『JUSTadICE』
大森靖子の創作意欲が止まらない!
今回ピックアップするのは2019年も創作意欲の止まらない“超歌手”大森靖子です。
一体彼女は2019年にどれだけの作品を残そうとしているのでしょう?
3月には寵愛する道重さゆみ嬢を招いての『絶対彼女』のNEWバージョンを発表。
またスカパラ初のトリビュート盤へ豪華アーティストと共に参加。
もちろん曲は『ちえのわ』です。
続く4月には“共犯者”として参加するアイドルグループZOC(ゾック)の初音源をリリースしています。
さらに6月には彼女にとっての初恋の相手、峯田和伸(銀杏BOYZ)とのコラボ・シングルを発表するのです。
今回解説させていただくのは『Re: Re: Love 大森靖子feat.峯田和伸』からの先行配信曲。
「負け犬からの脱却」を歌った『JUSTadICE』です!
タイトルに込められた謎
『JUSTadICE』というタイトルにはアナグラムによる罠が仕掛けられています。
“just a dice(ただのサイコロ)”を繋げたようですがよく見てみましょう。
“ICE(氷)”が大文字表記されていることから“just add ice(氷を入れるだけ)”とも読めるのです。
また大文字のみを表記すると“JUSTICE(正義)”となる...。
この辺りの謎は歌詞を紐解くことで見えてくると思います。
もう一つ『JUSTadICE』を知る上で重要となるピースがあるのです。
それが楽曲中、何度も絶叫される「ブラッククローバー」...。
アニメ「ブラッククローバー」OP曲

JUSTadICE/大森靖子
『JUSTadICE』はアニメ「ブラッククローバー」第7クールのOP曲としての側面も持ち合わせているのです。
2015年に原作漫画の連載がスタート、2017年にアニメ化されることとなった「ブラッククローバー」。
歴代のOP曲には感覚ピエロ、BiSHなどが並び同じ第7クールのED曲はTHE CHARM PARKが手掛けています。
原作漫画を読みこんだ上で制作されたという『JUSTadICE』。
そこには主人公のアスタが抱える劣等感や諦めない心がこれ以上ないほど反映されています。
同時にそれは大森靖子が貫いてきた「負け犬からの脱却」「支配領域」という概念とも通ずるのです。
特別ではない僕の物語
マイノリティとしてのあるがままの自己
君のこと わからない だから
僕のこと きっと まだ知らないでしょ
“僕も”とか “わかる”とか
簡単に言わない君の絶望学 純真なら貫いて壊せ
出典: JUSTadICE/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
ジャンプの看板コミックスともいえる「ブラッククローバー」。
いまさら詳細な説明は野暮だと思いますが...。
主人公であるアスタは魔法使いの頂点を目指すも魔力を使うことができないことが明らかにされます。
ファンタジーの主人公であるにも関わらず「力を持たざる者」として描かれるのです。
唯一特別なことといえば孤児であることくらい。
しかし同じ孤児であり無二の親友であるユノは「力を持つ者」でした。
大森靖子がこれまでの表現活動で描いてきた「負け犬」としての自身。
「持つ者」へ嫉妬するのではなく「あるがままの自己」をさらけ出すことで共闘を呼び掛けてきました。
「持たざる者」が傷つきながら戦う姿はマイノリティを自覚する者たちの代弁者としても機能しているのです。
征服は制服ではできない...
世界征服は制服で できっこないって知ってから
何年ここで止まってた
アウトサイダー 特別じゃないまま 戦わなきゃ
いつの間にかの個性で なんちゃって
出典: JUSTadICE/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
マイノリティの代表として、特別な力を持たずに頂点を目指す姿。
明らかに大森靖子は「ブラッククローバー」のアスタに自身を重ね合わせています。
皆と同じ方法で闘いを挑んでも勝ち目などありません。
彼らの何十倍の苦痛や羞恥に耐え生きていくことが必須なのです。
その勇気を出すことができぬ不甲斐ない自身の内面との葛藤がAメロでは表現されています。