1stアルバム『D.A.N.』のトップを飾る名曲
「そろそろ時代が追いつく」とか「人類の希望」などと話題になっているD.A.N.(ダン)。
3ピースバンドとして結成されたのが2014年夏。もういつブレイクしてもおかしくない状況です。
音楽のトレンドに敏感なアナタなら早めに押さえておきたいところ。
そんなときにとっかかりになるのが2016年4月にリリースされた1stアルバム『D.A.N.』。
このアルバムのオープニングを飾るのが「Zidane」(ジダン)です。
MVを見てみよう♪
まず曲の構成がオリジナリティにあふれています。
一応「イントロ→歌→間奏→歌→アウトロ」という一般的な形にはなっているんです。
でもイントロが約1分、間奏が約30秒、コーラスを含むアウトロが約1分半を占めています。
全体で4分あまりの楽曲なのに歌が1分ほどしかないんですね。
歌詞もミニマル
さらに「Zidane」をよく聴いてみると「何か同じことを歌っている」とわかるでしょう。
歌の構成としては「1番→2番」みたいな形になっていますが、歌詞の内容はそうじゃないんです。
D.A.N.はメロウなミニマルミュージックをコンセプトとして掲げています。
サウンド面については後ほど触れますが、歌詞にもこのコンセプトが反映されているんですね。
つまり歌詞もミニマル=「最小限の同じパターンが反復されている」ということ。
この言葉少なに展開する「Zidane」の歌詞の世界を(大胆にも)深追いしてみましょう。
4行の歌詞を解説
「Zidane」の歌詞にはわずか4つのフレーズしか登場しません。
この4つのフレーズが1つのパターンとなっているわけです。
そしていわゆる1番の部分で2回、2番の部分で1回、このパターンが繰り返されるだけ。
普通の歌モノみたいに、提示された世界が展開して結末はどうなる?といったストーリーはなし。
いやはや実験的ですね。
まずはその問題の4つのフレーズから見ていきましょう。
4つのフレーズ
幸いにまともにあきらめた
ありふれたロマンスを
水際で溺れてるマーメイド
踊りを忘れたレイディ
出典: Zidane/作詞:Daigo Sakuragi 作曲:D.A.N.
本当にこれだけなんですよ。「言葉少な」にも程がありますよね。
何気なく聴いていると普通のラブソングみたいに盛り上がってオチがある感じもするんですが。
それは櫻木大悟さんによる特徴的なファルセットボイスもサウンドとして溶け込んでいるから。
これに尽きると考えられます。
どういうことかというと、歌詞の内容にはあまり意味がない。
それよりも楽器のひとつとしての歌声に起承転結がある。そういう意味。
ただこれはサウンド面の話になりますので、先に歌詞の意味について考えてみましょう。
登場人物は女性
メタファーだらけの抽象的な歌詞が魅力的なD.A.N.ですが、まずは素直に解釈してみます。
登場人物は「マーメイド(人魚)=レイディ」すなわち女性ですね。
人魚は伝説や神話など空想上の生き物ですが、マーメイドは女性の人魚。
同じ人魚でも男性あるいは性別を問わないときはマーマンと呼ぶそう。
ありふれたロマンス
人魚姫の話はアンデルセンの不朽の名作として有名で、しばしば「悲劇(悲恋)」や「叶わぬ恋」の形容詞となっているが、原作では上記のように人魚姫が王子と(本来彼女の恋敵になる)花嫁に祝福し、新しい人生を歩むという比較的前向きな終わり方である。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/人魚姫
アンデルセン童話の「人魚姫」といえばいわゆる身分違いの悲しい恋の物語ですよね。
ディズニー映画の『リトル・マーメイド』やジブリの『崖の上のポニョ』は結末が……ですが。
ただ人魚が忘れるのは「泳ぎ」であって「踊り」ではないかも。
「踊りを忘れたレイディ」だなんて、ひねりの利いた名言ですね。
ただ「ありふれたロマンス」とはどのようなものなのか?は具体的に提示されていません。
でも「あきらめた」のが「幸い」であり「まとも」だという話。
人魚と王子みたいに何らかの身分違いの恋を表しているのかもしれません。