多くの時を一緒に過ごす中で、さまざまな感情を覚えた「僕」と「あなた」。
仲間、というワードを見ると、主人公の周りには何人かの気を許せる相手がいるようです。
時にケンカし、時に笑い合い、少しずつ絆を深めていく仲間たち……。
この情景は、エンディングテーマにもなっている「ドラゴンクエスト」を彷彿とさせます。
決して仲がいいとは言えないけれど、離れることもできない不思議な存在である「仲間」。
そんな仲間をふと見つめた時、その充実感につい顔がほころんでしまうのです。
魔法は使えない、と思っていた自分も、仲間に対してならば優しくできると気がついた主人公。
自分をただの人から優しい人に変えてくれたのは、他でもない仲間たちだったのです。
愛を伝えたい「あなた」へ
あなたは何て言うかな
いつまでも余分で余計な言葉を
ずっと僕に、僕にくれよ
探していた今日を守るぜ
出典: mother/作詞:はっとり 作曲:はっとり
自分がずっと思い描き、そして諦めてきた仲間との1日は、まさにこの手の中にあります。
それを当たり前と思わず、いつまでも感謝し続けたい……そんな意気込みすら感じられますね。
素直にありがとうと言いたいけれど、やっぱりそれは恥ずかしい。
照れくささを隠した主人公に、「あなた」はきっとこう言うのです。
「君のそういうところが、優しくて好きだよ」
自分がなかなか口に出せない、まっすぐで素直な感謝の言葉……。
それは耳をふさぎたくなるほど恥ずかしくて、心が飛び上がるほど嬉しい魔法の言葉です。
そんな「あなた」と一緒にいる未来を、ずっと、ずっと守っていく……そう決意する様子が感じ取れます。
愛を知らずに魔法は使えない
マカロニえんぴつが語る「愛」とは
夢より先を走るやつはいない
愛を知らずに魔法は使えない
裏切りよりも信じれる度量
僕のことよりも
君のことを愛し抜ける人をそっと
視ていたい、そばで
出典: mother/作詞:はっとり 作曲:はっとり
ここで満を持して登場したのが、ミニアルバムのタイトルにもなっている1文です。
今まで誰からも愛されてこなかった人に、人を愛することはできません。
誰からも優しくされたことのない人には、誰かを思いやることはできません。
それはなぜか……答えは、「どうすればいいかわからないから」です。
生まれた時から目いっぱいの愛情を受けてきたからこそ、人に愛情を与える事ができるようになります。
主人公が仲間に優しくできるのは、他でもない「母」がいたからですね。
母の愛情を素直に受け止めてきたからこそ、主人公も無事魔法が使えるようになったのです。
他人に対して抱く感情は、マイナスよりもプラスの方がいいはずです。
たとえ裏切られたとしても、自分だけは信じていたい……そう思えたのも、主人公が成長している証拠です。
そしていつか、自分よりも大切に思える人と出会えたなら……。
それは間違いなく、かけがえのない存在になるはずです。
1番近くでそっと見守りながら、何をするわけでもなく、ただひたすらに愛し続ける。
生涯をかけた愛が、この楽曲に詰まっていました。
魔法を使いたい理由とは
ここまで読み解くと、主人公がどうして魔法を使いたかったのかが見えてきます。
それは他でもない、「自分が魔法を使ってもらって嬉しかったから」です。
つまり、出会えた仲間がこれ以上ないくらいの優しさを自分に与えてくれた……。
その時に感じた幸せこそが、今の主人公の原動力になっていると言えます。
これまで育ててくれた母に、恩返しの意味を込めて。
そして、今を一緒に生きる仲間に、感謝の意味を込めて。
優しさという魔法を通して、主人公は愛を伝えていくのです。
「mother」は母であり、愛である
日常に潜むたくさんの「愛」
曲名である「mother」だけを見ると、自分のお母さんへのメッセージを込めた楽曲であるように見えます。
しかしはっとりさんがこの曲に込めたのは、「母なる愛」という壮大なテーマでした。
自分にとって、母がかけがえのない親であるように。
生き物にとって、地球が雄大な母であるように。
何かが生きていく上では、必ずと言っていいほどそこに愛が生まれます。
今回は「ドラゴンクエスト」とも絡め、仲間への愛を強く意識した楽曲になっている「mother」。
聞き手の受け取り方によっては、恋人や家族、尊敬する人への愛情にも感じ取れるでしょう。
この世界にあふれる全ての「愛」を感じながら……。
改めて、自分の大切な人を思い浮かべたくなる、そんな楽曲となっています。
愛を信じるあなたのそばにいたい
楽曲の最後にもあるように、主人公は大切なあなたのそばにいることを望んでいます。
中には遠くから好きな人を見つめ、気持ちを伝えないままそっと心にしまっておく……そんな愛もあるでしょう。
しかし、どんな人も心の底では大切な人のそばにいたいものです。
あなたの一喜一憂する姿や、他人に優しくする姿、自分に笑いかけてくれる姿を、余すことなく見ていたい。
そんな感情が、最後の1文に詰まっているように感じます。
一般的に使われる「見る」という漢字ではなく、「視る」が使われているのもポイント。
パッと視界に入れるのではなく、1つも見逃さずあなたのことを視ていたい……。
「視る」という1つの単語に、これほどまでに大きな気持ちが込められているのです。
はっとりさんのセンスや、それを聞き手に届けるマカロニえんぴつのすごさを改めて感じさせてくれます。