続きの歌詞を見ていくと、「光」という言葉が出てきます。
これは一体何を指すのでしょうか。
前提として、「魔法」は人を明るくするものだと仮定しましょう。
となると「光」はそのエッセンスとなるものだと考えられます。
つまり「光」が「魔法」を引き起こすのです。
もっといえば「魔法」が不発だと「光」も意味を成しません。
人の心を明るくするには、魔法使い自身が「光」を持っている必要があるのです。
あらゆる情熱
消えそうな 夢とか希望が
忘れてしまった約束が
言えないで飲み込んだ言葉が
未だに強く脈を打つ
出典: イエス/作詞:吉田崇展 作曲:吉田崇展
では具体的に光とは何を意味するのでしょうか。
それはこの歌詞に表されています。
消えてしまいそうな光は、どうやら「夢や希望」と同義のようです。
さらには誰かと交わした昔の約束も。
いずれも、時の流れと共に忘れてしまいがちなものです。
子供時代や、青年時代にはあらゆる希望に胸を高鳴らせたことでしょう。
しかし今となっては、明るく光る月に慰められる存在です。
以前は湧き出るように有り余っていたあらゆる情熱が、今ではしぼんでいます。
きっと魔法使いは、絶えず情熱を持っているからこそ人を明るく出来るのでしょう。
夢に向かって一直線な人は、キラキラと輝いて見えるものです。
このように、「光」は情熱や期待、希望などを表している言葉だと考えられます。
主人公の変化
何かに駆り立てられる
見えそうで見えない答えが
どうにもならん苛立ちが
小さくても消えない魔法が
未だに足を突き動かす
出典: イエス/作詞:吉田崇展 作曲:吉田崇展
主人公は情熱あふれる魔法使いをうらやましく思っています。
しかし半ばあきらめムードです。
「仕方ないよね、僕には羽が元々ないのだから」と夢を追わない自分を納得させる日々。
このまま希望を失い、夢のない人生を送っていくのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
主人公は魔法使いに憧れています。
これは「自分もあんな風になれたらいいな」という思いがあるからでしょう。
つまり主人公は自分が魔法使いになることに、一抹の希望を捨てていないのです。
もちろん自分では無理だと思う気持ちの方が強いでしょう。
しかし自分の心の奥底に眠る「光」が彼を突き動かすのです。
情熱があふれ出す
美しい言葉を並べ立てて君を描く
嘘臭いと思うだろうか
全部本当の事だよ
出典: イエス/作詞:吉田崇展 作曲:吉田崇展
一度走り出したら主人公の足は止まりません。
本来、自分に正直に生きることはとても心地いいものです。
主人公もまた自分の夢や希望に正直に、一歩を踏み出しました。
すると余計に周りの世界が輝いて見えるのです。
以前は「意味がない」とまで言い放っていた魔法使いに対してもしかり。
知る限りの言葉を尽くしてもなお足りない程に美しく見えるのです。
それは主人公が卑屈な考え方を捨てたからでしょう。
彼はやっと魔法使いと同じ景色を見ることが出来たのです。
人に影響を与える程に光り輝いていた魔法使い。
主人公も今は自ら光を放っています。
それもこれも自分の情熱、そして夢、そして希望に一直線に歩み出したから。
きっと主人公はもう迷うことはないでしょう。
やるべきことを感じる
邪で嘘つきで偽善者で何も持っていない
横着でおっちょこちょい可愛くないが悪気はない
いかにもつまらんがそのまま世界を救ってみたい なんとも
下手くそで足りない足りない足りない足りなーい僕らの
出典: イエス/作詞:吉田崇展 作曲:吉田崇展
主人公は自分のことをかなり卑下しています。
ある種、これは正しいのかもしれません。
人は誰でも大人になる過程で、自分の身の程を知ります。
何回も失敗するでしょう。
若かったころの全能感は薄れ、ありきたりな日常に落ち着いていくのです。
今までの主人公はまさにそんな感じでした。
しかし今の主人公は違います。
自己肯定感が低いながらも、何かをやり遂げようとしているのです。
その何かとは「世界を救う」ということ。
大げさな表現ですが、彼は本気でしょう。
自分の夢を持っている人が周囲を明るく照らすことを彼は知っています。
彼は自分の情熱を以てして、世界を救う使命を感じているのです。
それが誰にも見向きもされないかもしれないと分っていても…。