歌詞のないサビは斬新。
斬新と一言で済ませるのはもったいない気もします。
それ以上に歌詞がないからメッセージが伝わるという意味にも取れるでしょう。
ミスチルの曲はメロディーの中に伝えたいメッセージを詰め込んでいるのが特徴といえます。
時に早口になったと思えばしっとりと歌い上げる曲もある。
曲の主人公によって変わる変幻自在な表現力。
これも全ては桜井さんの歌唱力があってのことでしょう。
そんな中でなぜサビに歌詞を入れなかったのでしょうか?
SUPERMARKET FANTASYに込めた想い
桜井さんいわくこのように語っています。
本作について桜井は「スーパーマーケット」というのは消費文化の象徴。本作には大きなタイアップの付いた曲がたくさん入っているけれど、大量に消費されるからこそ起きる奇跡のようなものを信じて音楽をやっている。消費されることをポジティブに捉えたアルバム。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/SUPERMARKET_FANTASY
このように大量の音楽がスーパーのように陳列される時代。
ただ単に音楽を切り売りするのではなく、音楽という価値を見直していきたい。
音楽自体の価値よりも、聴き手の受け取り方によって価値が高まっていく。
そんな想像を膨らませて生まれたアルバムといえるのではないでしょうか?
巧妙に練られた曲順
他人の評価に惑わされるな!
そんなメッセージが詰まっている「終末のコンフィデンスソング」。
命の儚さと希望を描いた「HANABI」。
未来を明るく映し出すような「エソラ」。
これらの曲からの「声」。
この流れは意図して作られたのではないかと感じさせます。
「HANABI」と「エソラ」を紡ぎだすまでの葛藤を描いたようなメロディー。
「声」という曲を単体で聞くと地味で物足りない。
何だかミスチルらしくないともいえます。
しかし「HANABI」と「エソラ」を聴いた後に「声」が耳に飛び込んできた時・・・・・・。
スポンジが水を吸い込んでいくように心にしみこんできませんか?
ライブでも前後の曲があるから「声」という曲が際立っています。
ちなみに「声」の後に続く「少年」という曲も秀逸です。
誰もが持っている心の中の「未熟さ」。
大人になり切れていない部分とどう向き合っていくか。
桜井さんが歌い上げるメロディーは、固い殻に包まれた心をそっと温めてくれるような。
そんな優しさが溢れているような気がします。
このアルバムの素晴らしさについて言及するとキリがないのでこの辺で・・・・・・。
サビを際立たせるメロディーたち
それでは本題に移りましょう。
実はアルバムの3曲目に収録されている「エソラ」にはこんなエピソードがあります。
歌詞が最後まで出来上がらなかったため、本作の中で最後に歌入れが終わった曲でもある。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/SUPERMARKET_FANTASY
このように表に出てこなかったメッセージ。
そんなもどかしさを具現化したのが「声」という曲なのかもしれません。
結果的には「エソラ」の前にできた曲だとしても、その当時の心境と重ねずにはいられません。
誰しも経験すること
⾔葉はなかった
メロディーすらなかった
リズムなんてどうでもよかった
出典: 声/作詞:Kazutoshi Sakurai 作曲:Kazutoshi Sakurai
言葉にしたいのに何も浮かんでこないことってあると思います。
音楽だと「いいフレーズが出てこない」という状況。
日常生活だと言葉に詰まる。
または北京オリンピックで金メダルを取ったとき北島康介選手の「何も言えねぇ」という名言。
言葉もメロディーもなく、伝える手段がなくて投げやりになっている。
そんな心情を表現するところから始まっていきます。
ため込んだ感情
喉まで上がった
もやもやがあった
⼤声で叫びそうになった
出典: 声/作詞:Kazutoshi Sakurai 作曲:Kazutoshi Sakurai