お前に愛されたい俺
知れば知るほど迷わされる
俺は「お前」に愛されようと様々な努力をします。
「お前」の過去を知る、つまりHIPHOPの歴史や名作を学ぼうとしたり。
英語を使ったり、慣れないスラングを使いこなそうとしてみたりもしました。
元々悪くもないのに、無理に悪ぶってみようとしたりもします。
「お前」を知って愛されようとすればするほど、自分を見失って迷っていく。
けれど、それでも「お前」の魅力から逃れられないのです。
卑猥でトチ狂った一面と同時に、知的で繊細な一面も併せ持つ。
知れば知るほどその多面性にハマっていき、離れられなくなります。
それでも離れられない俺
そんな振り向いてくれない「お前」に、俺は求めてほしいと願います。
もっとHIPHOPシーンから求められたい、愛されたいと願うのです。
どんなに猛毒のような彼女でも、蝕まれ求められて一体となりたい。
それほどに俺は「お前」を求めてやみません。
阿婆擦れ擦れ
be my baby
初めての夜みたいに
出典: 阿婆擦れ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
相思相愛となって熱く求め合いたい。
俺はそう願います。
初めての夜とは、自分がHIPHOPと初めて出会ったときの感動や興奮を示しています。
そんな感動を感じていたいし求められたい、切実な想いがこもっているのです。
移り気なお前と愛されない俺
次から次へと男を変えるお前
浮気症で飽き性 荒い気性
若いツバメ捕まえ たまに試乗
出典: 阿婆擦れ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
「きしょう」の音が続くライム。
次々と恋人を変えては楽しんでいる「お前」の姿が描かれています。
「ツバメ」は若い男の愛人を指す言葉。
彼女は若い恋人を見つけては遊び、虜にしてはすぐに捨ててしまうのです。
これは、HIPHOPシーンの流行が次から次へと移り変わっていくことを表しています。
新人が出てきては売れ、すぐに別の人へと移り変わっていく。
そうやって誰もが彼女、HIPHOPという世界に取り込まれては捨てられていくのです。
流行の移り変わりはどんどん早くなっていき、それでも誰もが本物のフリをしていきます。
俺の番を待ちわびる
去年はあいつ、今年はあいつ
で明日は誰?で俺はいつ?
出典: 阿婆擦れ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
移り変わっていく流行の中で、俺は「お前」に愛される順番を待ちわびます。
これはHIPHOPの主流としてヒットするのを待つと言い換えられます。
明日こそは俺がシーンの中心になると願うも、順番は思うように回ってこないのです。
「ありのままの自分を表現する」ことが、HIPHOPの元々の魅力でした。
けれど信じて表現し続けても、一向に彼女の愛は自分に向かいません。
それは他のアーティストも同じ。
売れては忘れられることを繰り返し、彼女の足元には死を象徴するような彼岸花が咲くのです。