未知の食べ物は?

未知の食べ物はよく腹を壊すんだ
トイレはちゃんと綺麗かい 笑い事じゃないんだ

出典: tears/作詞:Fukase 作曲:Fukase,Nakajin

僕が、あまり経験のない食べ物を食べるとよく腹を壊す。

その経験を覚えているだろう?

だからトイレはちゃんと綺麗じゃないと安心できないんだよ。

相手にそう語りかけた「僕」は、その会話を聞いて相手が笑うのを思い出しています。

僕がそんな面倒なところがあることを、話したことがあるだろう。

覚えていてくれるかい?

また、そうやって僕の話を笑ってくれるんだろう。

そんな風にも聴こえます。

他愛ない会話を楽しんだ相手を慈しみ、懐かしく思う彼の寂しさが表現されているのです。

彼は、先に逝ってしまった相手にも、自分のことを思い出してもらいたいのでしょう。

思い出す悪い顔と嬉しいことが悲しい訳

思い出すのは悪い顔?

思い出すのはさ 君の笑顔なんかじゃなく
悪い顔だったりするんだ 涙が零れた

出典: tears/作詞:Fukase 作曲:Fukase,Nakajin

いつも一緒にいて、色んな経験をした相手の表情というのは思い出に残るものです。

びっくりした顔、ちょっと怒った顔、そして何か企んだような悪い顔。

むしろ、ちょっとふざけていた時の様子の方が、単に笑った顔より思い出すものです。

ここで表現されているのは、何かの出来事で企んだような悪い顔をした思い出。 

「僕」は、笑顔よりそんな悪いをした思い出の方を思い出しています。

ふざけ合ったあの日の君の悪い顔。

その懐かしい悪い顔を思い出すとき、もう会えない相手を感じさせてしまう。

何気ない毎日に、一緒にいた相手なのにもう会えない。

相手の悪い顔を思い出すと、その感情があふれ出し、涙が零れてしまうのでしょう。

嬉しいことが悲しいのは何故

帰りの列車 思い出す色んな事 笑ったら涙が零れた
ぽつりぽつりぽつりぽつり
嬉しい事がこんなに悲しい

出典: tears/作詞:Fukase 作曲:Fukase,Nakajin

思い出は、いろんな感情を心に湧き上がらせます。

他愛ない出来事で思わず笑ったことを思い出すと、吹き出してしまうことがあるように。

このリリックもそうです。

一緒に列車に乗ったときに、他愛ない会話で爆笑したこと、ふざけ合ったときを思い出しています。

「あんなことで笑ったな」そう思い出すと、思わず笑ってしまったのでしょう。

そして同時に、もう戻らないその日々が切なく心をとらえ、涙が零れてしまう。

その日々を懐かしく、嬉しく思い出す「僕」は、思い出を感じて笑っている。

でも寂しく悲しい気持ちも感じています。

一緒に思い出して笑ってくれる相手がいないから。

嬉しいのに、これほど悲しいことはないでしょう。

tearsの真意とは

出会いと別れは必ず訪れる

生まれた命には、必ず死が訪れるように、出会った縁には、必ず別れがあるように。

私たちは出会いと別れを繰り返しています。

またどこかで出会う可能性があったとしても、かならず出会いと別れは訪れるのです。

tearsは、そんな縁を描いています。

出会いは最悪だった。

でも、お互い同じ思いを感じていたという意味では、似た者同士でした。

そんな彼等は様々な思い出を共有します。

僕の面倒なところも、ご存知なほど、その仲は深くなるのです。

しかし別れはやってきてしまいました。

違う世界に行ってしまった相手に、そっと心で語りかける「僕」。

ただ、この「」はその別れを悲しがっているだけではありません。

SEKAI NO OWARIらしく

SEKAI NO OWARI【tears】歌詞を解釈!なぜ嬉しいことが悲しい?悪い顔を思い出す理由はの画像

この楽曲を作成したFukaseは、幼少期に大病を患い、長く闘病した経験を持っています。

そして同じ病気で亡くなる多くの人を見てきました。

かつて、その経験から医師を目指したこともある彼。

そんな彼が作ったこの楽曲では、大切な相手との別れを経験した「僕」が描かれています。

別れによって寂しさを感じている「僕」。

もう会えないことを理解する程、涙が零れるけれど、ただ彼は悲しがっているのでもない。

「僕」が思い出す、相手との別れは、過去形では語られていません。

リリックの中で、彼等は「ガイド」を頼んだり僕の面倒さを笑ってもらったりしています。

「死」とは、違う世界にいるだけ、ほんの少し会えないだけと表現しているかのように。

Fukaseにとって、死とはいわゆる「別れ」ではないのかもしれません。

具体的な言葉を用いていないこの楽曲

添えられたメロディラインはポップで前向きに、楽曲の世界観を明るく彩ります。

リリックとメロディを巧みに変化させ、繊細な心模様を表現しているのです。

これこそSEKAI NO OWARIの魅力といえましょう。