キケンが暗躍して もみ消して
出典: ZEGEN VS UNDERCOVER/作詞:向井秀徳 作曲:向井秀徳
「暗躍」とは、裏でヒソヒソと活動することです。
一番では女衒が暗躍していましたね。
その事件がひと段落し、新たな「危険」が出てきた。
女のブルース歌いは「危険」の象徴です。
これは、あの「女郎と刑事の殺人事件」がいつでも起こり得ることを表しています。
同時に、殺人事件が忘れ去られつつあることも表しています。
傍観者の危険性
声を持たぬ人々
知らん 俺は知らん 傍観者
見えん 実に見えん 殺風景
出典: ZEGEN VS UNDERCOVER/作詞:向井秀徳 作曲:向井秀徳
ここまで来れば、もう向井秀徳が言わんとしていたことがわかってくると思います。
彼は、女衒と潜入刑事の戦いを書きたかったわけではありません。
もちろん、女郎と共に刑事が死んでしまったことを書きたいわけでもありません。
その周りにいた声無き大衆を書きたかったのです。
そして、女郎と刑事が死んだ本当の理由も書きたかったの。
女郎と刑事が殺されたのは女衒によってです。
ですが、本当にそうでしょうか。
確かに手を下したのは女衒です。
しかし、女衒をそうさせたのは女衒本人ではないのではないでしょうか。
殺人したのは社会構造
では誰が本当に女郎と刑事を殺したのか。
その答えが声無き大衆、すなわち傍観者だといっているのです。
傍観者は何も言いません。
助けもしなければ悪事を止めることもない、知らんふり。
そんな社会構造こそが殺人を生み出す。
こんな世界を「殺風景」だといっています。
ところで、ここまでの歌詞を見ていく中で何か恐怖のようなものを感じませんでしたか?
冷たさというか、人情味のなさというか。
それこそ、向井秀徳が描きたかった世界観でしょう。
現代は隣の家に醤油を借りることも無くなったくらいに孤立した社会です。
それを曲中で肌に感じられることこそ、この曲の魅力だと思います。
一体何が「ヤバかった」のか
ヤバイ さらにヤバイ バリヤバ
出典: ZEGEN VS UNDERCOVER/作詞:向井秀徳 作曲:向井秀徳
傍観者の危険性がもう一つあります。
それは、まさに冒頭で「ヤバイ」と焦っていた理由。
「次は自分だ」という恐怖。
すなわち次は自分が殺されるかもしれないということです。
これは案外気付きにくいかもしれません。
しかし、傍観をするという行為を今一度考えてみなくてはなりません。
「傍観をする」とは、第三者として関わらないことです。
助けることも、止めることも、共有することもしない。
「無視をする」ともいえるでしょう。
傍観者でいるという行為は悪の力を大きくさせます。
正義が馬鹿を見るようになってしまうからです。
そして大きくなった悪の力が自分の命を狙ったとき、間違いなく助けは来ません。
傍観されるだけなのです。
時間の経過と共に
おととしの事件を誰も覚えておらんように
俺もまた この風景の中に消えてゆくのだろうか
出典: ZEGEN VS UNDERCOVER/作詞:向井秀徳 作曲:向井秀徳
この曲は、曲全体で時間の経過を表していると思われます。
まず殺人事件があったことが書かれた一番。
そしてそれがもみ消されつつあった二番はその一年後でしょう。
そして、この歌詞の部分は二年後ということになります。
このなんともいえない寂しさが本当に癖になります。
人間味とか、暖かさとか、故郷とかいう言葉と全く反対にあるような感じ。
都会の、冷たい、孤独の社会の中という感じがしますね。