今日は珍しくまだついてくる
懐かしいとはしゃぎながら部屋のドアを通り抜ける さすが幽霊
出典: 幽霊失格/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
1人で帰路につく夜道、過去に在りし日の君の存在を背後に感じる主人公。
いつもであればその気配は、帰宅するまでの間に薄れたり、無くなっていくものだったのでしょう。
けれど今日は帰宅して尚、彼女の気配を感じるようです。
きっと彼女がもし、再び自分の家に訪れたら。
お家にくるの久しぶり、いつぶりだろうね、懐かしいなあ、なんて。
そんな無邪気なことを言いながら、自分の家に上がっていくんだろう。
ふとそんなことを、主人公は考えているのでしょう。
昔いつか見たような、家に上がる彼女の背中とその向こうに広がる自宅の光景。
その景色を、なんだか今日はずいぶんはっきりと思い出せてしまうのです。
自分の中に残るのは、彼女の記憶だけじゃない
抱きしめたとき 触れなくても
ちゃんと伝わるそんな霊感
座って用を足す癖 今でもまだ直らないまま
つくづく犬みたい
出典: 幽霊失格/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
君の仕草や表情、触れ合っていた時の温もり。
主人公はまだ、それらをはっきり覚えています。
記憶の中では目の前にいる彼女。そこに手を伸ばしても、当然感触や温度は何一つ残っていません。
また家に残っている彼女の気配は、自分の記憶の中にあるものだけではありませんでした。
彼女が好きだったお菓子は、未だに見かけるとつい買ってしまいます。
布団に入って寝る時、まるで誰かが隣に居るかのように右側だけ開けて眠る癖が抜けません。
便座を上げたままだとしょっちゅう怒られたから、トイレも座って用を足すようになりました。
そんな日常生活の些細な癖や自分の振る舞いの中にも、彼女の存在が残っています。
それはまるで「待て」や「お手」を覚えさせられた、犬の行動に非常に良く似ていました。
幽霊のようで幽霊じゃないもの
幽霊なら夜中が得意、なはずなのに…
せっかくの丑三つ時なのに眠そうで
気づけばいつの間にか寝息を立ててる
まるでこの世のものとは思えない
写真にだけ写る美しさ
出典: 幽霊失格/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
幽霊ならば、午前2時の丑三つ時は一番元気なはず。
しかし主人公に付きまとう彼女の幽霊は、この時間にはいつも眠そうな表情をしていました。
自分の夜更かしに付き合ってくれていても、いつのまにかすやすやと眠ってしまっている。
そんな彼女の姿を、これまでに何度も見てきています。
ベッドの上で、部屋のすみっこで、あるいはソファの上で。
時にスマホを握りしめたまま寝落ちている、愛しく思っていた彼女の寝顔。
その穏やかな表情は、他の誰よりも美しくて可愛い顔でした。
過去に写真を撮った彼女の寝顔の画像は、未だにスマホから消せないまま。
幽霊は写真には写らないというけれど、彼女のその表情はきちんと写ったまま残っています。
いつまでも幽霊のように纏わりついていて
分けて
悲しいことも 苦しいことも
怖いどころか嬉しいんだよ
成仏して消えるくらいなら いつまでも恨んでて
なんて言わせる 君は幽霊失格
出典: 幽霊失格/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
喜びは二倍に、悲しいことや苦しいことは半分に。
大切な人といることはそういうことなのだと、教えてくれたのが彼女でした。
相手に辛い思いをさせたくない、格好悪いところを見せたくない。
その気持ちも分かるけど、私は君がそんなところを見せてくれる方が嬉しいな。
自分にそう声をかけてくれたのが彼女でした。
彼女が幽霊として成仏するということは、自分の周りから彼女の気配がなくなるということは。
そう言ってくれた彼女のことを、いつか全て忘れてしまった時なのでしょう。
それなら彼女のことを忘れたくない。いつまでも幽霊のように、自分にまとわりついていて欲しい。
本物の幽霊なら、きっとそんなことを思わないはずです。
けれどそんなことを思わせてしまう彼女は。やはり幽霊としては失格の存在ですね。
最後に
いかがでしたか?
幽霊のように、自分に纏わりつく大事な人の気配。当然、そこには影も形もありません。
ですが幽霊と違い、その気配は自分から離れて欲しくないものでした。
大事な人との別れを経験したことがある人ならば、きっと体験したことがあるような。
そんな情景が描かれていたのではないかと思います。
OTOKAKEの関連記事もあわせてチェック!
本サイトOTOKAKEには、まだまだ皆さんに読んで頂きたい素敵な記事がたくさん。
最後に、本記事とあわせてぜひ読んで頂きたい解説をご紹介して終わりたいと思います。