薬師丸ひろ子が歌う『Woman”Wの悲劇より”』
収録アルバム
この曲は1984年10月にリリースされた薬師丸ひろ子さん4枚目のシングルで、アルバム『歌物語』に収録されています。
2011年3月に薬師丸ひろ子さん自身が監修したベストアルバムとしてリリースされました。
本楽曲以外にも『セーラー服と機関銃』『探偵物語』など、彼女が主演した主要映画の主題歌が多く収録されています。
デビューの頃から薬師丸ひろ子さんを知っているファンにとっては、彼女の衰えない透明感ある歌声を再び聴くことのできるアルバムです。
ファンでなくても1980年代に生きていた方なら、「あ~、この曲知ってる♪」と懐かしく思って頂けることでしょう。
もちろん当時を知らない方でも、薬師丸ひろ子さんの歌声に癒されることができるアルバムですよ!
薬師丸ひろ子さんの歌唱の特徴はナチュラルでまっすぐな声です。
余計なものを一切取り去って、純粋に生の声だけで感情を表現しています。
必要以上にビブラートをかけない歌い方をされている薬師丸さん。
実はビブラートをかけずに確かな音程でロングトーンを歌うのはかなり難しいのです。
しゃくりやタメなど、今やカラオケでも多用され注目されている歌唱法の、技術的なセンテンスに左右されていません。
素直なその声が、清純な彼女のイメージと重なって印象に残るのです。
「セーラー服と機関銃」の主題歌をメディアで初めて聴いてびっくりした方も多いのではないでしょうか。
作曲家”呉田軽穂”とは…
『Woman”Wの悲劇より”』を作曲した”呉田軽穂”が松任谷由実さんだってご存知でしたか?
”荒井由実”、”松任谷由実”の名前でも多くの楽曲を世に送りだしている松任谷由実さん。
しかしこれ以外にももう一つ、”呉田軽穂”名でも多くのアーティストに楽曲提供しているんです。
ブレッド&バター『あの頃のまま』、綾瀬はるか『マーガレット』、田原俊彦『銀河の神話』等々。
特に松田聖子さんには多くの楽曲を提供しています。
『赤いスイートピー』や『瞳はダイヤモンド』が”呉田軽穂”名義で松任谷由実さんが提供した楽曲だったって、みなさんご存知でしたか?
今回、松田聖子さんの名曲『制服』が松任谷由実さんの楽曲だったと知って感動するとともに納得♪
『Woman”Wの悲劇より”』は、『Yuming Compositions:FACES』で松任谷由実さん自身がセルフカバーしています。
薬師丸ひろ子さんが歌ったバージョンと聴き比べてもおもしろいですね!
著名なアーティストが別名で楽曲を提供する場面は良くあります。
でもいったいなぜ、わざわざ別名を使うのでしょうか。
営業的な問題や、著作権などの法律的な面はわかりません…。
が、きっとこれはアーティストがイメージを大事にしているためではないかと考えられます。
世に知れた名前には、必然的にアーティストとしてのイメージがついてきます。
松任谷由実さんの作品から受ける、独特な情緒や本人のキャラクターなどがそれです。
この楽曲にも松田聖子さんの楽曲にしても、よく聴けば典型的なユーミン節だとわかります。
しかし、歌唱するシンガーにもそれぞれにキャラクターがあるので、楽曲提供するときに配慮したのではないでしょうか。
楽曲提供者は、表現者のイメージを優先して自分のキャラクターや印象が邪魔しないように計らったと思えるのです。
アーチストとしての自分と、クリエイターとしての自分を区別する意識があるのかもしれません。
なぜ”アイドル史上屈指の名作”と言われているのでしょう?
音が取りづらく難しい名曲
音楽評論家のスージー鈴木さんが次のように語っています。
この曲の名曲性として、ずっと「一音分浮いている」ナインス(9th)を使用した不安定で独創的なサビのメロディと、本編のコード Cm からサビは色彩が変わるように A♭ コードになる「時の河転調」の2点を挙げている。浮遊感のある、歌いにくい、〔良い意味で〕変態的なサビの音程を少しの狂いもなく、澄んだ高音で歌い上げる歌手・薬師丸の実力も評価している
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Woman_"Wの悲劇"より
スージー鈴木さんのお話は少々専門的ではありますが…。
これを簡単に要約すると、音がとりづらく変化の多い曲で歌うのは難しいけれど、それ故に聴くものの記憶に残る曲。
そして、こんな難しい曲を少しの狂いもなく澄んだ高音で歌い上げる薬師丸ひろ子さんはすばらしい!
と、こんな感じでしょうか。
まるで、絶対音感でも持っているような狂いのない音程で歌う薬師丸ひろ子さん。
天性の音感には専門家たちも驚いているようです。
哀愁を帯びたピアノのアルペジオのイントロから、曲の世界に引き込まれます。
そして、歌い出しの音がまた難しい音程です。
各フレーズの末尾に来るロングトーンを音程の振れもなく歌いこなす姿には、正直ため息がでます。
サビに入る前の浮いたような音は最高難度です。
そして、サビ。
感情豊かに歌い上げますが、ありがちなタメに頼ることなくリズムの音符の通りにストレートに表現しています。
薬師丸ひろ子さんの魅力はここにありますね。
数々のアーティストがカバーした
それだけの名曲だからこそ、中森明菜さんや平井堅さんなど多くのアーティストがカバーしているのでしょう。
実際に自分で歌ってみると、この曲を歌う難しさが実感できます。JOYSOUND、DAMどちらの端末でも配信されているようです。
ぜひカラオケに行く機会があったら歌ってみましょう♪薬師丸ひろ子さんの歌唱力の高さを実感できますよ!
カバーしているのは、みんな実力派のたぐいまれな歌唱力を持っているアーティストばかりです。
メロディーの美しさ、歌詞に込められた情感、並みの歌唱力では歌いこなせないのです。
こういったエピソードからも、薬師丸さんや本楽曲がいかに素晴らしいかがわかるでしょう。
映画『Wの悲劇』
ここで少し薬師丸ひろ子さんが主演の映画『Wの悲劇』についてご紹介しましょう。
先にも紹介しましたが、『Wの悲劇』は1984年12月に公開された映画です。今にして思えば共演の俳優さん達の顔ぶれは錚々たるものですね。
この映画は、日本アカデミー賞優秀作品賞はじめ数々の賞を受賞し薬師丸ひろ子さんの代表作と言ってもいいくらい、今見てもとっても面白い映画です。
また、この作品を最後に薬師丸ひろ子さんは角川春樹事務所から独立。本当の意味で大人の女優さんに成長していきます。
女優として開眼した薬師丸ひろ子さん
監督 澤井信一郎
脚本 荒井晴彦、澤井信一郎
原作 夏樹静子『Wの悲劇』
製作 角川春樹
出演者
薬師丸ひろ子
三田佳子
世良公則
高木美保
三田村邦彦
仲谷昇
蜷川幸雄
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Wの悲劇_(映画)