進化を遂げた2ndアルバム「Human」より
2018年3月7日、yahyelの2ndアルバム「Human」がリリースされました。
前作「Flesh and Blood」が海外からも幅広く認められ、自らの音楽性が世界に通用すると証明した彼ら。
この作品は2011年初頭から流行しだしたポストダブステップの影響を色濃く感じさせるものでした。
それに対して今作「Human」は、明らかに彼らにしか出来ない表現へと昇華されたもの。
前作から感じた雰囲気は残しつつも、もっと芸術性を高めたとでも言いましょうか。
何がそこまでyahyelを進化させたのでしょうか。
「Human」の冒頭曲「Hypnosis」を中心にその軌跡に迫っていきましょう!
前作からの経験を経て
yahyelの音楽を語る上で、彼らのバンド名の由来が重要になってくるでしょう。
「Flesh and Blood」をリリースしたときの彼らは「敢えて自分たちの正体を明かさない」という手法を選んでいます。
これは自分たちの音楽を伝える上で、自分たちが何者であるかということが邪魔になると判断したからだとのこと。
「海外かぶれの日本人バンド」などと言われることを懸念してのものでしょう。
バンド名にもそういった外からの評価に対する皮肉が込められています。
バンド名は、ニューエイジ思想家バシャールによる造語で、2015年以降に人類が初めて接触する異星人(宇宙人)を指す。日本人という帰属を背負いながらもそのギミックを使わずに世界に向けて音楽を発信すると、国外からは日本的ギミックがない表現は黄色人種による「猿まね」と映るし、国内からは「日本人離れ」と表現される。その状況を宇宙人だと自称せざるを得ないことに対して皮肉を込めて名乗っている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Yahyel
正体を明かさないことは状況に対する逃げだと感じた
しかし「正体を明かさない」という手法は彼らの思惑とは違うように作用してしまったとのこと。
世間は正体不明ということばかりに着目し、肝心の音楽性があまり伝えられなかったと彼らは感じたようです。
そんな葛藤の中、今作の制作に至るまでにWarpaintやMount Kinbieなど、海外アーティストの客演も務めたyahyel。
そういったアーティストに、国籍などのフィルターを通した上で戦っていることのすごさを感じたといいます。
「海外かぶれ」と言われる状況を踏まえて正体を明かさないことは逃げだと思った彼ら。
自分たちにしか出来ない表現で、その状況と勝負していかないといけないと感じての今作の完成だったのです。
正体を明かすことが彼らの決意となり、サウンドにも影響を及ぼしているのですね。
冒頭曲「Hypnosis」が示す全く新しいyahyel
冷淡な空気感
イントロから、シンセが重ねられたサウンドはどこか冷淡なイメージ。
底の方でうごめくような低音がそこにリズムを生み出していきます。
遠くから聴こえるようなパーカッションは、空間の広さを感じさせ楽曲の立体感を演出。
この音像の中では、ダンスミュージックの定番である4つ打ちのビートもより無機質に感じられます。
呼吸を感じるデジタルミュージック
ヴォーカルを務める池貝俊のかすれた歌声はバックに溶け込むような声色。
まるでシンセの一部のようにすら感じさせます。
そしてサビではハイハットと同化するかのような、リズムを躍動させるヴォーカルワークを展開。
後半で重なってくるコーラスはストリングスさながらに楽曲を盛り立てます。
例えるなら「人力デジタルミュージック」とでも言いましょうか。
デジタルの中に紛れ込んだ人の呼吸。
電子音に寄り添った生命感が楽曲を独自のものに昇華していますね。
鬼才山田健人が手掛けるMVを紹介
yahyelのMVを手掛けるのは、ライブではVJを務めるメンバー、山田健人です。
メンバーに映像のプロフェッショナルを迎えているところも、このバンドが他と一線を画す部分でしょう。
そして山田健人は映像の世界でも鬼才に数えられる一人。
MVを手掛けたアーティストもSuchmos、宇多田ヒカル、GLAY、米津玄師と錚錚たる顔ぶれが並びます。
「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2018」では「BEST VIDEO DIRECTOR」も受賞。
そんな彼をメンバーとしているyahyelも只者ではありませんね。