歌詞に何を求めるのか
あえて意味を持たせない?
シャウトとぶっきらぼうな物言いが強烈なインパクトを残す「TATTOOあり」。
NUMBER GIRLというバンドの良さが凝縮された素晴らしい楽曲です。
歌詞は、1度聴いただけでは聴き取れない部分も多く、どんな言葉かわかったとしても難解。
主人公の妄想のような映像が広がっているような印象。
歌詞の一連の流れは、一般的なストーリーにはなっていないような気もします。
心象風景のインパクトと、言葉のインパクトを伝えているのです。
TATTOOありを聴いて、言葉が心に気持ちよく刺さればそれでいいのかもしれません。
ピクシーズや、ニルヴァーナやサウンドガーデンなど、オルタナバンドの歌詞はそういう類も多いです。
オルタナバンドから影響を受けたとされるNUMBER GIRLも、その系譜を踏んでいるのかもしれません。
誤解を恐れずに言えば、歌詞に意味がないことに意味があるというものです。
それはそれで素晴らしい表現方法の1つ。
なぜなら聴き手は、解釈を無限にできるからです。
深層心理に現れるストーリー
ただ、すべてがメタファーのような歌詞でも、何らかの思いは存在します。
作詞者が気づいていないような場合も、深層心理が言葉に現れるからです。
ストーリーを断定することはできなくても、歌詞の主人公の心情は汲み取ることができるでしょう。
この記事では、彼がどんな心理状態なのかにフォーカスして、歌詞を紐解いていきたいと思います。
インパクトのあるシャウト
4つの単語の解釈
右肩
イレズミ
明け方
残像
出典: TATTOOあり/作詞:MUKAI SHUTOKU 作曲:MUKAI SHUTOKU
4つの単語が叫ばれる部分です。
文章にはなっていません。
しかし、朝陽が昇る頃に恋人か誰かが服を脱いだのだと、かろうじてわかります。
そのときに何が一番気になったかといえば肩のイレズミです。
歌詞の主人公は、その光景をフラッシュバックさせているのでしょう。
朝方の風景であれば、朝起きてばかりは眠くて意識が朦朧としており、徹夜してたとしたら眠いはず。
少々のことは気にならないような気もします。
しかし、シャウトも含めて考えてみると、右肩を含めた映像が主人公に焼き付いているようです。
現在の出来事ではない
残像
出典: TATTOOあり/作詞:MUKAI SHUTOKU 作曲:MUKAI SHUTOKU
上記の言葉があるので、現在の出来事ではないのでしょう。
現実かどうかも断定できないですね。
過去の出来事が脳裏に描かれ、そのまま妄想に繋がっているのだと考えます。
相手の姿がチカチカと現れては消える。
そんな映像が主人公の目の前に広がっているのかもしれません。
そして、現れた映像に驚くように叫ぶのです。
そんな中、気になっているのは、相手の体よりもむしろイレズミ。
なぜイレズミがダメなのでしょうか。
イレズミが許せない?
江戸時代には左腕の上腕部を一周する1本ないし2本の線(単色)の入れ墨を施す刑罰が科せられた。施される入れ墨の模様は地域によって異なり、額に入れ墨をして、段階的に「一」「ナ」「大」「犬」という字を入れ、五度目は死罪になるという地方もあった。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/入れ墨
主人公はイレズミにマイナスイメージを持っているから、それがトラウマのようになったのでしょうか。
現在の日本では、ファッションとしてイレズミを入れる人も多く、一般的なものとなっています。
しかし近代以前は、イレズミは一般的には普及していません。
そして罪人の証でした。
この人は罪人ですと、周囲の人に知らしめるためのものだったのです。
現代はそんな意味はないとはいえ、反社会的なものであるという固定観念が残っていることも事実です。
歌詞の主人公は、女性がタトゥーを入れていることにショックを受けてしまったのかもしれません。