妖しくて危険な世界がうごめくクリープハイプの傑作
クリープハイプの楽曲は、疾走感のあるギターと特異な歌詞の世界が印象的です。
特に尾崎世界観さんの歌詞と歌唱は、独特の雰囲気をかもし出していますね。
その中で「キケンナアソビ」は、従来のものとは一線を画しています。
ギターリフはストロークを抑え、妖しい情景を演出するエフェクターを多用。
歌詞はストレートな表現で淫猥な世界を繰り広げています。
MVはYouTubeでのプレミア公開が話題を呼びました。
主演は冨手麻妙、監督はエリザベス宮地が担当しています。
今回は、この楽曲「キケンナアソビ」の歌詞の世界を解釈してみました。
愛を求める切ない女心の裏に隠された、もどかしい情念を深読みします。
モラルと思いのはざまで揺れる女心
社会的には認められない男女の関係に陥ってしまった主人公。
男の愛の言葉が口先だけのものと理解している彼女は、思いとは裏腹な行動に出てしまいます。
あなたの愛の言葉は信じない
そうやって口ばかりで だからさ どうせやるなら早くしようよ
出典: キケンナアソビ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
主人公の女は、不倫関係の男に、愛を伴わない不毛な性行為を要求しています。
体の関係だけでも良いと相手に伝えますが、本心ではありません。
本当は、自分の気持ちを素直に伝えたいのに、出てくる言葉は憎まれ口ばかり。
どうせ実らない愛と口走る彼女には、あきらめの気持ちが見え隠れします。
彼女には男の愛の言葉を真に受ける勇気がありません。
男の本心を聞かずに、体の関係だけで満足しているふりをしています。
どうせ遊びの関係だから
始めから終わってるなら どのみち 後腐れないし
出典: キケンナアソビ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
付き合い始めた時から、愛なんか求めていないと口にして強がっていました。
本当はもっと愛を実感したいのに、後腐れのない体だけの関係でも良いとあきらめているのです。
二人は社会的には認められない不倫や浮気の間柄なのです。
どちらにしても、自分以外にもう一人体を重ねる相手がいます。
男の気持ちが自分にあるのか、もう一人の相手にあるのか考えてもいません。
最初から報われない愛だと決めつけているようです。
報われない思いだから、始まる前に決着がついています。
彼女にとって、埋まらない二人の距離は、もどかしくやるせないのです。
二人の時間は肉体関係を結ぶ一瞬だけ
本当は君だけをとか要らないから
この道をまっすぐ行けば帰れるから
これからも末永くお幸せに
じゃあ気をつけて
出典: キケンナアソビ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
二人は、ベッドを共にするわずかな時間だけの関係です。
行為が終われば、相手の男は自分のテリトリーの中に戻ってしまいます。
二人の関係が不倫だとすれば、男には暖かい家庭が待っているでしょう。
妻と子供を想像するたびに、男が自分を本気で愛することはないと、あきらめてしまいます。
彼女は自分を守っているのかもしれません。
男の優しい言葉を聞いてしまうと、愛に夢中になってしまいそうで怖いのです。
独占したくなって、相手の家庭に踏み込んでしまうかもしれません。
結局は自分が傷ついてしまうことを知っていながら。
今の関係を保つことができれば、お互いに傷つくことなく、この先もそばにいられると考えているのでしょう。
体だけでなく本当の愛がほしい女の心情
彼とわかれてひとりになった時、思わず本音が出てしまいます。
体だけの関係ではなく、心から相手と愛し合いたいのです。