現状や苦悩を打ち砕くかのようにかき鳴らされるナンバー「!」(あまだれ)。
インディーズ時代にリリースされた2ndミニアルバム『継ぐ』(2017)に収録されています。
張り詰めた空気を纏いながらも、琴線を震わせる美しいメロディ。
寺口の全てを包み込むかのような温かな歌声と鮮明に聴こえる息遣いが、歌詞を引き立てます。
今を生きる人々へ
貴方にとって価値の無いと思ってる物でも
誰かにとって喉から手の出る物である様に
或る人にとって貴方が価値の無い人でも
誰かにとって大切な存在になり得るのさ
出典: !/作詞:福島由也 作曲:福島由也
生きるということの美しさ。
「!」にはそんなメッセージが込もっています。
誰もが1回目の人生、そう簡単に日々を戦い抜いていくことはできません。
ときには「なぜ自分ばかりが?」「なぜ生きているんだろう?」と、その命の意味に悩むこともあるでしょう。
それでも無駄な命などひとつもなく、互いに影響し合いながら生きているのだと歌っています。
第2位:Memento mori
真骨頂といえるメッセージソング
「Memento mori」(2019)はメジャー2枚目のシングルです。
タイトルの意味は“死を想え”。
Ivy to Fraudulent Game以外でも、あらゆる作品に名付けられることが多い言葉です。
曲そのものが生きているかのような尊厳さに満ちたメロディ。
そのメロディに、爆発的なエモーショナルさを注ぎ込むギター。
脈を打つように、生きていることを確かめるように刻まれるリズムワーク。
そして生の限りを尽すかのような、鬼気迫る思いが伝わってくる渾身のヴォーカリゼーション。
シンプルなアレンジでありながら、歌、歌詞、アンサンブルのひとつひとつが強烈な存在感を放っています。
死があるから、今が輝く
生きる為生きていたってさ
いつかは死んでしまうから
あらゆる不安や畏怖の意味の無さに
笑ってみせるがいい
出典: Memento mori/作詞:福島由也 作曲:福島由也
「Memento mori」というタイトルの如く、“死”をテーマに歌詞を展開していきます。
この曲が伝えたいメッセージは、決してネガティブなものではありません。
死があるからこそ、今この瞬間の生が輝く。
その尊さを描いています。
実に壮麗な楽曲です。
第1位:賀歌
荘厳なる珠玉のバラード
メジャー2枚目のアルバム『完全が無い』(2019)の最後を締め括るのがこの「賀歌」(がか)です。
“名曲”という言葉では簡単に片付けられないほど、全てにおいて圧巻。
これまで培ってきた経験やテクニック、そして人生を注ぎ込んだかのような寺口の凄絶なボーカル。
その歌声を、見果てぬまでの壮大なスケールで彩っていくアンサンブル。
緩やかに、そして確実に浸透していく幸福に満ちたメロディは、聴いているだけで心が洗われます。
命を祝福する歌
出会うべくして出会えたのさ
いつかは貴方も消えてしまうけど
出会うべくして出会えたこと
全てに意味があり
全ては灰になる
今日を生きるよ
出典: 賀歌/作詞:福島由也 作曲:福島由也
生きることそのものを肯定し、祝福するかのような歌詞です。
今生きているということも、いつか死ぬということも。
泣きたくなるほど嬉しいことも、笑いたくなるほど悲しいことも。
その全てが人生を形作るのだと歌っています。