ド頭からの訴求力。これぞエレカシ
日本を代表する個性派ロックバンド「エレファントカシマシ」。
彼らの40枚目のシングル曲となる【明日への記憶】に注目してみました。
本楽曲は心にぽっかりと空いた穴を埋めてくれるようなパワーを感じられる歌詞が魅力的です。
もちろん作詞作曲は宮本浩次さん。
Aメロから描かれる「虚無に生きる人」
何もない俺の心 そのまま
出典: 明日への記憶/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
歌詞の冒頭から自分の心は空っぽだ、という主人公。
どうすることもできない虚無感を訴えかけてきます。
リスナー側にしてみれば「この人には何があったんだろう」と不安になるようなフレーズですね。
実はその点がエレファントカシマシの歌詞の最大の特徴でもあります。
衝撃というより衝動的な詞
エレファントカシマシ最大のヒット曲【今宵の月のように】からも見て取ることができます。
宮本浩次さんの歌詞のはじまりにはいつも、いきなりグーパンチで殴りかかられるような衝撃があるのです。
衝撃は感情的な衝動と置き換えてもいいかもしれません。
くだらねえと呟いて醒めたつらして歩く
出典: 今宵の月のように/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
この歌詞の主人公は何に対してくだらねえと呟いたのでしょうか。
人間はくだらねえと呟くときは決して良い状況ではないはずです。
そんな中で見上げた月の見え方が描かれている歌詞になっています。
このように冒頭の切り口が衝動的なのがエレファントカシマシの歌詞の特徴なのです。
リスナーの興味を引く仕掛け
この人に何があったの?と思わされたら、あとはリスナーとしてその世界観を聞き入るしかありません。
そして同じように心の動きを体験し感じとるのです。
そうすることでエレファントカシマシの世界観はぐっと身近なものとして存在感を増すのです。
文学的な比喩が与えた歌詞の奥行き
ヒントは「都会」「鏡」「うつすだけ」
この都会(まち)の形を鏡のようにうつすだけ
ただ理想に振り回されてきた俺に
昇りくる太陽 揺れるアスファルトの上
出典: 明日への記憶/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
注目すべきは1行目のまるで小説のような比喩表現。
これは一見、普通のように見える比喩ですが実はものすごく奥が深いものです。
ここで宮本浩次さんの才能が爆発しているといっても過言ではありません。
夜が明け、太陽が昇っている光景が目に浮かびます。
そして最後の1行にあるように、「揺れる」のは太陽によってできた自分の陰でしょうか。
理想と現実の狭間に思うことがあり、その影を見つめているようです。
その様子は心ここにあらずといったところでしょうか。