「君は薔薇より美しい」の時代
1979年という時代
1979年というと、平成の時代が始まる10年前。
江川卓がプロ野球選手になった年。
第二次オイルショックが始まった年。
堂本光一が生まれた年。
日本は高度成長期と言われる景気の良い時代を終え、景気もこれといって良くも悪くもない時代にありました。
この数年後から世間はバブル景気の様相を帯びてきて、その後、経済的には絶頂を迎えるので、まだまだ元気な日本がそこにあったと言えます。
ヒットチャートでの記録は?
数多くのヒット曲を持つ布施明にとっても、1975年にリリースした「シクラメンのかほり」と双璧をなす楽曲です。
しかし、ヒットチャートでの記録を見てみますと、オリコン週間チャート8位が最高順位でした。
また、TBSのヒットチャート番組「ザ・ベストテン」でも第4位が最高位となります。
「シクラメンのかほり」のオリコン週間チャート最高位は1位です。
「シクラメンのかほり」の方が勢いのあるヒットだったんですね。
ただし、NHKの「紅白歌合戦」では、1979年の第30回のほか、2003年(第54回)、2007年(第58回)、2008年(第59回)の計4回も歌われています。
「シクラメンのかほり」が紅白歌合戦で歌われたのは3回ですので、布施明も大切に長く歌い続けている楽曲と言えます。
「君は薔薇より美しい」の誕生
オリビア・ハッセーという女優
ところで、オリビア・ハッセーというイギリス人女優はご存知でしょうか。
アルゼンチンのブエノスアイレスの生まれのイギリス人女優で、のちに布施明と結婚することになる女性です。
オリビア・ハッセーはカネボウの1979年春の化粧品のCMに出演していました。
そして、そのCMソングこそが「君は薔薇より美しい」でした。
布施明とオリビア・ハッセーはこのCMをきっかけに出会い、結婚するに至ったのでした。
きっかけは化粧品競争
このカネボウのCMについては、布施明とオリビア・ハッセーの結婚というエピソードのほかに、もう一つ大事なエピソードがあります。
そのころ、化粧品会社カネボウにとっての最大のライバルは資生堂でした。
両社は、この年まで毎年のように様々な歌手や女優とタイアップしCMを発表してきました。
「Mr.サマータイム(サーカス)」、「時間よ止まれ(矢沢永吉)」、「薄化粧(サーカス)」、「君のひとみは10000ボルト(堀内孝雄)」。
これらはすべて1978年にカネボウと資生堂両社のCMタイアップから生まれた楽曲です。
そして1979年になって「君は薔薇より美しい」が生まれますが、なぜこのようなタイトルの楽曲になったのか。
これが、大事なもう一つのエピソードなのです。
「君は薔薇より美しい」というタイトル
1979年。
資生堂は、前年までのCM楽曲戦争を終わりにし、映画「ベルサイユのばら」とのタイアップキャンペーンを張り込みました。
映画「ベルサイユのばら」は10億円を超える製作費をかけた大作で、資生堂にとっても一世一代の大規模なキャンペーンでした。
資生堂は「バラ」に勝負をかけたのですが、もう、お分かりですね。
カネボウはオリビア・ハッセーを起用し「君は薔薇より美しい」というキャッチコピーで資生堂を迎え撃ちました。
バラにはバラを。
「君は薔薇より美しい」は資生堂とカネボウの戦いの中で生まれた楽曲だったのです。