奥華子【君がくれた夏】
奥華子14枚目のシングル
2005年にメジャーデビューを果たし、若い女性を中心に人気を博してきた奥華子。
繊細でストレートな恋心を描いた歌詞。
そして、聴けば心が癒されて涙が出るような優しい歌声が彼女の代名詞です。
そんな彼女がデビュー10周年を迎えた2015年。
まず最初に発売されたのは、シングル曲【君がくれた夏】でした。
また、この作品は同年に発売されたアルバム「プリズム」にも収録されています。
映画『あしたになれば。』の主題歌
奥華子【君がくれた夏】は、2015年に公開された映画ともタイアップ。
その映画のタイトルは『あしたになれば。』です。
この作品はぶどう畑のある大阪・南河内市を舞台に描かれたもの。
野球一筋だった主人公である男の子が、東京からやってきた女の子に恋をする物語です。
友情と恋愛の狭間で戸惑いながらも青春を謳歌する登場人物たち。
そんな彼らを見ていると、自分の青春時代を思い出して切なくなってしまいそうです。
彼女自身もかつて経験した青春時代を思い出して描いた楽曲となっているそうです。
もう会えない人を思い出す
出会えたことは奇跡
変わる季節を追いかけていた
サクラ色の君に会いたい
この街で生まれて この場所で育って
そして君と出会えたから
「運命」って言葉 たぶん そう
はじめて 僕の頭の中 浮かんでるよ
出典: 君がくれた夏/作詞:奥華子 作曲:奥華子
それでは早速、歌詞を解説していきます。
この楽曲の主人公は年齢・性別共に不明。
季節は夏で、主人公は地元に帰省してきたのでしょう。
かつて自分が住んでいた町と通っていた学校を見て、「君」を思い出したようです。
歌詞に出てくる「君」は主人公が恋をしていた、今も忘れられない人。
そして、2行目の言葉で奥華子は2つのことを表現したいのだと推測します。
1つは卒業式の日、桜の木の下にいた好きな人がサクラ色に見えたということ。
もう1つは、主人公が“春”という字が入っている「青春」を好きな人と謳歌したということ。
そんな時代を思い出して、主人公は切なくなります。
きっともうそばに好きな人はおらず、それぞれの道を歩んでいるのでしょう。
しかし、主人公は決して「出会わなければ良かった」とは思いません。
出会えたことは偶然なんかではなく運命。
また、一緒に過ごした時間は奇跡だったのだと思ったのです。
あの時、伝えていれば
夏の夕暮れに 君の横顔が
眩しすぎて良く見えなかった
触れてしまいそうな 2つの手をそっと
僕は何度も しまいこんでいた
放課後 自転車で君と走っていた
この道が どこまでも続いてくような気がした
出典: 君がくれた夏/作詞:奥華子 作曲:奥華子
主人公は更に、青春時代のことを詳細に思い出します。
それは遠い夏の日のこと。
好きな人と並んで歩いていた時、横顔を見て愛おしい気持ちが溢れ出したのです。
相手の手をとりたくて、少しでもいいから触れたくて…。
それでも友達という関係性を壊したくないがために、その衝動を抑えました。
いつかは伝えられる。まだまだ、一緒にいられるんだから。
青春の真っ只中にいる時には、それがいつか終わるということに気づけないのです。
主人公は「あの時に気持ちを伝えていれば…」と少し後悔している様子。
さすがは奥華子。
見ているだけで胸が苦しくなりそうな程に美しい描写が本当に上手いのです。
青春時代を忘れない
忘れないよ ここにあった
不器用な優しさも 君の笑顔も
アリガトウって叫んでいた みんなで
青い春の日
出典: 君がくれた夏/作詞:奥華子 作曲:奥華子
主人公は切ない思い出もひっくるめ、全て忘れないことを決めたようです。
思春期ですから、きっと好きな人も素直ではなかったのでしょう。
茶化すようなことばかり言ってきたり、時には喧嘩もしたり…。
けれど落ち込んでいる時にはふざけながらも慰めようとしてくれていたのです。
大好きな仲間たちと笑って過ごした、あの日々。そこにいつもあった、好きな人の姿。
そんな愛おしい思い出たちを、穏やかな気持ちで主人公は抱きしめます。