「ルビーの指輪は」ラブソングですが、男女の別れを男の視点から歌った曲です。歌詞を見ていきましょう。

作詞は松田聖子をはじめ多くの歌謡曲をてがけた大御所、松本隆によるものです。

くもり硝子の向うは風の街
問わず語りの心が切ないね
枯葉ひとつの 重さもない命
あなたを失ってから
背中を丸めながら
指のリング抜きとったね
俺に返すつもりならば
捨ててくれ

出典: ルビーの指輪/作詞:松本隆 作曲:寺尾聡

冒頭から詩的な表現です。

この曲で「問わず語り」という言葉を知った筆者と同じ世代の人も多いかもしれません。

主人公は、よほど彼女との別れがつらかったのでしょう。

「枯葉ひとつの重さもない命」とは、なかなか出てこない言葉です。

彼女が指のリングを抜き取ったということは、将来も考えていた仲だったのかもしれません。

それでは1番の歌詞をじっくりと吟味していきましょう。

この楽曲の主人公は男性です。寺尾聡のような渋い男性かも分かりません。

主人公は付き合っていた女性から今まさに別れを言い渡されました。

それは主人公にとったら唐突な別れだったのでしょう。

思わず「問わず語り」、つまり独り言が出てしまいます。

女性から別れを言い渡された場所は喫茶店でしょうか?

そして季節は冬。

お店のガラスは外の寒さと店内の暖房で曇っています。

そして、頭を垂れながらうつむき加減にそっと指環を外したのでした。

「なぜ」?

主人公の口から独り言が漏れます。

残酷な一瞬が主人公の思考回路をすっかり狂わせてしまったかのような時間の経過なのでした。

そうね誕生石ならルビーなの
そんな言葉が頭に渦巻くよ
あれは八月 目映い陽の中で
誓った愛の幻
孤独が好きな俺さ
気にしないで行っていいよ
気が変わらぬうちに早く
消えてくれ

出典: ルビーの指輪/作詞:松本隆 作曲:寺尾聡

ここでルビーという単語が出てきます。彼女が抜き取った指輪はルビーだったのです。

愛を誓い合った幸せな記憶。しかし、その幸せは長くは続きませんでした。

去っていく彼女に向かって、孤独が好きだと強がる男。

しかしその心中は未練でいっぱいなのです。そう、この曲は彼女と別れた未練でもだえ苦しむ男の歌なのです。

歌詞をもう少し、掘り下げてゆきましょう。

主人公が女性と付き合い始めたのは暑い夏の真っ盛りです。

クーラーのきいたおしゃれなお店で女性は無邪気に語らいました。

自身の誕生石を遠慮もなく告げることができる2人の関係。

かなりいい方向に進展していたはずでしょう。

普通、女性の方から自分の誕生石を男性に打ち明けることはまずないからです。

そんなことをしたら結婚に焦っている女性のようにみえるから。

しかし、この時はそんな遠慮など全くなかった2人だったのです。

それが今となっては遠い幻のよう。

主人公は懸命に強がってみましたが。

しかし、それはあまりにも無謀なやせ我慢

本当は今にも泣き叫びたいくらいの気持ちを懸命になってこらえていたのです。

そして女性はそっとお店から去っていきました。

痛恨の別れ

くもり硝子の向こうは風の街
さめた紅茶が残ったテーブルで
襟を合わせて日暮れの人波に
紛れる貴女を見てた

そして二年の月日が流れ去り
街でベージュのコートを見かけると
指にルビーのリングを探すのさ
貴女を失ってから

出典: ルビーの指輪/作詞:松本隆 作曲:寺尾聡

去っていく彼女を見送る男。彼女は人ごみに紛れて見えなくなります。

そんな悲しい別れから2年が経ちます。2年も経てば、別れの痛みも消えて新しい恋をしていると思うでしょう。普通は。

しかしこの主人公は違うのです

2年が経っても、街でベージュのコートを見かけると彼女ではないかと思って指にルビーの指輪を探すのです。

何と悲しい、未練がましい男なのでしょうか。そんなにも忘れることのできない、美しい愛の記憶。

当時勢いのあったアイドルには絶対に歌えない、大人の恋愛ソングです。

別れの原因は何だったのか?

2番の歌詞をさらに掘り進めましょう。

主人公は女性と別れたことを今さらながらに後悔しているようです。

まさに痛恨の痛手だったのでしょう。

では別れの原因は何だったのか?

歌詞の中にはヒントになるような描写はありません。

あんなに仲睦まじそうにみえていた2人がどうして別れの道にいってしまったのか?

その原因を探ってみましょう。

主人公のいたらなさなのか

主人公は世の中のことを分かっている大人でしょう。

女性が自分の誕生石を打ち明けることからも、主人公のことを慕っていたはずです。

そこまでいい関係でいたのなら、突然やってきた別れが不思議でたまりません。

ここで通常、思い当たる原因はどちらかの浮気です。

男女の関係を断ち切ってしまえる最も分かりやすい原因です。

しかし、歌詞中の描写から想像してもそのようなムードは感じられません。

主人公は実直な男性に映ります。

とても二股をかけて女性と付き合うような男性にはみえないのです。

そうなってくると疑いは女性の方にあったのでしょうか?

もしかしたら主人公は女性に対していたらなさがあったのかもわかりません。

それは自分自身でも見えないものです。

いたらなさ。つまり女性に対する本当のやさしさがどこか足りていなかったのかもしれません。

謎を生むこの曲の歌詞は、別れの原因を謎にしたまま2番のサビへと向かって行きます。

2年経っても脳裏から離れない

主人公の悔恨の思い

恐らく主人公の男性は2年経った今でも特定の女性とは付き合っていないのでしょう。

それほど別れた女性のことが好きで好きでたまらなかったのです。

まさに悔恨の思いです。

今となっては取り返しもつかない後悔。

しかし、それは全て主人公自身が舞い込んでしまった業だったのでしょう。