知りたくないほど
知りすぎてくこと
ただ過ぎる日々に呑み込まれたの
それでもただもう一度だけ会いたくて
出典: ハルジオン/作詞:Ayase 作曲:Ayase
一行目と二行目の歌詞は、「あなた」の心が徐々に自分から離れていくことに気づいてしまったという意味です。
好きな人からの愛が少しずつなくなっていくのを間近で感じるのは、耐え難い悲しみだったでしょう。
本当は気づきたくなかったという彼女の切ない思いが印象的なフレーズです。
三行目の歌詞は「あなた」が主人公を好きではなくなった理由について描かれていました。
原作小説では、新社会人としての日々に疲弊するあまり「あなた」とすれ違っていくさまが描かれています。
主人公は美大を卒業したばかりの新社会人で、とある会社でイラストを描く仕事をしていました。
ですが描きたくもないイラストや忙しすぎる日常に、次第に摩耗していきます。
「呑み込まれた」という言葉は、その日常に彼女が押しつぶされてしまったことを表現していました。
そんなすれ違いの末に彼と別れてしまいましたが、心はまだ破局を受け入れられません。
もう傍にはいないのに
私だけが前に進めない
あなたの言葉に頷き信じた私を
一人置き去りに時間は過ぎる
見えていたはずの
未来も指の隙間をすり抜けた
出典: ハルジオン/作詞:Ayase 作曲:Ayase
一行目の歌詞は、現実が「あなた」の言った通りにはならなかったことを表しています。
彼は「私」への愛は変わらないという趣旨の言葉を告げていたのに、彼女から心が離れてしまいました。
「あなた」とこれからもずっと一緒にいるという未来を、彼女はあっという間に失ってしまいます。
ここでの「未来」という単語はあくまで「あなたとの未来」という意味で使われていました。
自分の人生というよりも、「あなた」と一緒にいることを中心に考えていたようです。
日常に押しつぶされてしまった彼女に比べて、「あなた」は順調に馴染んでいきました。
彼は「私」を置いてどんどん前へと進んでいきます。
ふっきるのは難しい
戻れない日々の欠片と
あなたの気配を
今でも探してしまうよ
まだあの日の二人に手を伸ばしてる
出典: ハルジオン/作詞:Ayase 作曲:Ayase
上記の歌詞は、終わった恋をいつまでも反芻しているさまを表していました。
別れていくら時間が過ぎようとも「あなた」をふっきることができません。
このように一番の歌詞では、「私」がひたすら過去の恋に「没入」している状態が描かれています。
淡々とした歌い方で、彼女が別れてからも無為に時間を過ごしていることを表現していました。
象徴するもの
境界線は自分で引いた
「現実は」って見ないフリをしていた
出典: ハルジオン/作詞:Ayase 作曲:Ayase
上記の歌詞は、原作小説を読んでいないと理解しづらい部分です。
「私」には、美大を卒業後も就職せずに夢を追い続けている友人がいました。
上記の歌詞は、バイトをしながら絵を描き続けている友人を「私」が内心見下していることを表しています。
どうせ成功するわけないと彼女を蔑んで、自分はもっと利口に生きようと思っていました。
「好きな絵を描いて生活していけるほど現実は甘くないよね」と、世の真理を見極めた気になっていたのです。
その友人と自分は住む世界が違うと、勝手に思い込んでいました。
そんな私じゃ
見えない見えない
境界線の向こうに咲いた
鮮烈な花達も
本当は見えてたのに
出典: ハルジオン/作詞:Ayase 作曲:Ayase
本当の気持ちに気づきつつも、「私」はずっと見ないふりをしていたのです。
その友人は絵を描き続けて、やがて個展を開くまでに至りました。
そして「あなた」と別れて非生産的な日常を繰り返している「私」を、個展に誘います。
「鮮烈な花達」とは、その個展で披露されていた友人が描いた花の絵を意味していました。
彼女は「好きな絵を描いて個展を開く」という夢を叶えたのです。
つまり花とは、彼女達にとって夢の象徴ともいえるでしょう。
そんな花を見て見ないふりをしていたということは、「私」にも夢があったことを表しています。
一番の淡々としたリズムとは異なり、上記の部分は若干不安を感じさせるようなメロディとなっていました。
見ないふりをしていた夢が、後悔となって胸を突き刺すさまを表現しているのかもしれません。