言葉とサウンドが一体になった「Awesome City Tracks 3」
2016年6月22日にリリースされたAwesome City Club(以下ACC)の3rdアルバム「Awesome City Tracks 3」。
このアルバムはバンドに大きな変化をもたらした作品となっています。
彼らのメジャーデビューは2015年の4月8日。
約1年の間に3枚もアルバムをリリースしたというのは驚異的ですね。
デビューする前から、彼らの制作のペースには目を見張るものがありました。
注目を集めたのは楽曲のクオリティもあるのですが、何より有無を言わさない制作の勢いではないでしょうか。
「とにかく曲を作って聴いてもらおう」というそのスタンスには、クリエイター魂のようなものを感じさせられますね。
言葉に向き合う姿勢の変化
バンドの華、PORINはこの作品で「初めて自分の言葉で自分の気持ちを書いた」と語っています。
それまではバンドの描く女の子像に応えようとする自分がいたとのこと。
この頃を境に、彼女は自分の素の部分を主張するようになったといいます。
また、もう一人のヴォーカル、atagiも「言葉でちゃんと人の心を揺さぶれるようになりたい」と発言。
これは、踊れる音楽というのはサウンドと言葉が一体になっていると思ったことからでした。
このように、バンドのメインを張る2人が言葉に対する意識の変化を見せた「Awesome City Tracks3」。
今回はこのアルバムに収録された「Don't Think, Feel」からその魅力に迫っていきましょう!
「Don't Think, Feel」はクラウドファンディング限定リリース
「Don't Think, Feel」はアルバムに先駆けて、クラウドファンディングでの限定シングルとしてもリリースされました。
クラウドファンディングで作品をリリースするというのは非常に興味深い試みですね。
バンドのセンセーショナルなイメージによく合う「時代に則った」印象を受けます。
音楽不況を逆手に取って
これは近年の音楽不況を逆手に取ったもの。
タイアップがつかないシングルを流通させることは昔と比べて難しく、そのためにバンドはこの方法を取ったとのことです。
これが非常に画期的。
もっとお金を出したいファンには、それに見合った分のリターンが用意されています。
自分がサポートした分だけ、バンドから見返りを受けることが出来るんです。
これって、普通にCDを購入するよりもずっとプレミア感がありますよね。
楽曲だけではなく戦略も大切。
これはACCの、音楽とはまた違った部分の才能を感じさせられる逸話ですね。
楽曲を考察
「Don't Think Feel」は甘い雰囲気をまとったファンクナンバー。
ファンクのドラムというとドッシリと構えたイメージですが、ユキエの叩くそれはいかにも女性的です。
繊細でしなやかなリズムは他のファンクサウンドとは一線を画し、ACCらしさとなっているのではないでしょうか。
そこに絡んでくる高音にアクセントがついたスラップ風のベースフレーズもまた耳を惹きます。
踊れる音楽の軸になるのはやはりリズム隊。
ここがクールでなければ、ダンスミュージックは成り立たないのですね。
都会的な空気感を醸し出すのは
ファンキーなリズムの中に、都会的な空気感を醸し出すのはキラキラとしたカッティングギター。
そこに沿うようなシンセストリングスも流麗で、サウンドに高級感を加えています。
そしてそのシンセの音色もBメロではポップなものに変化。
ここでメインを取るPORINの可愛らしさを引き立てています。
踊れる音楽の条件
この曲のサビのメロディはポップスとしてはあまりキャッチーとは呼べません。
甘く溶けるようなatagiの歌声も相まって、流れるように聴けるイメージになっています。
ACCの音楽は聴き入るためではなく、踊るための音楽。
流れを途切れさせないのは踊れる音楽の条件ではないでしょうか。