楽曲「教祖誕生」

アルバム『助演男優賞』収録

【教祖誕生/Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)】歌詞の意味を解釈!痛烈な皮肉が現代に刺さるの画像

Creepy Nutsの「教祖誕生」は2017年2月にリリースされたアルバム『助演男優賞』に収録されています。

衝撃的なのはタイトルだけではなく、現代のネット社会にメスを入れるような歌詞です。

発売当初からネットはざわつき、MVが公開されているYouTubeのコメント欄も賑わっていました。

まわりからチヤホヤされていたり、取り巻きや信者がいる教祖のような存在…。

少し古い表現だとカリスマと呼ばれる人がそれらに当てはまります。

人だけではなく、流行りのスイーツなどもその類でしょう。

そして、その教祖に対して痛烈な皮肉を浴びせながら、反対の意見を掲げて自ら教祖になる人もいます。

アンチテーゼですね。

全員が必ずしも同じ意見では無いからこそ、いろいろな教祖がこの世に存在するわけなのです。

人の気持ちは、わりと大多数の意見の方に流されやすいと思います。

流行っているからやってみたい!とかみんながやっているから…など。

自分の意見を貫いているように見えて、実はそれらを流行らせている教祖の思うツボなのです。

実際に私たちはネットの社会にどれだけ踊らされているでしょうか?

ネットニュースに飛び交う芸能人の噂を鵜呑みにしては批判し、好き勝手なことを言います。

でも真実は誰にも分からないのです。

例えそのニュースがデマだったとしても国民が信じてしまったら間違っていても真実として認識されてしまう…。

お互いの顔が見えないネット社会では、知らないうちに人を傷つけているのかもしれません。

「教祖誕生」の歌詞の中にはそんな様々な感情が散りばめられているのです。

人の意見を批判することでのし上がる、人のふんどしで相撲を取るような人への皮肉にも聞こえます。

楽曲の内容もアルバムの中では重いテーマであり、現代の在り方を考えさせられました。

とはいえネットで文章を書いている自分もその1人だなぁと痛感…。

あまり気軽に解釈できる内容ではありませんが、「教祖誕生」について自己流に紹介したいと思います。

90年代を思い出すヘヴィーなラップ

冒頭はキングギドラ「スタア誕生」のサンプリング

【教祖誕生/Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)】歌詞の意味を解釈!痛烈な皮肉が現代に刺さるの画像

まずこの楽曲を聴いて懐かしさを感じる人もいると思います。

この楽曲の冒頭の部分は、キングギドラの楽曲「スタア誕生」をサンプリングしているのです。

よくよく考えたらタイトルもしっかりと本家に寄せていました。

重たい雰囲気で言いたいことを淡々と表現する様子が90年代のラップの特徴とも言えます。

楽曲の中で1人の人生が描かれているストーリー性のあるところも魅力的です。

ラップ界の教祖的存在のキングギドラだけに、序盤から見事に世界観に引き込まれてしまいました。

「スタア誕生」がリリースされたのは1995年、そして「教祖誕生」は2017年です。

20年以上の時を経て、歌詞に描かれる時代が随分変わったなぁと感じました。

やはり大きいのはネットの普及による情報量の多さです。

何が真実か嘘かが分からない時代の中で自分は何を信じればいいのでしょうか。

こうした疑問も含めながら歌詞の意味に迫っていきたいと思います。

「教祖誕生」の歌詞を解説

時代によって変わる”無感情”

教祖誕生 無感情な商売繁盛
教祖誕生 無反応で場外乱闘

出典: 教祖誕生/作詞:R-指定 作曲:DJ松永

先程も紹介したように、この冒頭のフレーズはキングギドラの「スタア誕生」のサンプリングです。

90年代の"無感情"は自分が夢のために行動した結果、納得する未来にならなかった様子を表していました。

しかし、現代の"無感情"は他人の気持ちなどお構い無しに自分の利益を求める様子が伺えます。

同じ言葉の中にも違う表現が込められているように感じました。

顔の見えない仲間とつるんで世の中を批評し、鋭い意見に賛同されてはまた同じことを繰り返していきます。

そしてアンチが出てきたらとことん叩きのめし、自分の権威をふるっていくのです。

でもそれは全てオンラインの世界の話…現実にいるのは何者でもない自分でした。

世の中に踊らされる信者

もうとっくに気付いてる
仕組みや絡繰り
バカな世間 横目 生あくび
踊らされ 選ばされ
騙されてると気づかずに
有り難がってる

出典: 教祖誕生/作詞:R-指定 作曲:DJ松永

世の中で同じことをして稼いでる人と稼げない人の違いはやはり知名度も関わってきます。

有名芸能人が使っている化粧品と名前も知らない人が使っている化粧品では売れ行きが違うはずです。

だから企業は広告に莫大なお金をかけて商品を売ります。

それを見て買う消費者がいる限り、このループは無くならないでしょう。

つまり知名度の高い人がピラミッドのてっぺんにいる教祖であり、企業や消費者はそれに踊らされているのです。

もちろん完璧に騙されているわけではありません。

なぜなら私たちはその仕組みを理解した上で流されているからです。

俺は違う

俺はあぁはならねぇと斜に構え
冷めた目で浮世を嘲る
胸に手当て忘れようとする
遠い日に抱いた憧れ
スターになる夢見育った
尊敬されたいだけだった
だけど、ある時気付いてしまった
俺は何者でもなかった

出典: 教祖誕生/作詞:R-指定 作曲:DJ松永