恋の終わり

「別れよう」の一言で
終われてしまう今が 残酷で苦しい

出典: 追憶の光/作詞:山本彩 作曲:山本彩

この歌詞は、「私」と別れることが「あなた」の中でもう決定していることを表しています。

「あなた」がまだ別れることを迷っていたなら、まず「私」と話し合いをするはずです。

何か不満があったとしても、お互いに歩み寄れないか相談するものではないでしょうか。

ですが実際にはなんの話し合いもなく、たった一言で2人の関係を終わらせようとしていました。

話し合いの余地もないということは、もう「あなた」の中では終わっているからにほかなりません。

「あなた」の心の中に「私」がまったくいないことを、改めて突き付けられました。

わかってはいたことですが、改めて態度で示されるとより胸が痛くなります。

過去に消化できた理由

私の薬指 絡みついた愛で
満たされていた 痛みも溶けた
寂しいほどあなたを感じたから

出典: 追憶の光/作詞:山本彩 作曲:山本彩

ここでいう「薬指」とは、結婚の象徴として使われていました。

1行目の歌詞は、結婚指輪の代わりに「あなた」からの深い愛情があったことを表しています。

確かに夢見ていた結婚には至りませんでした。

ですが結婚指輪に匹敵するほどの愛を、すでに過去の自分が貰っていたことに改めて気付いたのです。

その事実が、「私」の悲しみを優しく慰めてくれました。

タイトルになっている「追憶の光」とは、「あなた」から貰った愛を意味しています。

たとえ今の「あなた」の中に「私」への愛がなくとも、愛されていた記憶は「私」の中に残り続けるのです。

失ってから思い知る

日常の大切さ

儚いまま 時計の針は動き出していくけど

出典: 追憶の光/作詞:山本彩 作曲:山本彩

「あなた」との関係が終わっても、自分の人生は続いていくことを意識し始めました。

終始「あなた」を中心に思考していた「私」が、喪失感を抱えながらもを向き始めます。

後になってわかったって遅いけど
大丈夫 元の二人に戻るだけだよ
ただそれだけなんだ

出典: 追憶の光/作詞:山本彩 作曲:山本彩

今まで沢山の愛情を貰っていたことに気付けたのが、まさに別れる瞬間でした。

順調に交際しているときには、「私」はその大切さに気付きもしなかったのです。

ですが今さら気づいたところで、以前の2人に戻れるわけもありません。

3行目の歌詞は、同じニュアンスを繰り返すことで必死に言い聞かせているさまを表していました。

綺麗な言葉で終わらせる理由

「愛してた、さようなら」
「とても幸せでした」「本当ありがとう」
最後くらいはいい人で終わらせて

出典: 追憶の光/作詞:山本彩 作曲:山本彩

最後くらい」という表現がとても気になりませんか。

このような表現は、今まで「いい人」ではなかった人間が思うことです。

今まで理不尽に「あなた」を責めていた人がこう思うなら納得できますが、そんなはずはありません。

なぜなら、「私」はデート中につまらなさそうにしている「あなた」でさえ責めない人です。

それほど自己主張が小さい人ともいえます。

そんな人が、今まで「あなた」を理不尽に責めていたとは到底思えません。

ではなぜ「私」は、別れの際に綺麗な言葉だけを「あなた」に告げたのでしょうか。

それは「私」が「あなた」から多くの愛を貰っていたことに気付いたからです。

もう「あなた」の中に「私」が存在しない以上、自分にできることはそれしかないと思ったのでしょう。

今まで貰った沢山の愛への感謝として、「私」は綺麗な別れ方をしたかったのです。

相手からの愛情を意識していないということは、それが当たり前になっていることを意味します。

順調に交際していた頃は、「あなた」からの愛に感謝の言葉を言ったこともないのかもしれません。

ですが「私」は別れの間際になってようやく、それが決して当たり前ではないことに思い至りました。

だからこそ、今までは言ってこなかった感謝を最後だけでも伝えたかったのではないでしょうか。

これからの人生