あの時の記憶を消してしまいたい主人公。
思い出さないように、一生懸命記憶のフタを閉じようとします。
それでもそんな気持ちとは裏腹に鮮明に、思い出すその時の記憶。
おそらく主人公は君の気持ちを感覚的には理解していたのでしょう。
しかしそれを見て見ぬふりをしていた。
君も別に相談をしたり、話を聞いてもらおうなんて考えていなかったでしょう。
それでも、誰かにこの鬱屈とした気持ちを理解してほしい。
そんな願望はあったかもしれません。
六十八夜
出典: 透明エレジー/作詞:n-buna 作曲:n-buna
上記の言葉は、あまり聞きなれない言葉です。
よく似た言葉で八十八夜というものが連想されます。
八十八夜は春と夏の変わり目の時期の事を指しており、大体5月頭の時期が八十八夜と言われているようです。
この時期は茶摘みが盛んに行われます。
しかし、歌詞に出ている数字は八十八夜より少ない。
八十八夜の時に茶を摘み取るのに、それより前の時に摘み取ってしまうということでしょうか。
前の歌詞の流れも考えると、時期が早すぎるというイメージ。
最後の歌詞からしても君の命が摘み取られてしまったという解釈ができます。
君と主人公の関係性
最上階から見た景色 落ちる影が ずっと ずっと
「ずっと僕らの声も、もう聞こえてはいないでしょう?」
言葉の錆びてく音 霧のかかる心の奥底
朝焼け色の中に 君は一人 また透けてくだけ
出典: 透明エレジー/作詞:n-buna 作曲:n-buna
1番のサビの解釈も合わせて上記の歌詞をみてみると、君は屋上から飛び降りてしまったのでしょう。
誰でも将来のことを考えたり、理不尽な目に遭うと暗い気持ちになってしまいます。
パッと切り替えることも大事ですが、そう簡単に割り切ることが出来ない人も。
人間の道徳観や何気ない一言など、暗い気持ちになる原因はたくさんあります。
考え方によっては、その全てがパッと割り切れない場合もあるでしょう。
実際に君が命を絶ってしまった理由は分かりません。
しかしそんな言葉にしがたい感情もあったのではないかと想像できます。
そして、その君の死は主人公に強烈な印象を残すこととなりました。
残された主人公は
鼓動の音は一つ限り
閉め切った部屋の中で響く
言葉も出ない 出ないような 僕は確かにここにいたんです
君を 見ない 見ないなんて 今も染み付いて離れないよ
もう痛い 痛い容態 耳の奥で まだあの日の言葉が
あぁこれでお別れなんて そんな 君の声も
出典: 透明エレジー/作詞:n-buna 作曲:n-buna
人の死を目の当たりにするのは強烈なものです。
それも親しかった人の死だとすれば心へのダメージは計り知れません。
何度も何度も屋上の時の出来事が無意識に繰り返されます。
最初の頃はぼやけて、君が死んでしまったという結果しか見られなかった主人公。
しかし何回も繰り返すうちに、その時の記憶や気持ちが鮮明になってきます。
飛び降りる直前に、君は何かを主人公に伝えている様子。
その時の言葉が何回も頭の中をグルグルと廻ります。
どんな言葉は不明ですが、主人公の心を締め付けるには十分な言葉だったのでしょう。
最期になったきっかけは
ねぇ
あの日願った言葉がもう 耳に染み込んじゃって
気持ちも切って「バイバイバイ」
何を欲しがったんだっけ?
塵(ちり)も積もって 何年間 僕が 君が 僕が捨てちゃったんです
まだ あぁ
出典: 透明エレジー/作詞:n-buna 作曲:n-buna
屋上の時のことばかりが頭に浮かぶ主人公。
どうして君は飛び降りてしまったのか。
君が命を捨ててしまうようなきっかけはなんだったのか、グルグルと考えを巡らせます。
そしてある時、主人公はその答えを見つけたのでしょう。
今度はどのきっかけとなったであろう日を思い浮かべます。
きっかけであろう日も、ひょっとしたら些細な出来事だったのかもしれません。
歌詞1~3行目を見ると色々な解釈が思い浮かびます。
具体的なものを挙げると告白されて断ったとか、ちょっとした喧嘩。
何にせよ、君と主人公の中で行き違いがあったと推測できます。
それもちゃんと話し合えば解消されるような出来事だったということも考えられます。
しかし、何だかお互いに言いづらく何年も放置してしまった。
おそらく主人公が思い当たる出来事が全てではありません。
君が命を落とす原因になってしまった些細な1つと考えるのが妥当でしょう。
しかし、主人公からしたら自分のせいで君が亡くなってしまったという考えになってしまいます。
あの時にこうしていれば…。
そんな取返しのつかない後悔がどんどん押し寄せてきます。
本当の気持ち
心の暗い暗い奥の 底にほんとは隠してたんです
今じゃ遅い 遅いなんて 今更知っちゃったんだ
あぁ もう 嫌い 嫌いなんだ 君も 僕も 全部 全部 全部
「透けて消えてなくなって」
出典: 透明エレジー/作詞:n-buna 作曲:n-buna
後に残してしまった問題は時間が経つにつれて大きく膨れ上がってきます。
おそらく命を絶ってしまった君には、そんな小さな問題がたくさん溜まっていたのでしょう。
その小さな原因の1つには主人公との関係性も含まれています。
そして君が抱えていた小さな問題の1つが分かった主人公。
相手がこの世からいなくなってから、後悔やどうしようもない悲しい気持ちが込みあがってきます。
今さら分かってしまっても手遅れです。
君はもういないのですから。
それでも君に謝りたいというのが主人公の本音。
自己満足だと分かっていても、やり場のない気持ちを少しでも和らげるために謝りたいのです。
君への想い
言葉も出ない 出ないような 声が確かに響いてたんです
今も嫌い 嫌いなんて 言葉近すぎて聞こえないや
もう痛い 痛い容態 唄も 色も まだ六十八夜の
そう これでお別れなんだ 僕が 君に 送る
響く夜空に溶ける 透明哀歌
出典: 透明エレジー/作詞:n-buna 作曲:n-buna