破棄しても何も変わらない人生
価値のない私

生きてるだけ無駄だって
私の事なんて見放してよ
どうせ夢の一つもないから
いくらでも替えが利くでしょ
スクラップみたいになってさ
こんな状態の私なんて
そのまま破棄だよ
出典: かくれんぼっち/作詞:ぷす 作曲:ぷす
曲の冒頭から語られるのは、これ以上ないほどに悲しみを帯びた主人公の感情でした。
毎日を生きることに意味を見出せず、自分などいなくても何も変わらないと絶望している様子の主人公。
決して1人きりではなく、声をかけてくれる人がいないわけではありません。
しかし、状況が変わることはないと諦めてしまっているために、差し伸べられた手を掴めずにいるのです。
思えば未来で何をしたいのか、どんな自分になっていたいのかといった「夢」を描いたことはありません。
「どうせ無理だ」という思いが先行し、明るい未来を描くことができないのです。
取り得がないと自信を失った主人公に、社会は希望を与え続けてはくれません。
それどころか、同じ人間ならば自信を持った人の方がいい、といわんばかりにチャンスを奪い続けるのです。
その結果、まるで産業廃棄物のように小さくまとめられ、他の人と一緒くたに隅へと追いやられる主人公。
その中にどんな可能性が埋もれていようとも、目を向ける人は誰もいません。
枯れた花に自分を重ねて
目新しい環境も来ない
代わり映えしない景色で
ずっと同じ花を見ている
その枯れた花を
世渡り上手の君の姿 輝かしくて
ドジを踏んでばかりの私とは違うね
出典: かくれんぼっち/作詞:ぷす 作曲:ぷす
自分の未来を諦めてしまっている主人公の目には、新しい風景が飛び込んでくることはありません。
いつも変わらない日々の中で、淡々と同じ毎日を繰り返すだけ。
その日々が楽しいのか苦しいのかを考えることも、生きる意味を見出すこともないのです。
主人公が見つめているのは、もう既に命を失った1輪の花。
鮮やかに咲いていたはずの花びらはもう、セピア色にくすんでしまっています。
それは、まるで自分には何もないと諦めてしまった主人公を表しているかのよう。
もう二度と水を吸うことのない花は、主人公が再び立ち上がることはないと示しているかのようです。
辺りを見渡せば、主人公を取り囲むかのように色鮮やかな花々が咲いていることに気がつきます。
同じ場所にいるとは思えないほど、生きる希望に溢れた花々……。
色とりどりの花を見つめれば見つめるほどに、自分の醜さが際立って感じられます。
どうせ何もできないと諦めて
助けなどいらない
生きてるだけ無駄だって
私の事なんて見放してよ
どうせ邪魔になって
迷惑ばかりかけてしまうからね
出典: かくれんぼっち/作詞:ぷす 作曲:ぷす
自分を卑下し、生きる希望など何もないかのように憂鬱な日々を過ごしている主人公。
何かに挑戦しようとしても、それが実を結ぶことなどないように思えます。
それならば誰にも気がつかれないまま、ひっそりと毎日をやり過ごしていけたらいい……。
主人公にとって、もはや他人だけでなく自分でさえも「いらない存在」になってしまっているのです。
しかし、生きている限りは人々が主人公から目を離すことはありません。
1歩外に出れば、その行動の全てを見られているといっても過言ではないでしょう。
決して1人になることはできない世界の中で、いかに目立たないように生きていくか……。
そんな悲しい疑問の答えを、主人公は求め続けているのです。
後にも先にも進めずにいる主人公
どんな救いの言葉も聞き飽きたから
耳塞いでさ
花びらたちと共に散って
楽になりたいよ
ずっと かくれんぼっち
出典: かくれんぼっち/作詞:ぷす 作曲:ぷす
「ひとりぼっち」と「かくれんぼ」を合わせた言葉である「かくれんぼっち」。
他人の目から隠れながら、1人になれる場所を探している主人公を表した言葉です。
華々しく人生を終えて、まるでそこに何もなかったかのように消えることができたら……。
そう願っていても、枯れてそこに残ったままの花が消えることはありません。
それは、いつになっても希望を持てず、そこに立ち止まったままの主人公の姿。
進むことも、消えることもできずに、どうしようもないままの人生を表しているかのようです。
自分に自信がないあまりに、差し伸べられた手を振り払ってきた主人公。
本当は掴みたかったその手を、強がりの心が邪魔してしまっていたのです。