主人公は、恋人に浮気をされた女性のようですね。
衝動的に思いついたのは非常に過激な報復方法。本気で怒り心頭だったことが分かります。
浮気相手は彼女もよく知る友だち!
そうしたケースでは、もしかすると友だちがそそのかしたという可能性もあるわけです。
しかし彼女は、悪いのは友だちではなく彼だと確信しているのでしょう。
「あんたの」を二度繰り返しているところからも、報復のターゲットが彼しかいないのだと分かりますね。
うまく立ち回らなければすぐに浮気がバレてしまうような相手に手を出した彼。
もしかすると、彼女に告げ口をしたのは友だち自身なのかもしれません。
浮気をしようとしたけれど友だちには断られ、さらに告げ口までされる。
彼女が彼に対し「頭がおかしい」と言い放ったのは2つの理由からだと推測できます。
- すぐバレるような相手に手を出して正気なの?
- 私の友だちがそんな誘いに乗るとでも思った?
しかし実際に報復行動には出なかったので、一安心です。
2人の自分が行き来する
ふざけるな
(ここに神様がいたらきっと告げ口するでしょう)
許せない
(愛してたのに)
傷ついた
(二人になったらそれでも我慢できた)
最低な男ね
出典: 蹴飛ばした後で口づけを/作詞:秋元康 作曲:ながいたつ
このセクションでは、彼に向けられた言葉と彼女の本心が交互に表現されているようです。
主旋律のセリフ(カッコなし)は、彼女が彼に放った言葉なのでしょう。
カッコつきのセリフは、言葉を追いかけるように彼女の心が語っている感情ですね。
彼に浮気をされた女性としては、非常にシンプルな怒りをぶつけています。
浮気は、彼女に対する侮辱のようなもの。だからこそ「頭をかち割る」という報復まで考えたのです。
しかし実際に彼を目の前にしてしまうと「天罰が下ればいい」とどこか人任せ。
自分の手で報復しようとは思えなくなったのでしょう。
二人きりになった途端、優しくされたことや楽しかった思い出が浮かび、まだ好きだと自覚したのかもしれません。
口をついて出てくる言葉の中に「別れましょう」「大嫌い」が出てこないことからも想像できます。
「頭をかち割る」「頭がおかしい」と言っていた彼女からシンプルな言葉しか出なくなったのも、好きだからこそでしょう。
最低な男=子犬?
捨てられた子犬はじっと見つめながら
絶望を受け入れて背中向ける
出典: 蹴飛ばした後で口づけを/作詞:秋元康 作曲:ながいたつ
シンプルであっても彼女の怒りはしっかりと彼に伝わったようです。
決定的な言葉は発していませんが、彼にとって彼女の言葉は別れを突きつけたものと同等だったのでしょう。
子犬を捨てるとき、「今から捨てるね」と声を掛ける人はおそらくいません。
それと同じことがいえますね。
「別れましょう」とは言われていないけれど、彼女の言葉や態度から終わりを感じ取ったのです。
彼女は彼のことを「子犬」に例えましたが、浮気をされておきながらなぜ愛らしい存在に例えたのでしょうか。
これ以降の歌詞と関係がありそうです。
最後まで嘘が言えない女性
「別れましょう」と言わないままの彼女。
子犬のような彼から離れ、どのような行動に出たのでしょうか。
すがるような瞳を思い出す
嫌いになれないのは
なぜだか教えてよ
こんなに涙を流していても
私からあんたに駆け寄ってしまうなんて
出典: 蹴飛ばした後で口づけを/作詞:秋元康 作曲:ながいたつ
裏切られて、物理攻撃で痛めつけてやる!と思ってしまうほど彼を愛していました。
ですから、一度の裏切りで簡単に嫌いになれるはずがありません。
そして先程の歌詞に登場した「捨てられた子犬」という言葉。
彼女から責められているときの彼の表情を見て、子犬のようだと感じたのではないでしょうか。
そうだとすれば、飼い主を最後まで信じているきれいな瞳だったに違いありません。
捨てないで欲しい、まだ一緒にいたい。そんな感情を彼の表情から感じ取ったのでしょう。
それを見てしまっては、嫌いになれません。
悔しくて悲しくて仕方がないのに、彼の表情を思い出してしまうと愛おしさが溢れてしまいます。
言わないのではなく「言えない」
さよなら言えないのは
どうしてなんでしょう
出典: 蹴飛ばした後で口づけを/作詞:秋元康 作曲:ながいたつ
彼女は非常に素直に、自分の思いを彼にぶつけ続けてきました。
自分に嘘をつかない強い女性なのだと感じます。
別れの言葉を口に出せないのも、彼女が素直だから。
つまり、別れたいなんて微塵も思っていないのです。
思いは、口に出した時点でとても強い力を持ちます。
別れたくないのに「別れましょう」と言ってしまったら、それは彼女の意志として彼に伝わってしまうはずです。
「さよなら」を言ったら本当に終わってしまうから、彼女の無意識が別れの言葉をせき止めているのでしょう。