イラストの世界に坂口有望が入ってしまった、そんな雰囲気のMVですね。
「メッセージ」「落書き」といった歌詞が登場すると、イラストの中にも「3 3 4 1」の文字が登場。
この数字がなにかのメッセージであることを想像させます。
それ以外にも部屋の背景などに「3 3 4 1」が登場していますね。
それから、文房具が登場するシーンからは学校生活が連想できます。
歌の主人公は、彼女同様に学生生活を送る年頃の子なのでしょう。
笑顔を見せて彼女は楽器を奏で歌っていますが、最後は涙がこぼれてきてしまいます。
曲調自体も決して悲しいものではありません。でもホロリと涙がこぼれてくる。
そんな様子からは、いつもは楽しく過ごしているけど、ふとしたときに思い出して泣いてしまう。
そんな出来事をMVで表現しているのではないかと思いました。
歌詞についてはこの後詳しくみていきますが、この楽曲は大事な友人との別れを歌っているように感じます。
このMVには友人らしき人物は登場しないのですが……。
「みんなのうた」でオンエアされているアニメーションは、女の子2人の物語として描かれているんですね。
番組での映像の方が、より歌詞を具体的にストーリー仕立てで表現しています。
MVを観てもっと歌詞の意味を知りたいと感じたら、ぜひ「みんなのうた」をご覧ください!
歌詞を紐解く
「みんなのうた」で放送しているパートの歌詞を書き起こしてみました。
そこから見えてくる歌詞の世界を解説していこうと思います。
大切な友人との思い出と別れ
付箋に書いてくれたメッセージ読んだよ
君の丸文字で前を向けたよ
ありがとうとか そんなんじゃないけど
会いたくなかった
さよならが言えなくなるから
手帳に書かれていた 落書き見つけたよ
少しだけ あの日に帰れたよ
100%とか絶対じゃないけど
さみしくなかった 思い出はパソコンにうつした
離れ離れの日々だけど 毎日大事にしたいね
出典: 3 3 4 1/作詞:坂口有望 作曲:坂口有望
付箋のメッセージや手帳の落書き。
MVではそこに「3 3 4 1」と書かれていましたが、実際に書かれていた文字は違ったはずです。
前向きになれるメッセージや、くすっと笑えるような落書きを書いてくれる友人がいたのでしょう。
それを見返すと、当時の楽しかった思い出が蘇るのと同時にさみしくなってしまう。
だから、大切な友人との思い出には「3 3 4 1」=さみしい気持ちがつきまとうのです。
主人公の女の子はちょっと強がりなところがあるのかもしれませんね。
会うと上手にお別れができないから会いたくないと言ったり、思い出は残してあるからさみしくないと言ったり。
ちょっと強がりにもみえますが、実際に過ぎていく現実を考えると強がる気持ちも分かります。
悲しいから、さみしいからとふさぎこんでいてもいいことはありません。
自分に対して「さみしくなんてない」と虚勢を張って、自分に言い聞かせて。
そうやって、大事な友人と離れ離れになってしまった日々を楽しく過ごそうとしている。
そんな女の子の繊細な気持ちが感じられます。
あの子だったら……
やさしい人にしか やさしくできないなんて嘘つき
だってわたしは違うから
素直になれない って素直に言えない なんで私
涙が出たんだろうか
出典: 3 3 4 1/作詞:坂口有望 作曲:坂口有望
"わたし"はやさしくなんてないし、素直でもない。
そう歌っています。
やっぱりこの主人公の子は少し勝ち気で意地っ張りな性格なようですね。
そんな彼女に対して、いつも優しくしてくれるし素直にいろんなことを打ち明けてくれる友人がいたのです。
自分がやさしくなれない、素直になれない。
そう思うことがある度に、素直でやさしい友人を思い出すのかもしれません。
「あの子だったらこんな時……」と。
主人公のなかにいる友人の存在はきっととても大きいのですね。
「それぞれの日々を楽しく生きようね」と思っているのに、ふと心が彼女を求めて泣いてしまうのです。
筆者は友人関係に対して割と淡白なところがあるので、こんな風に思える友人のいる彼女が羨ましく感じます。
別々だから気がつくこと
違う道を歩いて過ごす日々のなかで
君のやさしさにまた気づけたよ
さみしくないからって
言い聞かせてるとさみしい気がする
やさしい人にしか やさしくできないなんて嘘ばっか
だってわたしは違うから
お別れの後の届かない「ありがとう」
なんでわたし涙が出たんだろうか
出典: 3 3 4 1/作詞:坂口有望 作曲:坂口有望
別れてから気づくことってたくさんあります。
一緒にいるとそれが当たり前になっているからなかなか気が付かないんですね。
主人公も、友人の存在の大きさをじわじわと身に沁みて感じているようです。
そして、素直じゃないという性格が邪魔をするのか「さみしくない」と自分に言い聞かせています。
「みんなのうた」の映像では、この2回目のサビで主人公は思い切って友人にメッセージを送っています。
勇気を出して「さみしい」と本音を伝えたのかもしれません。
すると、バイトの休憩に入った友人がメッセージを見てすぐにテレビ通話をかけてきてくれます。
さみしさでつぶれそうになっていた主人公も笑顔になって、ハッピーエンドで曲が終わります。
最初の別れのときは、素直になれず言えなかった「ありがとう」。
それが、もしかしたら離れたことで言えたのかもしれません。
ちょっと距離ができて初めて、素直な言葉が伝えられることもあります。
最初から素直に言いたいことを伝えられていたらそれが1番いいことだと思いますが、現実は難しいもの。
こんな風になんとなくちょっとうまくいかない。
「3 3 4 1」の意味って?
「3 3 4 1」は「さみしい」という意味ではないかと思います。
素直にさみしいと口にできない主人公を表現して、あえて数字にしているのかもしれません。
甘え上手なタイプの人は周りに「さみしい」「つらい」と上手に伝えられます。
でも意地っ張りだったり天の邪鬼な性格だと、なかなか口に出せないんですね。
弱く見られそうな言葉を口にするのが恥ずかしいというか、照れくさいというか……。
直接は言えないけど、誰かにさみしい気持ちを気づいて欲しい。
大事な友人にだけは本心が届いて欲しい。
そんなメッセージが、このタイトルには込められているような気がしました。
または番組を観る子どもたちへ向けた遊び心かもしれません。
今回はオファーがあって書き下ろした楽曲です。
子どもたちが聴くことを想定したうえで、数字の意味を考えて欲しいという狙いもあるのかも。
いずれにしても、数字の並びは目を引きますね。
「どう読むのかな?」「なんの意味があるんだろう?」と気になります。
この楽曲で彼女を知ったという人の記憶にも深く残る曲名となっているのではないでしょうか。