中島敦のことを知ると歌詞の内容にリンクするものを感じないでしょうか。
歌詞は、中島敦の心情を描いている様に感じます。
誰かを傷つけていたこと知った彼の心境。
おそらくかなりのショックを受け、立ち直れない程のものではないでしょうか。
信じたくないという気持ちでいっぱいになったのかもしれません。
そして、手ですくい取るようにかき集めていた欲しかったもの。
それは、安らげる場所と温かい食べ物という人間が生きる上で当たり前のものだと思います。
そんな当たり前のものすら手に入れる事ができない自分。
絶望に胸が張り裂ける思いだったのかもしれません。
汚れてしまったこの手を空へと…伸ばすのさ
出典: Reason Living/作詞:松井洋平 作曲:太田雅友
真実を知り、自分が誰かを傷つけていた。
自分のこの手は血で汚れている。
呆然として空に手をかざして、澄んでいる空の青さと自分の手を比べたのかもしれません。
澄んだ空に比べればその手はひどく汚れていたように思えたでしょう。
詩人の中原中也の作品に「汚れつちまつた悲しみに」という詩があります。
「文スト」にも中原中也が登場。
もしかするとこの歌詞はその詩を意識しているのかもしれません。
生きるという事
憧れ、抗い、生きる理由探してんだ
欲した答はもう昨日には無いだろう
新しい頁は迷う果ての自分自身が
綴ってく存在理由(レゾンデートル)
出典: Reason Living/作詞:松井洋平 作曲:太田雅友
人が生きるという事はどういう事なのでしょうか。
辛いときは、今日を生きていくための理由が必要なのかもしれません。
こうなりたい理想を持ったり、時には反抗してみたり。
そんなことを繰り返しながら人は生きていく答えを探しているのかもしれません。
また、時には過去を振り返ることもあるかもしれません。
しかし、過去を振り返っても後悔するだけ。
いくら後悔しても過去は変えれないのです。
だから人は、変えれる未来へと進んでいくしかないのです。
そうやって人生という小説を書いていく事が生きるということなのでしょう。
その小説には悩みもがき苦しんだ様子が描かれているはずです。
悩みながら人生を歩むことで、自分が生きている理由が分かるのではないでしょうか。
隠している気持ち
名前の付けられない気持ち
行間を漂う、嘘と真実の
定義なんて無意味-nonsense-さ
飼い馴らせない本能、目を逸らして逃げていたんじゃ
結局、救われない侭なんだよ
出典: Reason Living/作詞:松井洋平 作曲:太田雅友
小説などを読むときに「行間を読む」ことがあります。
これは文章にはされていない、物語の主人公や著者の気持ちを読むこと。
つまり「行間」とは、人の気持ちという意味ではないかと思います。
人の気持ちには本当の事やでたらめな事、隠している事、たくさんの事が潜んでいます。
人の気持ちに名前や意味などを求めても無いのでしょう。
つまり、名前を付けるのが難しいほど人の気持ちを考えることは難しいのです。
また自分自身の考えや性格を変えるのも難しいこと。
しかし、できないからといってそこから逃げていても何も変わらないのです。
またできなかったと落ち込んで傷つくだけ。
自分が変わらなければ、誰も助けてくれないのでしょう。
癒せない渇き、抱えているのは…誰なんだい?
出典: Reason Living/作詞:松井洋平 作曲:太田雅友
欲しくてたまらないものがあるようです。
または、なにか悩み事があるのかもしれません。
これは、欲望と不安でいっぱいになった満たされない心を表しているのでしょう。
その心を満たすための何かを欲しがっている。
それを求めているのは誰なのか?
おそらく自分であると。
自問自答している様に感じます。
人との繋がり
仰いで、糾い、生きる理由探してんだ
言葉の砂漠を彷徨っていくんだろう
向かい合う誰もが迷う果ての自分自身さ
絡まっていく悖理(パラドックス)
出典: Reason Living/作詞:松井洋平 作曲:太田雅友
顔を上げると、目の前に糸があったのかもしれません。
おそらくそれは、人との繋がりという糸。
人と繋がることが生きる答えなのかと思いはじめます。
人とのつながりの先にあるのはコミュニケーション。
小説でも、会話でも人との繋がりを深くするためには言葉を紡ぐことが必要です。
慣れないうちは、上手くできず、落ち込むこともあるでしょう。
しかし、それは誰もが同じなのです。
相手を知れば知る程、知らなかったものを知ります。
全然違う性格だと思っていた人が、自分と似たところを知ると嬉しいものです。
そうやって人と人は繋がっていきます。
そして、言葉を紡ぐ程、人との繋がりの糸は絡まり固く結びついていく。
人と人との繋がりは理屈ではない事を知っていくのでしょう。
仲間ができていく中島敦は、もしかしたらそんな風に思ったのかもしれません。