「Wishing On The Same Star」と切なる想い

夜空の星を仰いでみる

安室奈美恵【Wishing On The Same Star】歌詞を和訳&解説!なぜ星に願っている?の画像

2002年9月11日発表、安室奈美恵の通算22作目のシングルWishing On The Same Star」。

アメリカ同時多発テロ事件からちょうど一年後に発表された楽曲です。

映画」の主題歌として記憶されている方もいらっしゃるはず。

芥川賞小説家・柳美里の著作「命」を元にした映画作品にぴったりの内容の歌詞になっています。

安室奈美恵は切ない思いを夜空の星に願う女性の姿をしっとりと歌い上げました。

誰しもが恋愛の際に感じる切なる願い「いつまでも結ばれていたい」。

そんな想いを夜空の星を仰いで祈ります。

安室奈美恵楽曲らしく随所に英文が添えられていますので和訳しながら解説いたしましょう。

それでは実際の歌詞を見ていきます。

映画「命」とともに読み解く

深刻さを含んだラブソング

安室奈美恵【Wishing On The Same Star】歌詞を和訳&解説!なぜ星に願っている?の画像

心からあなたをおもう
導かれるまま歩んできた道
悲しみに負けないように
忘れないよどんな時も
We'll never really be apart

出典: Wishing On The Same Star/作詞: Diane Warren kenko-p 作曲: Diane Warren

歌い出しの歌詞です。

歌い上げるタイプの曲ですので、マスターできたらカラオケなどで披露したくなるでしょう。

一部英詩がありますので和訳を添えたもので解説いたします。

「心からあなたをおもう

導かれるまま歩んできた道

悲しみに負けないように

忘れないよどんな時も

私たちは本当に別れ別れになることなど決してないの」

一途な愛の清廉さを歌い上げる声に聴き惚れることでしょう。

語り手の女性はどこまでも相手のあなたのことを慕っています。

語り手の私が時折、悲しむ理由は何でしょうか。

理由は明示されません。

この作品がKeedyというアーティストの楽曲のカヴァーであることは既に触れました。

オリジナルの楽曲はもちろんすべて英詩です。

この英詩の歌詞と安室奈美恵のヴァージョンでは若干の違いがあります。

両者とも大枠でのストーリーや大事な言葉は同じです。

しかし安室奈美恵のヴァージョンでは細部に少し手が加えられています。

おそらく映画「命」の主題歌であることを念頭にしてストーリーに手を加えたのでしょう。

「命」は柳美里という作家と恋人である演劇人・東由多加の間で起きた出来事をもとにしています。

東由多加は末期がんを患いますが、柳美里の胎内には新しい「命」が宿っていました。

東氏は他界するのですが、柳美里のもとには新しい「命」が届けられます。

柳美里にとって大事な息子の誕生です。

この一連のエピソードの影が「Wishing On The Same Star」の安室奈美恵ヴァージョンに反映させます。

いつまでもふたりが離れ離れにはならないというラインは映画「命」の中でひときわ輝くのです。

気になる方は映画「命」をご覧いただくか、柳美里の原作「命」を一読してみてください。

安室奈美恵のヴァージョンの「Wishing On The Same Star」の歌詞をより深く受け止められます。

「Wishing On The Same Star」は非常に深刻な内容を含んだラブソングであることを認識してください。

ふたりでひとつ

同じ星を指差すように

安室奈美恵【Wishing On The Same Star】歌詞を和訳&解説!なぜ星に願っている?の画像

We'll be wishing on the same star
Looking at the same moon
そらへと差しだした
この指のむこう
ひとつに結ばれたい
ふたりがいる
Wishing on the same star
Looking at the same moon

出典: Wishing On The Same Star/作詞: Diane Warren kenko-p 作曲: Diane Warren

タイトル回収の名シーンといえましょう。

英文を含みますので訳出いたしました。

「私たちは同じひとつの星に願いをかけるでしょう

同じ月を見つめるの

そらへと差しだした

この指のむこう

ひとつに結ばれたい

ふたりがいる

同じひとつの星に願いをかけている

同じ月を見つめるの」

星に願いを」というスタンダード・ナンバーを想い出す人もいるでしょう。

ここでは語り手の私と愛するあなたが同じ星に願いをかけるのです。

あたかも人々が見つめる月が同じものであるかのように同じひとつの星を見つけること。

満天の星空の数多ある星の中からひとつの星をともに選んで一緒に祈りを捧げる仕草。

実際にやろうと思うとかなり難しいことなのでしょうが、そうした指摘は野暮かもしれません。

星は晴れた夜空であれば見つけることができます。

同じ星に祈ることはふたりがずっと一緒にいられるという素朴な愛の願いです。

都会では中々星空が広がりません。

少し郊外に移動した土地が舞台であるのでしょう。

Keedyのオリジナルのヴァージョンでは「I」「You」という単語が頻発します。

一方、安室奈美恵のヴァージョンでは「あなた」という言葉は冒頭にしか登場しません。

その代わりに「ふたり」という言葉が頻発しているのが特徴になっているのです。

分かち難い愛であること。

ふたりでひとつ」という意味をより前面に押し出した結果なのでしょう。

雨の夜に願うこと

妨げがあるからこそ燃える愛

安室奈美恵【Wishing On The Same Star】歌詞を和訳&解説!なぜ星に願っている?の画像

どこまでも果てしないから
夢の続きへとふたりでもどろう
うちつける激しい雨が
あがるように祈りましょう
We wait for lovely clear sky

出典: Wishing On The Same Star/作詞: Diane Warren kenko-p 作曲: Diane Warren

時刻は夜半すぎ頃でしょうか。

「どこまでも果てしないから

夢の続きへとふたりでもどろう

うちつける激しい雨が

あがるように祈りましょう

私たちは愛すべき空が晴れ渡るのを待っている」

この夜はあいにくの雨模様です。

それも豪雨のようで少し恐怖を抱きます。

このままでは星に願いをかけられません。

ふたりが穏やかに眠るためにはどうしてもクリアな空が必要なのです。

彦星と織姫が雨の中では会えない七夕の伝説は日本固有のもの。

雨が降ると願いが叶わないシチュエーションは少し似ているかもしれません。

宇宙的なスケールを持ったストーリーへと変化します。

ふたりが結ばれるための条件。

晴れ渡った夜空。

残念ですが自然の営みの中で毎晩、星がまたたくというものではありません。

雨雲に遮られて星の見えない夜はせめて夢の中でふたりが出会えることを祈るしかないのです。

ふたりの命運は天候によって左右されます。

それは障害物のない恋愛など存在しないことを象徴するのです。

幾多の妨げがあるからこそ、条件がクリアになったときの再会の喜びが大きくなります。

いつも同じ部屋にふたりでいられることも幸福の形です。

しかし時に折り通い合うからこそ愛が高揚するという経験がリスナーにもあるはずでしょう。

斯様に中々会えない愛もまた固有の幸福を抱いているのです。

私たち人間は