色あせない記憶
別れてしまった恋人への未練をこれ以上ないほど爽やかに歌い上げた、FOMAREの『Frozen』。
大好きな人と共に過ごした日々の思い出は、月日が経っても色あせることがありません。
それはつまり別れた恋人への想いもまた、色あせることなく胸に残っているということです。
愛し合った日もあれば、傷つけ合った日もある。
すべての記憶がまるで凍結されてしまったかのように、そのままの状態で胸に刻まれています。
瞼を閉じれば、元恋人の笑顔がはっきりと頭の中に浮かびあがってくることでしょう。
大切な思い出が胸を締め付ける夜もある。
それでも忘れたくないと願うのは、まだ相手のことを愛しているから。
離れても尚大きく育っていく愛情が、再び相手に届くことはあるのでしょうか?
美しい思い出に変わる
『Frozen』のMVは長野県の「千畳敷カール」と呼ばれる雪山で撮影されました。
見渡す限り真っ白な雪で覆われた壮大な景色は、愛する人に対する汚れのない想いを表しているようにも見えますね。
撮影はドローンを使って行われ、臨場感あふれる仕上がりになっています。
特に朝焼けを映し出すシーンは息を呑む美しさ。
1番のサビで夜に変わり、2番で夜が明けるのは、別れの切なさよりも再会への期待を歌っているからでしょう。
愛する人が傍にいなくても、新しい朝は必ずくる。
時間帯によって印象が変わる雪山のように、人の心も月日の経過と共に移り変わっていきます。
愛する人に対する想いは変わらないけれど、胸を締め付ける痛みはゆっくりと和らいでいくはずです。
1人で凍える夜。1人で迎える朝。
そんな日々も愛する人と過ごした日々と同じように、美しい思い出に変わっていくのかもしれません。
消せない痛み
終わってしまった恋に未練が残るのは、恋人だった頃の日々に後悔があるから。
言えなかった言葉。聞けなかった本音。
そういったものが胸に渦巻いて、消せない痛みを生むのでしょうね。
主人公が求めているもの
フローズン僕はまだ今も求めているよ
凍えたまま透明に凍った僕らの日々が
傷つけ合って求めあって自由になった時に
また聴かせて欲しいんだ
忘れかけていたメロディ そっと
出典: Frozen/作詞:アマダシンスケ 作曲:アマダシンスケ
繋いでいた手を離すことで自由を手に入れた。
しかしそれは本当に望んでいた自由だったのでしょうか?
この曲の主人公には強く求めているものがあります。
それはもしかしたら、自由と引き換えに手放してしまった愛する人の手なのかもしれません。
傷つけ合うことでしか愛を示せなかったあの頃。
今なら違う形で愛し合うことができるはず。
きっと主人公にはそんな考えもあるのでしょう。
愛する人と分かりあえた時の喜びをもう一度感じたい。
その気持ちが「忘れかけていた~」の歌詞で歌われているのだと思われます。
凍ってしまった思い出
この曲の歌詞で印象的なのがサビで歌われる「凍えたまま~」のフレーズ。
ここのフレーズを解釈することが、タイトルの『Frozen』に隠された意味を紐解く鍵になるでしょう。
主人公と恋人は互いに不器用な性格だったのかもしれません。
大切にしたいのに上手くいかない。
互いに与えた傷を癒せないまま離れ離れになってしまった2人。
その後悔を「凍える」と表現したのでしょう。
傷つけ合った痛みも、触れ合った温もりも、同じくらい鮮明に覚えている。
凍ってしまったのは愛する人に関わるすべての記憶です。
恋人同士だった頃のすべての思い出が、氷の刃となって主人公の胸を突き刺します。
再び愛する人の熱に触れることができたなら、胸に突き刺さった氷を解かすことができるでしょうか。
けれどこの曲の主人公は、凍ってしまった思い出を痛みと共にずっと胸に抱いていたいと願うのかもしれませんね。
懐かしくて切ない
恋人だった人を思い出す瞬間というのが、きっと人それぞれにあることでしょう。
この曲の主人公にもそんな瞬間があるようです。
不器用ながらも愛し合っていた日々を思い出すたび、主人公の胸には切なさと懐かしさが込み上げます。
ふとした瞬間に思い出す
午前4時起き薄暗い街 頭の奥を叩き起こした
懐かしい日々 あの音が響き ふとまたあなたを思い描いた
出典: Frozen/作詞:アマダシンスケ 作曲:アマダシンスケ