「お前」に対して語りかける主人公。
この「お前」という存在は、主人公と対比された他人の存在を感じさせます。
主人公の気持ちを知らない存在としての他人という存在を指していると考えられます。
他者が知るはずもない自身の気持ちをここで吐露しているのでしょう。
2行目では椿について歌われています。
燃えるような色をした椿の赤い花びらが散っていく様子の美しさ。
花というのはいつか散ってしまうものだからこそその存在が一際美しく見えるものです。
燃える心
身体が火照るような赤、赤、赤い色
ぼくの心の様
出典: 爛漫/作詞:カネコアヤノ 作曲:カネコアヤノ
そしてこのパートでは、椿の赤色を彼女は自身の心に例えているのです。
まるで炎のようにも見えるその色を、自分の心に宿っている熱い想いと重ね合わせているのでしょう。
自分だけが知っているその宝物のような気持ち。
まさに今燃えているその想いの色を赤色という情熱の色に例えています。
「自分の心の美しさを知っているのは自分だけだ」という自負があるのでしょう。
彼女にとって、心は散っていく花のようにいつかは消えてなくなる儚さを持つもの。
いつか消えていくその炎を大切にしながら、その想いを燃やしていこうという彼女の強い意思が感じられます。
目に見えないものを大切に
守りたい気持ち
生まれてしまった そのせいで
ぼくにはできる お前を守る
出典: 爛漫/作詞:カネコアヤノ 作曲:カネコアヤノ
1行目の歌詞は、主人公がこの世界に生まれたことを後悔しているかのように聞こえる言葉です。
しかし2行目では逆にこの世界に生まれたからこそできることを言葉にしています。
それは「お前」を守ること。
前述の歌詞パートでも登場した他者の存在に対して、ここでは主人公の優しさとも呼べる想いが描かれています。
生まれたからには自分だからこそできることをしたいと思っているのでしょう。
他者に分かられたくない気持ちを持ちながらも、他者を大切にしようとする気持ちも同居していることが分かります。
白と黒の液体
珈琲にミルクが溶けてゆく
名前もない 快楽のため
出典: 爛漫/作詞:カネコアヤノ 作曲:カネコアヤノ
1行目に表れる珈琲と牛乳は、それぞれ黒と白という色を象徴しているのではないでしょうか。
はっきりとした色が混ざり合うことによって、その色は曖昧な中間色になっていきます。
このことが意味しているのは、言葉では言い表せない感情など、はっきりとしない曖昧なもののことでしょう。
2行目の歌詞はそんなものが彼女にとって心地よいということを意味していると考えられます。
主人公にとって、目に見えないものや曖昧なものこそが大切であると考えているのではないでしょうか。
未来に向かってできること
自暴自棄よりも早く走るしか
明るい部屋はないんだよ
出典: 爛漫/作詞:カネコアヤノ 作曲:カネコアヤノ
この歌詞パートが表しているのは、人生において未来を明るくするための方法です。
自分に対しての憤りや失望に苛まれたとして、それに飲み込まれないようにするために私たちがするべきこと。
それは今という時間を懸命に生きて、そんな自分への負の感情を思い出す暇もないくらいに生き急ぐことです。
ネガティブな感情というのは時々私たちの思考を止めてしまいます。
思い通りにいかないことで、今までの努力を諦めてしまいそうになることもあるでしょう。
しかし私たちに本当に必要なのは諦めではなく、今までの努力から導かれるこれからの未来。
努力の意味が分からなくなったとしても、走り続けることできっと明るい未来に辿り着けるはずなのです。
主人公は、むしろそれしか方法がないとさえ思っているのではないでしょうか。
自分にできることや、自分の夢に向かって今できることを懸命にやる。
そうすることでしか私たちは自分の理想へ近づくことはできないのです。
「爛漫」という言葉は何かが咲き乱れる様を言い表す際に使われる言葉。
この楽曲では主人公の心に咲き誇る想いのことを指しているのでしょう。
生き急ぐ気持ちを赤い色に例えて、進むべき道を進んでいく主人公。
そこには自分の道は自分で切り開くという強い決心が滲んでいます。
まとめ
今回歌詞をご紹介した楽曲は、カネコアヤノの「爛漫」でした。
この歌詞の言葉たちからは、その歌声にも表れているカネコアヤノの芯の強さを改めて実感させられます。
自分という存在を愛せるのは自分以外にいないとでもいうかのように自身の心を大切にする主人公。
そこには自分だけの未来に向かって突き進む、力強い後ろ姿が描かれていました。
自分の夢を手に入れるために、今できることを懸命にすること。
それこそがこの楽曲において、私たちが彼女から受け取ることのできるメッセージなのではないでしょうか。
最後に、この記事を気に入っていただけた方におすすめの他記事をご紹介します。
今回はカネコアヤノの「ぼくら花束みたいに寄り添って」と「星占いと朝」の歌詞解説記事をピックアップしました。
どちらも「爛漫」に引けを取らないほど魅力的な歌詞となっています。
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