1.日本の歌の主人公は、北へ北へと目指す歌が多いのです。
「北帰行」「津軽海峡・冬景色」など北国のイメージは、北へ行くほど風景は厳しく、心を凍らせて、独りうずくまる。 来る春を信じて耐えて生きる姿が、日本人のノスタルジアなのかもしれません。
2.「北」の意味を探索してみます。
「北」の字の右・左のパーツをよく見てください。これは、「人」がお互いに背中を向けて、立っている様子を象った(かたどった)ものなのです。
実は「北」には、「にげる」という、表記外の読み方があります。愛する人と別れを決意し一人去っていく。そして、遠く離れた相手への思いを歌った歌詞として日本で受け入れられました。
「珍島物語 !!」の歌詞を紐解くために次のシチュエーションを考えました!
別れたくなくても、別れなければいけない愛もある。
彼とお付き合いをして、3年になります。その彼は、将来結婚しようと言い続けてくれていました。私は、現在25歳で30歳まで仕事をしたいと言いました。
彼の夢は、海外で自分の店を持ちたいということでした。
彼は、レストランの「スー・シェフ(Sous chef)」で料理長をサポートする、2番手の料理人でした。彼の勤めているレストランは、国内にも5店舗あり、海外にも2店舗展開していました。彼は、28歳です。
海外店舗を増やすことになり、今まで開業していた海外の1店舗をその彼に任されることになったのです。
海外に一緒についてきてほしいと言われました。 その時は、私の母が年末に末期がんで、1年半の余命宣告もされた直後でした。 末期癌で辛くとも治療を積極的に続けるか、残りの命を楽しく過ごすのか、難しい問題です。 医療技術の進歩に人間の気持ちが追いついていけるのかどうか。 病気と闘う本人のスタンスによっても何が適切なのか変わってくると思います。
海外への準備を進める彼には、心配かけないように黙っていました。 父は、先代から続く「(有)硝子工事センター」で職人社員二人の小さい企業を経営し、母は、経理と電話番をしていました。たった一人の妹は、結婚して双子を育てるサラリーマンの専業主婦でした。
積極的な治療をするか家族間で何度も会議しましたが、なかなか結論が出ませんでした。ただ、父も仕事をしながら、母の面倒は見られず、私は仕事を辞めて、福岡に帰らなければならないと思いました。
別れたくなくても、別れなければいけない愛もあるのですね。私は、泣きながら、彼への別れと感謝を述べました。その後、母への介護の苦しさと彼への未練で泣き続けた日々でした。
母の慰霊の「珍島」への旅
母が1年半後に、宣告された通り母が亡くなりました。 私は、母の「3回忌」の後、母が大ファンであった天童よしみさんのヒット曲「珍島物語」の珍島へ行きたいと言っていたので、父と「慰霊」の旅に出かけました。
「海が割れるのよ,道ができるのよ、島と島とが、つながるの』は「現代版モーゼの奇跡」といわれる韓国の神秘の海道を訪れました。 海割れは夕方5時から6時の間にあるとのことでした。
私は、母の遺影と彼からもらったペンダントを胸に付けて歩きました。
4時半ころみんなが数珠繋ぎになってみんな楽しそうに歩いていきます。
浅瀬に行くと、その潮の流れが実感でき、珍島から茅島(もどり)に向かって右から左にかなり強い流れがありました。急速に潮が引いていくのです。
進んでいくうちに、どんどん引いていき、どうやら道が現れ始めます。
しかし、真ん中あたりは割れきらないようでした。そう思いながらも進んでいくと、茅島(もどり)から出発した人々が近づいてきたのです!おお、「別れた家族との再会」だ!
茅島から来た人たちは、伝説と同じく、銅鑼(どら)などを鳴らしながらの行進でした。旗を押し立ててどんどん進んでくるのです。
いや、これはなかなか荘厳でした!そして、茅島組と珍島組が交差すします。海割れの完成です!感動的で涙が流れました。母の、魂の鼓動が聞こえました。 この女性の思いで、歌詞を紐解いてみました。
①「気づき」
海が割れるのよ 道ができるのよ
島と島とが つながるの
こちら珍島(チンド)から あちら芽島里(モドリ)まで
海の神様 カムサハムニダ
出典: 「珍島物語」/作詞:中山大三郎 作曲:中山大三郎
本当に海が割れて、島と島がつながって行ったんです。
お母さんの魂が聞こえました!
②「願い」
霊登(ヨンドン)サリの 願いはひとつ
散り散りになった 家族の出会い
ねえ わたしここで祈っているの
あなたとの愛よふたたびと
出典: 「珍島物語」/作詞:中山大三郎 作曲:中山大三郎
神様の力で母の魂と奇跡の再会を果たせたのです! あなたのこと今でも愛しています。あなたに会って、あなたを愛した心は変わっていません。あなたを再び待っていたいのです。
あなたともう一度会わせてほしいと神様に祈っています!
③「感謝」
遠くはなれても こころあたたかく
あなた信じて 暮らします
そうよいつの日か きっと会えますね
海の神様 カムサハムニダ
出典: 「珍島物語」/作詞:中山大三郎 作曲:中山大三郎
別れの最後に、“君の願いは分かった!でも、許されるなら、いつかもう一度あいたい”とあなたは言ってくれたわ。 2年も経ってそんな虫のいいことが私に許されるとは思っていないけれど、もう一度会いたいのです。
④「慕情」
ふたつの島をつないだ道よ
はるかに遠い 北へとつづけ
ねえ とても好きよ 死ぬほど好きよ
あなたとの愛よとこしえに
出典: 「珍島物語」/作詞:中山大三郎 作曲:中山大三郎