リスクが大きいほど燃え上がる
加藤ミリヤの『眠れぬ夜のせいで』で歌われているのは、人生を狂わせるほど深い恋情です。
本気の恋は良くも悪くも人を変えてしまいます。
恋のおかげでかけがえのない幸福を手にすることもあれば、恋のせいで何もかも失くしてしまうこともある。
「好き」という感情は単純なように思えて、実は難解で扱いづらいものです。
気持ちを抑えられず暴走してしまえば、それは今まで築いてきた人間関係の崩壊に繋がるでしょう。
これ以上深入りすれば、後戻りできなくなる。
そう分かっていても止められないのが恋心です。
この想いの先に待っているのは幸福か、それとも破滅か...。
恋というのはリスクが大きいほど燃え上がるものなのかもしれませんね。
恋の苦しみ
恋に落ちた時の心情というのは、大きく2つに分けることができるでしょう。
好きな人のことを考えるだけで心が満たされ、大きな幸福感に包まれるか。
コントロール不能な感情に押しつぶされそうになって、ただひたすらに苦しむか。
この曲の主人公はどうやら後者のようです。
しかしその苦しみの中にも、様々な感情が複雑に絡まり合っていて...。
一言では言い表せられない恋の苦しみについて紐解いていきます。
異常なほど強い想い
I cry I cry I cry for you
君だけをただ想って
I will die I will die I will die for you
今宵眠れぬ夜のせいで
All night long I cry cry
For our life you try try
All my heart I fly fly
For my love I can’t sleep tonight
出典: 眠れぬ夜のせいで/作詞:Miliyah 作曲:Miliyah
恋とは必ずしも人を幸せにしてくれるものではありません。
想いが強ければ強いほど、そこには破滅の危険が伴います。
そう考えるとこの曲の主人公がしている恋は、はたして幸せな恋愛と呼べるでしょうか。
主人公は「君」のことを想っては涙を流し、眠れない夜を過ごしています。
それだけでなく、「君のためなら死んでもいい」とも考えているようで...。
ここまで強い想いを抱く主人公の姿は、傍から見ると異常に映ります。
どう考えても、この主人公は恋のせいで苦しんでいる様子。
それでも「君」を想う気持ちを止められないのは何故なのでしょう?
主人公を狂わせる「君」と「君」への気持ちが、続く歌詞ではさらに詳しく綴られています。
「君」のことしか考えられない
「君」への想いに狂わされていく主人公。
そこには当然、戸惑いや恐怖があったはずです。
しかし想いが強くなるのに従って、そんな感情はどこかへ消えてしまいました。
今の主人公の胸にあるのは「君」という存在、それだけなのでしょう。
欲しいのは「君」だけ
君に出会わなければ
なんてことは少しも思わないよ
まるで別の人生
すべてがめまぐるしく変化してCan’t help myself
君と距離が縮まって
急展開して
大切だった人を、あっさり捨ててまで
君追いかけた
もう君しか見えなくて
なにもかも失ったっていいから
出典: 眠れぬ夜のせいで/作詞:Miliyah 作曲:Miliyah
「君」への想いにどれほど苦しめられても、主人公が「出会わなければよかった」と後悔することはありません。
主人公が求めているのは幸せではなく、あくまでも「君」。
「君」さえいれば、他の誰かを失っても構わない。
それがたとえ大切な人だったとしても...。
もしかしたら主人公には「君」と出会う以前から付き合っていた人がいたのかもしれません。
時間をかけて築いてきた絆。
それを主人公は、「君」と出会ったことをきっかけに捨ててしまいました。
そこには躊躇も迷いもなかったようで、主人公の目はただひたすら「君」の姿だけを映しています。
たった1人との出会いによって、今まで積み上げてきたものすべてが崩れ落ちていく。
恋とはそんな恐ろしい一面も持っている、非常に厄介な感情のようですね。
狂っていくのを止められない
四六時中君のことを
無我夢中で君のことだけを
もういっそこのまま狂いたいよ
今宵眠れぬ夜のせいで
君が誰で わたしが誰でも
どうだっていいよ 狂ってるよ もう
ただ君のことを想うよ
今宵眠れぬ夜のせいで
出典: 眠れぬ夜のせいで/作詞:Miliyah 作曲:Miliyah
「君」のことばかり考えすぎて、このままでは頭がおかしくなってしまいそう。
しかしこの曲の主人公は、それを望んでいるかのようにも思えますね。
眠れないまま更けていく夜は、主人公の恋心をよりいっそう暴走させるのでしょう。
そもそもこの曲の主人公にとって恋とは、幸せや喜びを与えてくれるものではないようです。
自分が自分でなくなっていく。
それが主人公にとっての恋なのでしょう。
何もかもを変えてしまいそうなこの恋は暴力的とも捉えることができそうです。
「君」と出会ってから、主人公の心に平穏が訪れたことなど一度もないのかもしれません。
それでも「君」を想い続ける。
主人公はまさに「狂っている」状態なのでしょうね。