本来であれば、暖かい芽吹きの季節に花開く予定であった1輪の花。
通り過ぎる人は誰も目にくれないようなその花が、ふと主人公の目に留まります。
それはまるで自分自身のように、誰にも気づかれずにひっそりと花びらを開いていて……。
その花びらに雪が積もっていくたびに、自分が苦しいような気持ちになっていくのです。
咲く場所を間違え、咲く時期を間違え、その結果1人ぼっちになってしまった花。
愛する人を間違え、愛した季節を間違えた自分も、きっといずれ1人ぼっちになるのでしょう。
しかし、そこに「愛」が存在しなかったわけではありません。
例え誰にも気がついてもらえなくても、花が懸命に咲いた事実は消えないのです。
太陽のように花を照らし、雪を溶かす力はないけれど……。
ただ音もなく照らし続ける月だけが、花の、そして彼女の本心を見抜いているのです。
いつまでも繰り返すことはできない
時の移ろいは 有限みたいだ
出典: 真っ白/作詞:TOOBOE 作曲:TOOBOE
今は想いがかみ合わない2人も、以前はお互いがお互いを求め、愛し合っていました。
しかし、2人に与えられた時間はほんのわずか。
楽しくて嬉しくて、早く明日が来ればいいと願ったあの日々は、もう2度とやってくることはないのです。
まるで時間が2人の時を止めてしまったかのように、楽しかった過去から離れることができない主人公。
変わっていってしまう彼を見ながら、自分はそこに取り残されたような気分になってしまいます。
どれだけ願っても、あの日常に戻ることはできません。
今この気持ちを捨てたら、2人の関係はいよいよ終わりになる……。
そう想えば想うほど、彼の中に残る「自分への愛」を探さずにはいられません。
いつか来たる終わりの日
もう戻れない日々を想って
楽しくて笑っていた 日々はもう昔
そんな日も 束の間にまた春が来る
出典: 真っ白/作詞:TOOBOE 作曲:TOOBOE
いつか来たる別れに向かって、少しずつ進み始めている主人公。
これまでの人生の中で、きっと今が1番辛く悲しい時期のはずです。
しかし、その苦しみもこの先ずっと続くわけではありません。
主人公の辛さなどなかったかのように季節は移ろい、再び同じ季節が巡ってくるのです。
2人で見たあの景色も、1人きりでは色を失ったように暗く見えてしまう……。
そんな日々から自分をすくい上げることができるのもまた、自分なのです。
もう2人で笑い合えることがないのなら、いさぎよく別れを選ぶしかない……。
頭では分かっていても、自分から身を引く勇気が出るわけがありません。
最後の言葉だけは
大丈夫さ また会えるよ そう言っておくれ
何時か 泣かない様に
出典: 真っ白/作詞:TOOBOE 作曲:TOOBOE
もしも本当に別れの日が来てしまうのならば、せめてその時は笑顔でいよう、と心に決める主人公。
これまでに過ごしてきた想い出全てが、最後の涙で台無しになってしまうのは悲しいことです。
だからこそ、これまでにもらったどんな言葉よりも優しい言葉で送り出してほしい……。
「再会」の可能性を信じ、また前を向けるようなひと言を望んでいるのです。
これからは、主人公の涙を拭ってくれる人はいません。
それと同時に、彼の頑張りを労わってくれる存在も、これからはいなくなるのです。
お互いがどこかに「希望」を残したまま、別々の道を歩み始める今。
主人公の願いは、同時に彼の願いでもあったのです。
まだ前を向くことはできないけれど
君の笑顔が真似できない理由
君の笑い方をそっと
本気で真似てみたけど
私には理解できない
君が現れただけ
出典: 真っ白/作詞:TOOBOE 作曲:TOOBOE
君が最後に見せてくれた、心から笑うようなスッキリとした笑顔。
主人公との関係を穏やかに終わらせることができた安堵感からか、自然と顔がほころんでしまったのでしょう。
さらに、彼はもうこれからやってくる「未来」を見据えているはず。
まだ立ち止まったまま、去ってゆく彼を見送ることさえできない主人公とは大違いです。
せめて最後に見せたあの笑顔を浮かべてみれば、君の気持ちがわかるかもしれない……。
そう考えたのも束の間、鏡にはぎこちない笑顔を浮かべた自分が映っているだけでした。
何回も、何回もチャレンジしてみるけれど、そのたびに彼がどんどんと恋しくなるだけ。
別れてもなお恋をし続ける主人公と、その想いの深さに心が痛みます。