「哀しみロック」
アルバム「s.i.n」の収録曲
今回ご紹介するのはマカロニえんぴつの「哀しみロック」。
2017年2月に発売された3rdミニアルバム「s.i.n」の2曲目に収録されています。
このアルバムはマカえんの素のままの魅力を詰め込んだような作品。
キャッチーなメロディーにボーカルはっとりの声が心地よく馴染み、何度もリピートしてしまうアルバムです。
そんな中で「哀しみロック」はどういった存在なのでしょうか。
哀しいのにロック?
歌詞解説に入る前に、タイトルの意味を考えてみましょう。
"哀しみ"の部分ですが、なぜ"悲しみ"ではなく"哀しみ"という漢字表記が使われているのでしょうか。
常用漢字である"悲しみ"には「辛い」「泣きたい」という感情が込められています。
一方タイトルに使われた"哀しみ"には「あわれ」「かわいそう」といった意味があるのです。
つまりこの曲は言い換えるならば「哀れなロック」。
そしてここで哀れだと表現されているのは、主人公である"僕"です。
どうしてそんな表現がなされているのか、歌詞を見ながら解説していきます。
最悪な僕の気持ち
フローリングカーペットは
頭の中といっしょのごっちゃな色に
しようよ、目が疲れないように
出典: 哀しみロック/作詞:はっとり 作曲:はっとり
特徴的な歌詞で始まるこの曲。
歌詞から見るに、主人公の脳内は混乱している様子。
様々な感情で埋め尽くされて正常な判断ができない状態にあります。
それに気づかなくてもいいよう、インテリアまでごちゃごちゃな色にしてしまおうというのです。
いったい何に混乱しているのでしょうか。
アメリカンフローズンコーク
風に当たって溶けるの待とうよ
待とうよ
気が抜けて気持ち悪いだろ
それがいいんだろ?
出典: 哀しみロック/作詞:はっとり 作曲:はっとり
ここでちょっと不思議な飲み物が出てくるのですが、大事なのはその性質と味。
名前からして明らかに冷たいまますぐに飲んだ方が美味しいはず。
しかし、それを溶かしてしまおうといっているのです。
さらにコーラは置いておくと徐々に炭酸が抜けてしまいます。
つまりここで言いたいのは、放置しておくと味も質もかなり落ちてしまう飲み物だということ。
主人公はそんな最悪な状態の飲み物を自分と重ね合わせているのです。
美味しくなくなってしまった飲み物に親近感を覚えている主人公。
何かに対して投げやりな心情を読み取ることが出来ます。
ふたりの関係性
僕は犬で君は猫
行かなきゃ
僕は君の犬になれるけど
君はね、猫だから大丈夫
ひとりでも大丈夫
出典: 哀しみロック/作詞:はっとり 作曲:はっとり
ここでは僕のことを犬、君のことを猫だと例えています。
犬といえば従順なイメージ。
飼い主に対してまっすぐに忠誠心を向ける動物であり、僕はそんな犬のようであると表現されています。
ここでいう飼い主とはおそらく君のこと。
君にいつでも忠誠を誓う存在であるといっているのです。
一方猫は自由気ままなイメージ。
気が向いたときにはここぞとばかり甘えることもありますが、飽きるとふらふらどこかへ行ってしまいます。
そんな自由な存在であるのが君。
自由にひとりを謳歌する存在であることが描かれていました。
僕と君は対照的な存在なのです。
それでも僕は大丈夫だと強がります。
まだ離れたくない
哀しくロック、それでもロック
君を今も愛しているからね
剥がれかけの今日までを褒めてやる
出典: 哀しみロック/作詞:はっとり 作曲:はっとり
僕が君に抱く感情は"愛"と表現されていました。
しかしこの曲のタイトルは「哀しみロック」。
哀れな僕ということは、君はきっと僕のことを愛してはいないのでしょう。
そして、これまで君と過ごしてきた日々はギリギリだったことが表現されています。
君の気持ちが離れきってしまわないようになんとか紡いできた日々。
そんな日々を今日まで凌いでこれたことに対し、自分で自分を称賛します。