名作ドラマ「愛し君へ」の挿入歌
大物プロデューサーからの依頼
フジテレビ系列のヒット・ドラマを数々手がけてきたプロデューサーの大多亮。
彼が2004年にヒットさせた名作ドラマが「愛し君へ」です。
菅野美穂と藤木直人のW主演で綴られた難病との闘いと、育まれた愛は視聴者の涙を誘いました。
プロデューサーの大多亮が森山直太朗に制作を依頼した曲が「生きとし生ける物へ」と「愛し君へ」です。
「生きとし生ける物へ」はドラマのエンディング・テーマとして使用。
「愛し君へ」は挿入歌として使用されました。
ともに森山直太朗の初のフル・アルバム「新たな香辛料を求めて」に収録されています。
どちらも森山直太朗を語る上で欠かせない曲となりました。
今回は「愛し君へ」の歌詞に注目して、この曲の秘密を紐解いていきましょう。
ドラマと切り離せない歌詞
歌詞を紐解く鍵は「視界」
フジテレビのプロデューサー・大多亮は森山直太朗の才能に惚れ込んでいました。
依頼して仕上がった「生きとし生ける物へ」も「愛し君へ」にも多大な期待を掛けます。
ドラマの原作はさだまさしの「解夏」という小説ですが、ドラマのタイトルを「愛し君へ」に改めました。
ドラマ化される前に原作も映画化された作品もある状態。
森山直太朗はドラマ化の際に作品の解釈をしながら制作に臨んだはずです。
ペーチェット病という目の難病でカメラマンの安曇俊介(藤木直人)の視力が奪われ失明する。
そのストーリーと「愛し君へ」の歌詞は切り離せない側面があります。
歌詞を解釈する上で鍵となるのは「視界」です。
では、実際の歌詞を見ていきましょう。
森山直太朗のささやくようなヴォイス
相手を強く求める愛
いっそ 抱きしめて
抱きしめて 離さないよ
このまま 傍にいて欲しい
何も問わずに
出典: 愛し君へ/作詞:森山直太朗 御徒町凧 作曲:森山直太朗
ピアノの優しい響きとともに森山直太朗のささやくような素晴らしい歌唱が始まります。
愛した相手を強く求める歌詞が鮮烈です。
好きな人を誰にも渡したくないという想い。
そして一切の疑問も持たずに自分の愛や想いを信じて欲しい。
「僕」の「君」への愛の確かさを感じ入ります。
ドラマ「愛し君へ」
ドラマ「愛し君へ」では安曇俊介が彼を支える小児科医・友川四季(菅野美穂)と結婚します。
最初は彼に反発していた友川四季も、難病と闘う彼の姿に心を打たれてともに人生を歩む決意しました。
愛を確かめあうようにつきあう彼、彼女。
安曇俊介、友川四季のふたりの愛やつながり、強く感じあう姿が描かれます。
相手を信じたい気持ち
人生の最後まで信じあいたい
いっそ 最後まで 最後まで
信じられる力を 僕にください
例えばそれが 偽りでも
出典: 愛し君へ/作詞:森山直太朗 御徒町凧 作曲:森山直太朗
ささやくようなヴォイスから、のびのびとした朗唱まで、森山直太朗の歌唱は自在です。
“最後”というワードが2回繰り返されます。
人生の“最後”まで誓いあいたい気持ちが滲むのです。
相手を信じ切りたい。
それが嘘であってもかまわない。
邪魔なものがなにもないシンプルなサウンド・プロダクションが彼の歌唱を引き立てます。