湧き上がる気持ちはごまかせない

空を見上げて一人呟いた
消えて欲しいような言葉だけ
だけど心の音だけは
この雪も奪えない

出典: silent/作詞:Fukase 作曲:Nakajin・Fukase

空を見上げて本当の気持ちを一人呟いてみます。

決して衝動的に相手に想いを伝えるなどはしません。

ただ’’一人’’で呟くというところが、報われない想いということをわかっている切なさを醸します。

しかし、街から音を奪った雪でさえ、この想いをかき消すことはできないようです。

それほど想いが強いのだという様子が伺えます。

ずっと続けばいいのにと願う瞬間はいつでしたか?

クリスマスなんて無ければ
いつも通りの何にも変わらない夜なのに
聖なる旋律は雪に溶けて
自分の鼓動が響いている
夜を泳ぐように過ごしたあの瞬間を
このスノードームみたいに閉じ込められたら
見えない星に願いを込めて
音が無くなった夜に

出典: silent/作詞:Fukase 作曲:Nakajin・Fukase

恋人や家族など大切な人と過ごすイメージのあるクリスマス

そんなイベントを一人で過ごすのは、なんでもない日に一人でいるよりも切ないものです。

クリスマスさえなければ、こんなに切ない想いをすることもなかったのにという感情が描かれています。

大切な人との時間に彩りを加えるクリスマスというイベントは、今の自分には切なさを煽るだけのようです。

クリスマスのせいで、何も考えずにただ楽しく過ごした日々のことを思い出してしまいます。

その日々をスノードームのように閉じ込められたらいいのにと歌われています。

この部分から、楽しかった時間を共有するほど想いを寄せる人との関係が近かったということがわかるでしょう。

楽しかった思い出に思いを馳せる描写の直後の最後の行のフレーズが、聴き手の心を引き込みます。

一行目は吐き捨てるような言い回しですが、ここからクリスマスは特別なものと思っていることが見て取れます。

そんな特別な瞬間に貴方といられない寂しさを描いたサビ部分です。

もう手の届かない大切な存在

体温で溶ける雪の結晶 触れることが出来ない
貴方は私の知らない時間の中にいる

出典: silent/作詞:Fukase 作曲:Nakajin・Fukase

体温で溶ける結晶は貴方との思い出とも、貴方への想いともとることができます。

二行目のフレーズから、相手は他の人のものになってしまった。または、他に好きな人ができたと推測できます。

一時期は、時間を共に過ごした愛しい人が、自分が知ることはできない世界に行ってしまったようです。

そんな存在をいつまでも恋い慕うのは寂しいことでしょう。

もう手の届かない大切な存在を思うときの切なさは、なんとも形容しがたいものです。

忘れたくても忘れられない存在

凍える身体、力を抜いたら
震えが少し治まった
でもそれは刹那 無意識のうちに
身体が強張っていく

出典: silent/作詞:Fukase 作曲:Nakajin・Fukase

膨れ上がる想いに捕らわれていたことに気づき、意識的に悩みから離れることがあると思います。

曲の主人公も想いに冷静に向き合う心を一瞬は取り戻しました。

しかし、想いを断ち切ることができず葛藤する姿が描かれています。

無意識のうちに貴方への想いが湧き上がってしまうようです。

ここでは、主人公にとって貴方が忘れたくても忘れられない存在であることがわかります。

叶わない恋だとわかっている主人公ですが、頭でわかっていてもやはり想いが断ち切れない様子です。

静寂の音が煩い

こんな真っ白な世界の中にいたら
自分だけちょっと汚れてるみたい
静寂の音が煩くて
今夜はきっと眠れない
時を奏でるように寄り添った 煌めきだとしても
目を閉じると望んでもないのに思い出してしまう
この降り積もる雪は
やっぱり貴方と見たかったな

出典: silent/作詞:Fukase 作曲:Nakajin・Fukase

雪の降る真っ白な世界では、報われない恋に思い悩む今の自分の姿は汚れているように感じると続きます。

純白の雪の美しさは、煮え切らない自分の心を際立たせ、情けない気持ちになったことを表現。

静かであればあるほど、頭は報われない恋の方へ流れてしまい、今夜はすぐに眠れそうもないと続きます。

本来、静寂は煩いものではありません。

静かであることで、意識が内側に向き、貴方のことを思い出してしまうのでしょう。

しかし、こちらの最後の2行で、この景色を貴方と共有したいという素直な気持ちを吐露します。

貴方を愛しいと感じる気持ちは、できれば忘れてしまいたいものです。

しかし、同じ時間や綺麗な景色を共有したいという気持ちは消し去ることができませんでした。

最後の行で、ふいに素直な気持ちをのぞかせるのは、聴き手の心にも訴えてくるものがあります。