ダイナミックな「Soul」の魅力
歌詞にはあまり意味がない?
2015年12月2日発表、星野源の通算4作目のアルバム「YELLOW DANCER」収録曲「Soul」。
ダイナミックでソウルフルなサウンドと神秘的な歌詞が魅力の一曲です。
一方で星野源自身がラジオ放送で「歌詞にはあまり意味を持たせず」などと発言しています。
しかし意味をなさない歌詞を作ることの方が非常に難しいもの。
そのためいつの間にか壮大なイメージの歌詞に仕上がりました。
星野源の潜在意識が選んだ言葉たちのモチーフを精査して、この曲が語りかける生命の根源を深掘りします。
またサウンド面で彼が聴きどころとして挙げた箇所を解説。
星野源の「Soul」にできるだけ近づく記事にしたいです。
それでは歌詞を見ていきましょう。
歌詞のモチーフは旧約聖書
意外と深い歌詞の世界
海を見た日の 神は幼い
寄せるわ そう 波の味
浮かぶ枯葉 如月 夕陽の向かい
兎が そう 跳ねるだけ
出典: Soul/作詞:星野源 作曲:星野源
ブラック・ミュージックに多大な影響を受けたサウンドが神々しいです。
歌詞の方もゴスペル的な神聖さがあります。
リズムやビートが最重要視されているので言葉は切れ切れになってしまうもの。
小沢健二の音楽との親和性が語られる星野源。
しかし小沢健二はビートを重視しつつも言葉あまりで歌詞を創ってゆくタイプ。
一方、星野源はビートに忠実にタイトに言葉を並べてゆく歌詞を紡ぐタイプの人です。
歌詞にはあまり囚われずに太く逞しいビートとサウンドに酔うのもいいでしょう。
ただし、「Soul」の歌詞は本人が謙遜するよりももっと深い内容を携えています。
星野源は自然に口に優しい言葉を並べてみたそうです。
しかし、潜在意識が言葉に意味を吹き込みました。
この曲の歌詞のモチーフはほぼ旧約聖書に求められるものです。
歌詞を解説してその仮説を実証してみましょう。
地球や人類の誕生の瞬間
宇宙や地球、そして人類が誕生したばかりの世界が描かれています。
科学的な見地では宇宙の創生と地球や人類の誕生にはそれぞれ莫大な時間の差があるもの。
しかし旧約聖書に基づくとこれらは神の意志により比較的に短期間で同時に生まれたことになっています。
宇宙を創生したばかりの神ですからまだ幼いという形容詞が付くのです。
如月は陰暦の2月。
陰暦は今の暦の上では1ヶ月遅れですから3月の辺りで雪が溶けてゆく頃です。
夕日の向こう側で跳ねるうさぎは月のことかもしれません。
ただ単にうさぎが駆け巡っていると解しても大丈夫です。
森羅万象が渾然となってぐるりと彼を包んでいる状態を歌にしています。
ここでは万物に神秘が宿っていることを感じてください。
自然のものに囲まれているだけで神秘体験ができるような気持ちになるのです。
心の平穏と心の高揚が同時に押し寄せるような一瞬が切り取られています。
普遍的な神への敬意
創世記にも触れてみたい
おお 此処から
おお 世界が
出典: Soul/作詞:星野源 作曲:星野源
世界はこんな風に始まったのだと星野源は歌います。
如月は春のはじめの方ですから様々な生命が芽生えるはずです。
先述した通り旧約聖書からいただいたモチーフが散見されますが陰暦が登場するなど矛盾はあります。
星野源は特に何かの宗教を信仰しているのではなく、ブラック・ミュージックが歌う神に惹かれたはずです。
基本的にキリスト教でいうところの神ですが、もう少し普遍的に解釈できる神でもあります。
その神に日本由来の事物で肉付けをしてみたのでしょう。
歌詞の内容がガチガチに旧約聖書のままであったなら美しい歌詞を書けたかどうか分かりません。
旧約聖書の創世記の箇所をなぞって独自の歌詞を生んだのです。
今ではweb上で旧約聖書を読める時代です。
創世記は特に大事な箇所ですので未読の方は検索してみてください。
万人にも読める簡単な言葉遣いが聖書のよいところです。
易しい内容ですので気張らずに読めます。
星野源は最初に森羅万象の姿を描いて、そこから世界のはじまりへと言及しました。
この先を見てゆきましょう。