

どんなことがあってもこの手は離さない

今日まで僕が生きて来たのは
今日から僕を導いてくれるのは
言葉にすると消えてしまうくらい
君のための 純粋で 強い光

この繋いだ手を離さないで
ずっと隣にいるから

出典: ひび割れた世界/作詞:小倉しんこう 作曲:小倉しんこう

今まで生きてきた長い人生、そしてこれからの人生を大切な人を守っていくために使うと決めた主人公。

「好き」とか「愛してる」とかそんな陳腐な言葉は、君の前では全て霞んでしまう。

でも、何があっても繋いだこの手だけは決して離さない…。

たとえ誰を敵に回したとしても僕は君の隣で、君を傷つけるものから守ってみせるから。

そんな主人公の強い愛情、いや執着のような感情がここの歌詞からは伝わってきます。

“ひび割れた世界”に生きる二人

ひび割れた世界でも構わない
君が 君が 笑っていれば
もしも君が世界を嫌うなら
僕が 僕が 壊してあげる
ここに君がいなければ 嗚呼 意味のない世界だ

出典: ひび割れた世界/作詞:小倉しんこう 作曲:小倉しんこう

誰もが笑い合う理想的な世界なんてない。

この世は今も昔も他人を傷つけ、仮初の平和に現を抜かす欺瞞に満ちた悲しい世界。

そんな“ひび割れた世界”に生きていても、僕にとって唯一の光である君だけが笑ってくれるなら僕はそれで満足なんだ。

そんな君がこの世界に堪えられなくなったのなら、僕はいつでもこんな世界を壊す覚悟があるよ。

だってどんな世界だろうと、君が存在しないのなら僕にとっては無価値といえるのだから。

というようにここのブロックを解釈してみました。

主人公は本当に“君”という存在だけを人生の動力源としているようです。

世界を壊すという表現に、彼の愛の重さが嫌でも感じ取れますね。

硝子のように脆い世の中

僕らが生きる世界はまるで
触れれば割れる 脆く儚い硝子
怖かったのは ただ一つだけ
破片が君の心を傷付けないか

ねぇ忘れないで この温もりを
僕は君を離れない

出典: ひび割れた世界/作詞:小倉しんこう 作曲:小倉しんこう

一昔前とは違い、ちょっとしたすれ違いで擦れていく人間関係の希薄さ。

コミュニケーションにも温かみ(人情)が無くなり、“絆”の存在を確かめづらくなったのが今の社会が抱く暗い側面。

そんな世の中を歌の中では、“脆く儚い硝子”のようだと揶揄しています。

確かに今の世の中は、人との距離感というのが大分離れていっているように感じます。

テクノロジーの発展で便利になった分、それに反比例して人間同士の関わり合いが薄らぎ、すぐに他者を攻撃する攻撃性が伸びていっているような感じ。

主人公は、そんな世界に生きる大切な人がその危険に巻き込まれることを危惧しているようです。

ネットでの人格を軽んじられるような発言や、職場などで味わう理不尽な待遇、評価。

そういった“硝子の破片”で君の心は傷つけられていないかが心配…。

でも、赤の他人がいくら君を馬鹿にしようと、僕は変わらず君の隣で微笑んでいるよ。

そんな気持ちが読んでいて伝わってきます。

君を護りたい