まずは収録されたアルバム名に注目!
さて、歌詞の内容に迫る前に、アーティストのアルバムには全ての曲に共通したテーマが込められていることがあります。
ここで歌詞の本質を探るために改めて【昔の侍】が収録されたアルバムを見てみましょう。
アルバム名は、「明日に向かって走れー月夜の歌/エレファントカシマシ」。
1997年に発売されたエレファントカシマシの9つ目のアルバムになります。
タイトルにも使われている「明日に向かって走れ/エレファントカシマシ」から始まり、全収録曲数は11曲です。
宮本さんの音楽作りは普段の生活との関わり合いが深いといいます。
それは「LIFE TOUR 2002/エレファントカシマシ」の特典映像であるインタビュー映像でも語られていました。
ではこちらのアルバムに影響されたものとは何だったのでしょうか。
全ての曲名や歌詞を見ると、そこには激励という2文字のテーマが浮かんできます。
自分や誰かを励まし奮い立たせるような応援歌。そんなナンバーばかりです。
では【昔の侍】はどうか
本題の【昔の侍】ですが、結論からいうと、こちらも他の収録曲同様、自らを鼓舞するような歌の構成になっています。
その込められたメッセージを探るため、まずは冒頭から歌詞を見てみましょう。
昔の侍は
自ら命を断つことで
自らを生かす道を
自ら知ってたという
戦う術を失う
我らはいたずらにその身体
秋風にさらしている
秋風にさらしている
出典: 昔の侍/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
簡単に要約すると
このパートは、現代に生きる人の憂いや嘆きを歌っているような歌詞ですね。
いつの時代も過去の人の姿は偉大なもの。
歴史を学ぶと、昔の人は自分が為すべきことを知っているかのように感じられます。
比べて現代の人々は忙しなく働きながら、何かを探し求めているようです。
幸せとは何か考え迷いながらも生きていく。
このパートの最後の一文は、そんな私たちの姿を投影しているようですね。
ここからどう歌詞のストーリーが推移していくか、内容を紐解きながら解説していきます。
注目すべきは対比の表現?ちりばめられた言葉の仕掛け
さて、先述した通り、この歌詞は「昔の侍」と「現代の人々」の対比から始まっています。
そしてこの後にもこのような多くの対比表現が登場します。
この対比こそが歌詞の本質的な内容、テーマに大きく影響しているのです。
そのことを踏まえて2回目のサビを解説
ああ 紅き空 登り来る朝日よ
ああ さよならさ
我らが青き日々よ
出典: 昔の侍/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
ここでは「紅」と「青」の対比が使われています。
これから朝日が登ろうとしている「紅き空」、 そして別れを告げられる「青き日々」。
この2つの単語はまるで「始まり」と「終わり」を対比しているようにも捉えることができますね。
青き日々とは?
「紅き空」は朝日が染める色。
何か新しいもの訪れを受け入れる様子というように描写を想像することができます。
では「さよなら」と告げられた「青き日々」は何でしょう。
それは、「自分の生きる道が分からなくとも必死に生きた」思い出など、いろいろな背景を推察できます。
青や紺は侍が好んで着ていた服ともいわれていることから判断すると、昔の侍のことかもしれません。
あるいは青春という言葉の如く、若い頃の自分を示唆しているという節も考えられます。
いずれにせよ「青き日々」とは過去のことを謳っているのです。
作詞に影響されていること
さて、歌詞の考察の続きに移る前に作詞に影響された物事を考察してみましょう。
文学好きでも知られている宮本さんですが、この歌詞には宮本さんの好きな歴史小説の影響が多く見受けられます。
【昔の侍】という曲名からも歴史との強い関連性を感じますね。