2ndアルバム「Miracle Milk」より
今回紹介するのはMiliの「RTRT(レトルト)」という楽曲。
楽曲を紹介する前に、収録されているアルバムについて少し触れておきましょう。
当時バンドが置かれていた状況や、リリースに際してどういった心境を見せていたのか。
それらを知った上で楽曲を聴いていただけると、また違った味わいが出てくるはずですよ。
タイアップが目を引く収録曲
2016年10月12日にリリースされた2ndアルバム「Miracle Milk」。
収録内容は18曲と、前作「Mag Mell」を超えるボリュームを見せています。
内6曲は世界的人気を誇る音楽ゲームアプリ「Deemo」の収録曲。
このアプリへの楽曲提供は、時代に根差したこのバンドならではのアプローチで注目を集めましたね。
しかしそれを経ても評価に至るかどうかというのは楽曲次第。
アプリ内の数ある楽曲の中から一番の人気を誇っているMiliには、それだけの実力があったということですね。
「Miracle Milk」は、ゲームのファンからしてもサントラのような楽しみ方が出来る作品なのではないでしょうか。
ゲーム内でMiliの楽曲を気に入ったということは、他の収録曲だってきっと楽しめるはずですよね。
またアルバム収録の「与我共鳴-NENTEN-」はアニメ「ブラッディヴォーレス」のオープニングソングに。
アニメタイアップは国内での認知度を一気に加速させるもの。これもバンドにとって大きな一歩ですね。
バンドが見せていた心境は
「Miracle Milk」がリリースされたのももう2年前の話。
そのタイアップの数々を見ていると、一見すでに日の目を見ているような印象を受けます。
しかしこの頃のMiliの置かれていた状況というのは、傍から見るより苦しいものだったようですよ。
当時の公式ブログから以下のような内容を見つけました。
それを感じているからこそ、だいわ(Kasai)は今からライブだっていうのに感動して泣くのです。
それを感じているからこそ、だいわ(Kasai)は今からライブだっていうのに感動して楽屋裏の階段で泣くのです。
それを感じているからこそ、だいわ(Kasai)は今からライブだっていうのに感動して人知れず楽屋裏の階段でうずくまり涙を流すのです。
出典: https://lineblog.me/mili/archives/2016-08.html
音楽をやっていて日の目を見れる人たちというのは、ほんの一握り。
ゼロから1にすることがいかに難しいことかということ、そしてゼロが1になった瞬間の喜びがこの文章に表現されています。
このアルバムのリリースの頃というのは、バンドがゼロから1になったことを徐々に実感していた時期。
一歩一歩に感動できるということが彼らの活動の原動力となっていたのでしょう。
そして楽曲というのは内から湧き出てくるもの。
Yamato Kasaiという感受性豊かなコンポーザーがいることが、バンドにとって何よりの強みであることを物語りますね。
2作目ということもあり
リスナーにとって好きになったアーティストの最初に聴いた音源の衝撃は、その後リスナーの人生の一部になり、簡単には変えられない生き方に影響します。思い出の1ページとなった音楽は本当に色あせないものです。
裏を返せば、多くのミュージシャンにとって、過去に出した自分の作品という存在は呪いになるんです。
だから、超えたいんですよ。終わりたくないですもん。
出典: https://lineblog.me/mili/archives/2016-10.html
音楽が好きな方なら、思い出の1曲というのもきっとあるはず。
そういう特別な想いが詰まった楽曲って理屈ではないんですよね。
アーティストが歴を重ねれば演奏や楽曲のクオリティが上がっていくのは当然。
それとは関係なく、「あの頃の曲が好き」という感覚は誰しも持っているものです。
彼が見せたのは自分たちの最新のものが特別な楽曲であり続けたいという気持ち。
ここで語られたのは単純に「1作目に負けたくない」ということでしょうが、それは今も変わらないはずです。
サウンドの根底を支える熱いものを感じさせますね。
「RTRT」はこんな曲
さて、ここからいよいよ「RTRT」の楽曲内容に触れていきましょう。
レビューを参考に後に紹介するMVを観ていただくと、より楽しめるはずですよ!
メロ部分から一変する雰囲気
機械的に繰り返される都会的なシンセフレーズに4つ打ちのビート。
よくあるデジタル全開のダンスナンバーかと思って聴いていると、Aメロから雰囲気が一変します。
オリエンタルな空気を帯びたサウンドは、中国拳法の使い手が霧の立ち込める中対峙しているような「何か始まるぞ」という感覚を覚えるもの。
異彩を放つ空気感に一気に引き込まれます。
続くBメロで聴かせるのは、再び脈打ち始める4つ打ちビートに可愛らしいピアノタッチのシンセ。
momocashewの華のある歌声がパッと引き立つような印象です。