本格的なソロ活動をスタート!
一輪草に想いを託した山本彩
NMB48を卒業した“さや姉”こと山本彩が本格的なソロ活動をスタートしました。
バンドを従えて自らギターを弾き、ライブも積極的に行っています。
シンガーソングライターでもある彼女が想いを託したのは、一輪草という小さな花でした。
グループを卒業して新たなスタートを切るのに相応しい曲のタイトルは「イチリンソウ」。
切なさの中にも力強さを感じさせる素敵な曲のMVを見ていきましょう。
ショートカットとギブソン・レスポール
ヘアスタイルとギターが示すものは?
カーテン越しの柔らかい光に包まれた室内でマイクに向かう山本彩。
ショートカットにしたヘアスタイルからは本格的にソロ活動に臨む覚悟が伝わってきます。
彼女の肩にかかっているのはパワフルな音で昔からロックミュージシャンに人気のギブソン・レスポールです。
小柄な女の子が使うには少々重たいギターですが、山本彩は『自分の音楽のルーツはロック』と語っています。
切ないイメージの曲「イチリンソウ」に敢えてこのギターを選んだのは、彼女のこだわりなのでしょう。
後ろに見えるアンプはレスポールと相性のいいマーシャルで、まさにロックのライブでよく見る組み合わせです。
アーティストとしての矜持もこのギターとアンプのセッティングに表れているように思います。
AKBやNMBなどのアイドルグループには色々な才能に恵まれた人たちがいるでしょう。
その中にギターが大好きでアーティストの素質を持つ彼女がいたのは音楽ファンにとっても幸運なことです。
「365日の紙飛行機」でアコースティックギターを弾きながら歌う姿には、新鮮な驚きがありました。
この曲で彼女が進むべき道は、よりはっきりと定まったのではないでしょうか。
山本彩が本当にやりたかったことが「イチリンソウ」のメロディーと共に始まったのです。
可憐な雰囲気の山本彩
冷たい床に差す春の光
MVは冷たく硬い感じがする床を手持ちのカメラが写すところから始まります。
床に反射しているのは光が差し込む窓で、寒い冬に春の光が差してきたところを表現しているのかもしれません。
移動するカメラは足元から山本彩の姿に迫ります。
黒っぽい靴と赤いワンピースの彼女が構えているのは先ほど紹介したギブソンのレスポールです。
全体的に白っぽい霞がかかったような映像の中に黒・赤、そしてサンバーストのカラーが美しいギター。
ショートカットにした彼女の全身が写ったところでキーボードと同時に歌が始まります。
最初はギターを弾かずにボーカルから入って、Bメロに入ったところでギターを弾き始めるのです。
髪を切った山本彩からは可憐な雰囲気が伝わってきます。
細くて綺麗な首は野に咲く花の茎のようで、美しい姿はまさに春に咲く一輪草のようです。
ギターを持って歌う彼女はどこか悲しげで、その澄んだ声には切ない響きがあるように感じます。
季節が変わる様子を表現したオープニングと、髪を切ってイメージを変え本格的なソロ活動に挑む山本彩。
静かな歌い出しから徐々に盛り上がっていくメロディーは、切なさの中に力強さも漂わせています。
花が咲くように広がっていく音
山本彩を支えるバンドとストリングス
バンドの他のメンバーから少しだけ離れて歌う姿はソロアーティストとしての彼女を象徴しているようです。
Bメロに入る直前、途中から入ったドラムが心地よく鳴るところがアップで映し出されます。
そしてサビのメロディーに入る前、徐々に盛り上がるところで今度はキーボードのアップが映ります。
続いてシンプルで短いけれど印象的なフレーズを弾くもう一本のギターがアップに。
曲の節目節目で重要なパートを担当する楽器をアップにすることでMVにアクセントをつけているのでしょう。
ひとりで歌う山本彩をバンドのメンバーがバックアップする暖かさも感じられる演出になっています。
さらにサビに入るとストリングスの人たちも画面に入って、メロディーと共に開放されるような感覚があります。
彼女を応援する人たちがたくさん増えたようでホッとするような気持になるのです。
繊細で優しい弦楽器の音には心を癒やすような効果があるように思います。
しかもその豊かな音の中には決意を後押しするような力強さも感じられるのです。
歌い始めた彼女をバンドのメンバーがそれぞれの楽器でサポートして、ストリングスも加わって後押しする。
音に厚みが出て広がっていく様子は、春になって一斉に花が咲き始めて美しい景色が広がる様子にも似ています。
映像の白っぽいトーンは変わりませんが、これからソロアーティストとして花開く姿も想像できるMVです。
イチリンソウが春色に染めていく?
インサートされた街の風景
MVには途中に何度か街の風景がインサートされます。
最初は僅かに波打つ水面、次は横断歩道を渡る女性の足元。
ブーツを履いてコートを着たその装いから、まだ寒い季節なのが分かります。
続いて高架の上を走る電車には緑のライン。
最後に水たまりに映るのは葉を落とした街路樹で、水面にはポツンと波紋が。
街を歩く人にはいつもの何気ない風景かもしれません。
だけど、ソロアーティストとして生きていく決断をした山本彩には普段見ている風景も違って見えるでしょう。
新しい季節に新たな生活を始めた人にとっても、ごく普通の街の風景が新鮮に見えるかもしれないのです。
インサートされた風景にはまだ冬の名残がありますが、雨が止んだ街にはやがて陽射しが戻るのでしょう。
春の訪れはいつも穏やかでゆっくりしているものだと思います。
気が付けばあちこちに少しずつ春の兆しが訪れ、確実に季節が変わりつつあることに気づかせてくれる。
柔らかい光が差し込む室内と、雨が止んだばかりの冬の終わりの街。
静かに歌い出した「イチリンソウ」は、街の風景もやがて春の色へと染めていくのではないでしょうか。
白っぽいトーンの中で歌う山本彩がソロとして花開いた時に、画面も色鮮やかに変わるのかもしれません。