ザ・オルタナティブロックな曲

NUMBER GIRL【ZEGEN VS UNDERCOVER】歌詞の意味解説!傍観者の危険性とは?の画像

2019年、伝説のバンドNUMBER GIRL再結成のニュースは多くの人を喜ばせました。

彼らの提示する音楽の普遍性、そこにこもった情熱。

今NUMBER GIRLが熱いです。

今日はそんな彼らの楽曲の中から、ある一曲の歌詞解説をしたいと思います。

その曲名は「ZEGEN VS UNDERCOVER」。

タイトルからも漂うように、独特の世界観を持つ名曲です。

しかしその歌詞は少し難解。

あまり聴き馴染みのないような語句も出てきますので、そちらも丁寧に解説していこうと思います。

オルタナティブロックの王道ともいえる、NUMBER GIRLらしいサウンドを持つこの曲。

そんな「ZEGEN VS UNDERCOVER」で向井秀徳が伝えたかったメッセージを捉えていきましょう。

NUMBER GIRLファン必見です!

一体何が「ヤバイ」のか?!

衝撃の始まり

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ヤバイ さらにやばい バリヤバ
笑う さらに笑う あきらめて

出典: ZEGEN VS UNDERCOVER/作詞:向井秀徳 作曲:向井秀徳

この曲の始まりはとても衝撃的です。

とにかく、何かが「ヤバイ」のです。

「ヤバイ」という言葉自体曖昧な言葉ですが何がどうなのかはわかりません。

何かにびっくりしているのか。

何かに落胆しているのか。

自分の力に酔いしれているのか。

自分の未来に絶望しているのか。

ここではわかりません。

わからないのですが、とてもゾクッとしてしまう始まり方です。

この部分は向井秀徳の弾き語り部分ですから、他の楽器は鳴っていません。

その曲の構成がいっそう「ヤバさ」をシリアスに表現しているようです。

難解な語句の解説

ZEGEN(女衒)が暗躍して 街が色
JORO(女郎)とねんごろの潜入刑事
が殺されて見つかった のはこの街のロジウラで

出典: ZEGEN VS UNDERCOVER/作詞:向井秀徳 作曲:向井秀徳

歌詞の中に出てくる語句を整理しながら理解していきましょう。

まず女衒とは、ローマ字部分の通り「ぜげん」と読みます。

これは若い女の子を買って遊郭に売る人身売買業者のことです。

遊郭とは女の子から性的なサービスを受けるところで、今でいうと風俗店です。

昔の言葉なんですね。

江戸にある遊郭「吉原」なんかが栄えていた江戸時代から昭和時代にかけて使われていた言葉。

今でいう風俗嬢のことを、当時は遊女といいました。

遊女の別の呼び名が歌詞にある「女郎」です。

よく聞く「花魁(おいらん)」は女郎の最高位だといえます。

「ねんごろ」とは親切である様をいいます。

潜入刑事とは、ドラマなんかでよくあるように犯罪組織に自ら入団して操作することです。

そう、これが歌詞にある「UNDERCOVER」になります。

直訳すると「覆面」です。

この潜入刑事のことを言いかえた言葉が「UNDERCOVER」なのです。

タイトルの意味とは?

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 上で書いたことを知ると、この謎だったタイトルの意味が単純に見えてきます。

まず、女衒が裏でコソコソと人身売買をしています。

そのせいで街の風紀が乱れていました(「街が色」の部分)。

そんな女衒を追って女衒の組織に刑事が潜入します。

そんな女衒と潜入刑事の戦いだということです。

もちろん歌詞にあるように、刑事は女郎と共に殺されてしまいました。

何を言わんとしている?!

上で書いたように、この曲のタイトルの意味がわかったと思います。

とはいえ、女衒に刑事と女郎が殺されるという事件を「ただ」描いているわけではない。

この曲はそんな安っぽい叙事詩ではなく、もっと何か大きなことを言っている。

多くの人がそう思うでしょう。

その大きなことを掴むために、二番に出てくる難解な語句を理解しておきましょう。

ブルースとは何か

蛇味線持った アフリカンアメリカンの女
がブルースをこの上なく器用に歌って 街が色

出典: ZEGEN VS UNDERCOVER/作詞:向井秀徳 作曲:向井秀徳

まず出てくるのは「蛇味線」という語句。

これは三味線と同義だと捉えていいでしょう。

猫や犬の皮を使うことが多い三味線の中で蛇の皮を使ったものを特にこう呼ぶそうです。

それを手に持ったアフリカ系アメリカ人がブルースを弾き語っている。

ここで重要になってくるのは「ブルース」が持つ意味です。

ブルースとは音楽のジャンルの一つでロックの前身ともいえます。

このブルースは、言ってしまえば「不良」の音楽だったんですね。

アフリカから奴隷としてアメリカに連れてこられた人々。

当時、彼ら奴隷は言語や生活から全てをアメリカ式にさせられていました。

自分たちの個性が失われようとしていたのです。

しかし、音楽で失われつつあった故郷への気持ちを思い出そうとした。

その反抗心によってブルースは生まれていきました。

それゆえ、白人の上層階級は聴いてはいけない音楽として扱っていたのです。

まさに風紀を乱すとして嫌っていたわけですね。

ちなみに一番でも出てきた「街が色」という表現。

ここでは「色」という言葉が、「柄の悪さ」を表しているといえます。

なんとなく街の空気が悪くなってきている、風紀が乱れているという表現ですね。

悪いことが当たり前になっていく