人間の理性からくる感情
君だけを愛してた
不意に目にとまったビデオテープ 誰かに股がるうつろ瞳をした君
"肉欲"に腰を振る その日付は僕の誕生日
"嫉妬"に狂う"憤怒"も罪ですか?
出典: sins/作詞:林保徳 作曲:林保徳
イエス・キリストに直接お伺いを立てるほどに追い詰められた主人公は、どのような罪を犯したのか。
その一例が上記の歌詞で語られています。
読んでお分かりの通り、このような状況を目の当たりにして、許せる人間がどれほどいるでしょうか。
「まぁ、仕方ないよね」
と笑顔で受け入れることができる人間の方が少ないと思います。
自分以外の人間と、大罪でいうところの「色欲」に溺れる「君」を見て湧き出る「嫉妬」と「憤怒」。
これは正常な反応だと思います。
しかし、敬虔な主人公はこれらの感情が大罪に当たるのではないか?
という自責の念に蝕まれて行ってしまうのです。
大罪を犯しているのではないかという不安
誰しもが持つ自然な感情
Can you hear my voice? Did my prayer reach you? Jesus Christ!
I don't need your smile. Just give me your answer. Could you Please!
出典: sins/作詞:林保徳 作曲:林保徳
1コーラス目に続き、2コーラス目のAメロも同じく英語で語られます。
この部分を翻訳してみましょう。
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私の声が聞こえますか?私の祈りはあなたに届きましたか?イエス・キリスト!
私はあなたの笑顔を求めていません。あなたの答えを与えてください。お願いします!
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これまで語ったように、誰しもが持っている当たり前の感情。
その発露さえも大罪だと思い込んで答えを求める主人公の悲痛な叫びが見て取れます。
信じるイエス・キリストの笑顔すらも不要だと言い切ってしまうほどに追い詰められているのです。
目の前に現れるわけではなく、いつも遠くから見守ってくれている存在。
大罪を制定した偉大なる張本人は、答えを返すわけでもなく、ただただそこで佇んでいます。
待っても待っても何も答えない状況に、主人公は声を荒げるのでした。
罪とは何か
救いを求めるが故の呪縛に苦しむ
目の前でイジメに遭う人を 見て見ぬフリをしました
「助けて・・」その言葉が痛かったのに
正義より 安泰という名の無傷を選びました
"怠惰"であさましい僕は罪ですか?
TVのニュース
「また幼い命が奪われてしまいました」
哀れむだけの僕は"高慢"でしょう
過ちを犯さない人間など存在するのですか?
答えを求める僕は"強欲"ですか?
出典: sins/作詞:林保徳 作曲:林保徳
イエス・キリストへの懺悔はまだ続きます。
それが上記の歌詞です。
自分の身を優先して救える友を救わなかったこと。
悲痛なニュースを安全な場所から眺めて憐れむことしかしなかったことなど、堰を切ったように溢れます。
これらが大きな過ちだったと後悔し、大罪を犯していると責め続ける主人公。
その上で、さらに答えまで求める自分を、さらに責め立てます。
ここで少し人間らしい表現が出てきました。
それが上記の歌詞の、下から2行目。
自分は今とても気にしているけれど、そもそも大罪を犯さない人間がこの世にいるのか?
もしかしたら自分も許されるのではないか?
という、自衛とも取れる言葉です。
しかしこれも最後の1行でなかったことへと、自分の中で片付けてしまうのでした。
そんな交錯する想いが悲痛な叫びとなって教えを乞う、最後の一言に集約されます。
I believe it. Please tell me. Jesus Christ.
出典: sins/作詞:林保徳 作曲:林保徳
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私はイエス・キリストを信じています。だから教えてください。
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冒頭に出てきた最初の英文と同じフレーズです。
自分の行動は大罪なのか。そもそも罪とはなんなのか、どう向き合えばいいのか。
そんな質問がしたくて必死に叫び続ける主人公。
結局、イエス・キリストからその答えはありませんでした。
なので、結果的にそれらが何なのかは謎のままです。
そのため、ここから先は推察になります。
この歌詞の問いかけについて、主人公は最後まで答えはもらえなかったことでしょう。
しかしこれらは生きていれば必ず感じる感情たちです。
これらを押し殺して、全てを受け入れていたのでは、人間として潰れてしまうと思います。
完璧な存在であれば、あるいは可能なことかもしれませんが人間には難しいことです。
程よく自制し、相手を気遣い、敬って接すること。
そうして自分本位で当たり散らさないで過ごせたら…
そうすればきっと、自分自身の感情も当たり前のこととして受け入れられるでしょう。
この曲で言いたかったのは、そういうことだったのだと私は思います。
これでこの曲の考察を終わります。
まとめ
人間が持つ業を七つに区分して定義した『七つの大罪』。
これになぞらえて悲痛な叫びを繰り返す主人公を描いた『sins』の世界、いかがでしたか?